22 とうとうアメリカにやってきました ⅰ
マスターズ参加の為にアメリカに着いた怜勇と笑。
「おい!笑!着いたぜ。起きろ!」
うーーーん
やっと着いたぁ。伸びをする笑に冷ややかな顔で見ている怜勇が
「お前、よく寝てたな!おかげでこっちは肩が凝ったよ」
「へ?なんで?」
「お前の頭ずっと肩に乗せてたから・・・」ニヤッ
「う!うそ・・・。ほんとに?ごめんなさい・・・・。どうしよ・・・大事な・・手」
「いいぜ!部屋一緒だし。夜マッサージしてくれたら・・・」
『ガーーーン』
『忘れてた・・・部屋一緒だったんだ』
部屋一緒・・・この事で頭がいっぱいで怜勇との会話もおじさんの話も、もちろんホテルへの道のりも
全く記憶にない笑であった。
「ふーーっ!着いた」
「さ、荷物を整理して今日はゆっくり過ごすとするか・・・。怜勇!後で少し明日からの予定をスタッフと打ち合わせだけするからな。後は自由だ」
「OK!親父」
『・・・。すごい部屋!扉もいっぱい。・・・しかもメゾネットタイプになってるよ・・・』
と入り口でポカンと口を開けたまま立ちすくんでいる笑に
「笑ちゃん?どうかしたかい?」
「え?あ ああ いえ・・」
とうろたえている笑に
それを見てケラケラ笑っている怜勇が
「笑!部屋はあっち」
と指を刺した。
「あのぉ。おじさん。部屋はやっぱり一緒ですか?私も・・・」
「うん。すまんな。この大部屋しか空いてなかったんだ。ま、小さい頃から常に一緒だし!気にしないだろ?」
『って!お母さんと同じ事言わないでぇ。私も怜勇も年頃で・・・一応噂になったら困る立場なんですが・・・』とため息をついた。が、ここでどうこう言うわけもいかず、怜勇が指指した部屋へと荷物を運びに行った。
とたん、笑が部屋を飛び出してきた。
怜勇はすでに大爆笑している。こうなる事をすでに予想していたのだろう。
「ちょ。ちょ。ちょっとぉ。なんで怜勇の荷物があるのぉ?」
「だから、部屋一緒!って言ったじゃん」
「なんで?なんで?こんな扉いっぱいあるのに・・・」
もう、笑い過ぎて怜勇は話せる状態ではない。
「こら怜勇!もうこれぐらいにしておいてやれ!笑ちゃん真剣にうろたえてるじゃないか!」
それでも怜勇は話せない!笑い過ぎて話せなさそうなんで、
「笑ちゃんの部屋は本当はこの上。私達は打ち合わせしたり色々バタバタするから下の部屋を使うよ。上にはちゃんと別にトイレも風呂も洗面もちゃんとあるから別の部屋なのと余り変わらないよ。安心したろ?ただ出入り口が一つなだけ」ニッコリ。
この笑顔・・・。怒れなくなる笑顔は本当に親子だな!と思う笑であった。
上で荷物を整理している間に、怜勇は明日からの練習等の打ち合わせをスタッフ達としているようだ。
『すごいこの部屋。バルコニーにジャロジー付いてるぅ』
『よし。怜勇たちまだまだ時間かかりそうだし、入ってみよ』
『はーーー気持ち良かったぁ。こんな部屋に泊まる機会最初で最後だろうから今回はラッキーかな。部屋一緒と言っても上と下別々って感じだし。満喫しよーーっと』
ふんふんと鼻歌交じりに着替え終えて洗面から出ると、壁にもたれて怜勇が腕を組み待っていた!
「!」
「遅い!」
「遅い!って何?怜勇なんで居るの?勝手に!」
「ご飯食いに行くぞ」
「ちょっと!答えてよ!レディの部屋に勝手に!」
「バカ!ならカギかけとけよ」
「何よ!打ち合わせしてると思ってたんだもん」
「バカ!俺でよかったんだぞ!他のスタッフもいる!自分の部屋はカギを必ずかける癖をつけろ!なんかあったらどうすんだよ!ったく!」
プイと横を向いて怒っている。めずらしく怜勇が怒っている・・・
なんか勝手に入る怜勇のほうが悪いと思うのだけど、何故か心配してくれてるのを申し訳なく思い
「ごめんなさい」
と誤った。
「うん。行くぞ。腹減ったろ?今日はみんで決起会だから」
「わかった。ちょっと待ってて。鞄持ってくるから」
笑は、こないだのアメリカ旅行でこっそり買った怜勇とお揃いのネックレスを今回は持って来ていた。
あれから怜勇はずっと着けていてくれているが、笑はオルゴールの中にずっと大事にしまっていた。
怜勇はもちろん同じ物の女性用を笑が持っている事をしらない。
『この大事なツアーの間は着けよう。せめて一緒にツアーを戦えるように』と着ける事を解禁してオルゴールより出して持ってきていたのだ。
鞄を取りに寝室へ入った笑は鞄をとり、そして大事なネックレスを身に着けて服の下に隠した。
「怜勇!行こ!お待たせ」
怜勇の大好きな笑の上等笑顔で言った。
怜勇は、いつも安らぎを与えてくれる笑の笑顔に目を細めて頷いた。
次回は決起会の模様とマスターズモードまでのつかの間の二人のアメリカ旅行。そこに愁もやってくる・・・