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逃亡龍を追跡するもの

逃げ出した龍の探索の話

「何処に行ったのでしょうか?」

 首を傾げる猫姫に犬王。

「それが解らないからこうやって地道に歩き回っているんだろう」

 志耶も頷く。

「探索魔法や予知なんかをフル活動して、問題の龍を探しているけど、見つからない。あとは、地道にあるいて探すしかないんだよ」

 大きなため息を吐く猫姫。

「本当に困りましたね」



 今、志耶達が行っているのは、霧流家の地下に存在する、霧流ダンジョンと呼ばれる場所に住む一匹の龍の追跡であった。

 その龍の種族は、幻龍で、その存在は、曖昧で、あらゆる探索から逃れられる存在であった。

 龍を専門としている霧流家でも、その発見例は、霧流ダンジョンに居る一匹のみ。

 その為、魔法で作られた合成された龍でないのかという意見もある。

 しかし、その性質の稀有性から、八刃でも研究対象となって居た。

 その研究の為、霧流ダンジョンから連れ出された幻龍が、結界をすり抜けて、外に抜け出した。

 担当者は、慌てて、捕獲を行おうとしたが、如何なる装置もその存在を発見できず、志耶達まで動員されて、目視ベースの探索が続けられていた。



「しかし、幻龍って何なんでしょうね?」

 猫姫の言葉に志耶が首を横に振る。

「よく解らない。でも、いまは、探すことだけに集中しないと」

 その時、偶々やってきた矢道が言う。

「そういう態度でやっても見つからないぞ」

「どういうことだよ?」

 犬王が睨みつけながら言うと矢道が言う。

「何をするにもただ行動からというのは、間違いだ。常に頭を使う必要がある。今回の場合は、相手の目的を考えて動く必要がある」

「そうだよね」

 複雑な顔をする志耶に代わり猫姫が言う。

「それで、相手の目的って何ですか?」

「解らない」

 矢道が即答すると犬王が半目になって言う。

「散々いっておいてそれかよ!」

 矢道が頷く。

「そうだ、だから考える。相手が何故逃げ出したのか? 詰り外に行く理由がある。餌も与えていた、危害も加えていなかった。ついでに言えば幻龍は、寝る場所などに特別なこだわりを持たない」

 それを聞いて猫姫が眉間に皺をよせる。

「それってどういう意味があるんですか?」

 矢道は、今度は、答えず、志耶を見続ける。

 志耶は、必死に考え、答える。

「危険も無く、食欲と睡眠欲が満たされた場合、後考えられるのは、性欲の場合がある。この場合、性欲とは、種族保存本能。まさか、近くに幻龍が居るって事?」

 矢道が満足そうに頷く。

「捜索班の中には、その意見も出ている。それを考慮して動け」

「最初からそういえよ」

 犬王の突っ込みに矢道は、答えず、捜索を再開する。

「きっと志耶さんを鍛える為にやったんですよ」

 猫姫の言葉に志耶も頷く。

「早く一人前にならないと」

 そして、志耶達も捜索を再開するのであった。



 捜索から一時間が経ち、一つの報告が入った。

「こちらで捕獲していたのと異なる幻龍が発見されて逃亡中らしい」

 それを聞いて猫姫が言う。

「もう一体も傍にいるかもしれませんね」

 志耶が頷き、報告のあった場所の近隣に捜索範囲を絞り込む。

 そうしている間に、学校に到着した。

「何か、気配を感じる」

 そして、忍び込み、調べていると、奥から声がする。

「なあ、これって龍だろう。いいのかよ」

「でも、怪我をしてるし」

 そんな子供達の声に、導かれるように志耶が校舎裏に行くと、そこには、小学生達に囲まれた幻龍が居た。

「こんな所に居たんだ」

 そういって近づこうとすると、幻龍は、遠ざかろうとし、その動きと共に、傷から出血が起こる。

「止めて、この子、怪我しているの!」

 小学生の一人が幻龍を庇う。

「あのね、その龍は、危険だから、保護しないといけないの」

 それを聞いても小学生達は、幻龍から離れようとしない。

「ガキども、いう事聞けないんだったら痛い思いをするぞ!」

 犬王が拳を鳴らしながら近づくと小学生達は、怖がる。

「子供相手に何してるんですか! お姉ちゃん達は、怖くないから安心して」

 猫姫が笑顔で小学生達に近づこうとするが、警戒される。

 志耶は、携帯で現状報告を開始する。

「はい、こっちで確保していたのと同個体と思われます。しかし、怪我をしています」

 それに対して、志耶の送った映像を見た担当者が答える。

『そのこ、もしかしたら妊娠している可能性が高い。一部の動物と同じで、出産には、一人になる必要が考えられるわ』

 それを聞いて志耶が戸惑う。

「そうすると、どうしたら?」

『無理やりでも確保するに決まっているでしょ。出産の状況などの資料は、今後の研究にも役立つのだから。直に応援を送るから、監視を続けていて』

 担当者の答えに、困った顔をする志耶に苛立ちを隠せない犬王。

「あいつら、こいつを完全にモルモットか何かとおもってやがるな」

「しかたないですよ」

 そういう猫姫も納得行かない顔をしている。

 そんな中、幻龍が言う。

『八刃の者だな?』

 テレパシーに小学生達が驚く中、志耶が頷く。

「大人しく捕まってもらえませんか?」

 それに対して幻龍は、首を横に振る。

『出産は、聖なる行為。独りでやるのが我らの掟。それを変える訳には、いかない』

 そういって、動こうとする間も出血が酷くなる。

「その傷は、どうしたのですか?」

 志耶の質問に幻龍が答える。

『逃げようとした時に、周囲を警戒していた式神にやられた。元々、我等は、隠密能力が高い為、戦闘能力が低いからな』

 猫姫が幻龍を凝視して言う。

「志耶さん、この龍、このままでは、出産に耐えられません」

 それを聞いて志耶が慌てる。

「やっぱり、一度保護されてください。そうすれば傷の治療も可能です!」

 志耶の言葉に小学生達も言う。

「やっぱり治してもらおうよ」

 幻龍は、かたくなにそれを拒む。

 そんな中、犬王が言う。

「どっちにしろ、もう直、増援が来る。そうなったらお前に逃亡は、出来ないぞ」

 それを聞いて悔しそう顔をする幻龍。

『この子だけは、自由にしたい……』

 それを聞いて猫姫が言う。

「なんとか出来ませんか?」

「そうは、言っても……」

 志耶も同情しているが、手立てが思い浮かばないで居ると犬王が言う。

「簡単だ、お前の血の力を使えば良い。そうすれば、傷も癒え、逃げ延びる事も可能だぞ」

 それを聞いて、志耶が拒む。

「それは、嫌!」

「お前がどうしても嫌というなら駄目だが、幻龍の判断も聞いたらどうだ?」

 犬王が提案すると幻龍が言う。

『何でもする。出産後なら再びあのダンジョンに戻ろう』

「でも、やっぱり……」

 躊躇する志耶に小学生達が縋りつく。

「お姉ちゃん、お願い。この子を助けてあげて」

 そんな中、猫姫に志耶の血の説明をして、幻龍が言う。

『無事に独りで出産出来るのなら、そのデメリットを受けいれる覚悟がある』

「本当に良いの? 自由が奪われるのよ?」

 志耶の問い掛けに幻龍が頷く。

『今とて、そう大差ない。だから頼む』

 その一言を聞いても躊躇する志耶に犬王が言う。

「志耶、お前は、その血で縛る事にトラウマがあるかもしれない。だが、俺は、お前の血の力に感謝している」

「犬王……」

 意外な言葉に志耶が驚くのを見ながら犬王は、続ける。

「例え、魂を鎖に繋がれようと、貫かねばいけないことがある。それがこいつにとってこの出産なんだ。解ってやれ」

 志耶は、激しい葛藤の後、自分の右腕を差し出して言う。

「飲みすぎれば、完全に自分の意思が無くなるから、気をつけて」

 幻龍は、頷き、志耶の腕に噛み付き、血を啜る。

 それに伴い、幻龍の傷が癒えていく。

『この恩は、必ず返す!』

 そういって、志耶達の前から幻龍が消えた頃、ようやく到着した矢道が言う。

「逃げられたのか?」

 志耶が視線を合わせずに答える。

「はい。でも直に追いかけます」

 それに対して、矢道は、志耶の右腕を見る。

 志耶が慌てて隠すが矢道が言う。

「お前の血を飲んだのなら、お前の呼びかけが届けば戻ってくるな。発見しだい、呼び出すからその時は、躊躇せずに命令権を発動しろ」

 志耶は、無言で頷くしか出来なかった。

 立ち去っていく矢道を見て猫姫が不満気に言う。

「もう少し、言い方があると思います」

「あのな、血を飲んでるの解ってたら、志耶が捕まえようと思えば、逃げられないのも知っていた。それを敢えて気付かないふりしてたんだ。大体、到着したのが逃げた直後って言うのも怪しい」

 犬王の言葉に、志耶が頬をかく。



 逃亡幻龍捕獲に関する始末書



 逃亡中、一度視覚確認した幻龍をロストしたのは、あちきの未熟さ故の失敗です。



 中略 



 二度とこの様な事が無い様に更なる鍛錬を積む所存です。



 零刃所属 谷走志耶



 始末書を見て、ヤヤが言う。

「こんな言い訳が通じると本気で思ってるのかしらね?」

 その問いに、矢道が緊張した面持ちで答える。

「志耶が未熟な事は、事実です」

 ヤヤは、真直ぐ矢道を見ながら言う。

「まあ、今回の事は、研究班の強引さもあったから大目にみましょう」

 矢道が傍目から解らないように安堵するのに気付きながらヤヤが言う。

「志耶の血の力を貴方は、どう思う?」

 矢道が即答する。

「妹には、過ぎた力と思われます」

 ヤヤは、首を横に振る。

「そうかしらね? あの力に悩める子だからこそ、あの血の力を持つに相応しいの。でも、あまり時間が無い。無理でも自分の力を認めないといけない。かなり危険な事になるかもしれないけど、覚悟してね」

 ヤヤが相手では、反論できず、拳を握り締めるしか出来ない矢道であった。

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