⑳ いよいよマスターズに向けて ⅰ
マスターズ出発を後数日に控えての笑は・・・
あれから数ヶ月。
怜勇はマスターズ優勝に向け、合宿・練習と大忙しの数ヶ月を過ごし、笑はそのマスターズに同行して暫く休みを貰うので、その分あっちこっちとレポーターで飛び周り殆ど実家には帰れていない状況であった。
疲れた体を温泉で癒し、眠ろうとした笑の携帯が鳴った。
「もしもし?」
「あーー。怜勇どうしたの?久しぶり!・・・・・・・」
「うん。わかってる。行くよ。付いて行けばいいんだよね?足手まといじゃないの?優勝したいんでしょ?私行ったら気が散るんじゃないの? うん。うん。 そう。わかった。うん、じゃぁ ばいばい」
怜勇は一ヵ月後に迫ったマスターズ行きの事の念押しに掛けてきたのだ。
ここ数ヶ月、私が実家に帰ってないことで、少し心配していた。休みを貰うためだからって言えば納得してくれたようだ。
休み明けからは少し仕事を減らしてもらう話は、もう神前さんに言ってある。
忙しく数をこなしているだけで、以前の充実感が得られなくなってると感じているから。
神前さんもそれには理解を示してくれた。ありがたいと思う。
なんとかマスターズ同行前の仕事を全てこなし、明日から1ヶ月の休暇に入る。
帯でしていた番組のレポーターの仕事も番組編成でこの間の収録で最後となった。少し寂しい気持ちもあるが、新しいことへ挑戦をする為の充電期間で番組を卒業します!と紹介され、スタッフからの花束サプライズで涙涙の卒業となったが、気持ちを落ち着かせることが出来た。
凛の部署を覗いて帰る事にした
「こんにちわー」
「うわー。笑さん!お久しぶりですぅ 今日はどうしたんですか?」
「うん。ちょっと久しぶりに覗いてみようかな って思って寄ってみたの。凛いる?」
「いますよ。 「あ 凛さーーん!」」
手を振って笑を指さす。
笑に気付いた凛が手を振りながらやって来た・・・何故かその後ろに部長も来ていた。
「よ!星野!元気か?1ヶ月程休むんだって?」
「あ 部長 ご無沙汰してます。そうなんです。充電期間です。アハッ」
「そうか・・・。やっぱりきつかったか?表の仕事は・・・。画面を通してみる限り、イキイキしてるようには見えてたけど、ずっと気にはなってたんだ・・・。お前嫌ってたからさ・・。最後は納得して移動してくれたが・・・」
「いーえ。本当に楽しかったんですよ。色々行けて、いろんな人にめぐり会って。感謝してます。部長。いい経験させていただいて。だから気にしないでください」ニッコリ
「そか。ありがと。お前の笑顔にはいつも本当救われるよ!ま、ゆっくりして行ってくれ。私は席に戻るよ!凛くん!喫茶室行ってもいいぞ」
「はーーい。ありがとうございます。行こ!笑」
「うん。相変わらず部長は優しいね。」
「ほんと、上司が部長でよかったよ。家庭でも奥様にも優しく、子供達にはいいお父さんらしいよ!月星TVのおしどり夫婦で有名で。ベストファーザーでも有名なんだって」
「へー。わかる気がする。私もそんな風に言われる夫婦になって素敵な家族を持ちたいな」
「何?笑 結婚したいの?彼氏でも出来たの?」
「はー?違うよ!いずれ!そういう時が来たら!って事」
相変わらずの二人はいろいろ話しながら喫茶室でお茶をしてたくさん話、5日後に怜勇についてアメリカに行く事を話した。
凛にも決勝チケットを渡しているので決勝日には行く と言ってくれた。残念ながらホテルは別になってしまったが、どうも近くのようなので、連絡を取り合うよう約束をして別れた。
その夜、怜勇から電話がはいった
「もしもし・・・あ 怜勇」
「笑 お疲れ! しばらく休暇だろ・・・」
「うん。」
「一緒に行こうな。俺。今年絶対優勝するから!お前の目の前で!しっかり見てろよ!」
「うん。あのぉ・・・」
「何?」
「えと・・・。ホテルなんだけど・・」
「うん?」
「怜勇と一緒なんだよね?」
「そうだよ。」
「あの その 部屋は・・・」
「は? 一緒に決まってんじゃん!何?意識してんの?幼馴染じゃん。気にしねーだろ?昔はよく泊まりっこしてたじゃん!親父もいるし・・・」
「は?ダメよ ダメ!もう私達大人だし・・・。おじさん居てもそのぉ。着替えとか気使うし・・・」
「無理!もう部屋満室だって!諦めろ!予約時点でほぼ満室だったから。」
「え?ダメよ 優勝したいんでしょ?ゆっくり一人で休まないと体に響くよ!じゃ あのホテル自分で違う所予約するよ」
「バカ!お前アメリカで女一人?危ないだろ!ダメ!」
「じゃーお母さんについて来てもらう!」
「だめ!じゃな 5日後迎えくるから用意ちゃんとしてろよ。それまで最後の追い込みあるから会えないかもだけど。わかったな!じゃ」
プープープープー・・・
『・・・言いたい事だけ言って切っちゃったよ・・・どうしよう・・・おじさんも一緒とはいえ、同室ぅ?・・・』
笑は一人焦って うろたえるのであった。
そして翌日母親に相談した。
しかし母の答えは
「いいじゃないーー。怜勇君と同じ部屋だなんて。母さんも一緒に行きたいわ。怜勇君イケメンになったもんねー。それにあんた達幼馴染なんだし!あんたこそ何意識してんの?おかしな子ね。昔は裸で一緒の布団で寝てたのに・・・」
と軽くあしらわれた。
『は?昔裸で・・・て。赤ちゃんの時の話じゃん。もう私年頃の女なんですが・・・お母さん!あなたのあなたは時間が止まったままですか・・・』
次回 アメリカに出発です