⑮ 辞令
愁に会い行く前の笑に突然の辞令です
怜勇の地元優勝で盛り上がった祝勝会もおわり、それぞれが普段の生活へと戻って行った。
怜勇は、今九州のトーナメントへ遠征中!
「暑いねぇ。ねえねえ笑。一週間後だねアメリカ行き!もう楽しみ過ぎて仕事にならないのよ~」
と、凛が来週の愁の応援アメリカツアーで頭がいっぱいらしく、仕事OFFモードになっている。日ごろはパキパキと仕事をしてる凛にはめずらしい状況である。
「何言ってんのよ!ちゃんとしてないと申請してる長期休暇、部長に取り消せられるよ!あと少し頑張れ!」
「ホイホイ。あー暑いし・・・ブツブツ」
と、手をひらひら振って仕事へと戻っていった。
『ありゃりゃ、大丈夫かね~ 』
笑はふぅとため息をついた。
『怜勇。がんばってるかな・・・。来週からアメリカに行く事言えてないけど、いいよね・・・怜勇も忙しそうだし・・・。』
笑は、手にある一枚に辞令を見つめていた。
〔星野 笑 アナウンス部への移動を命ず〕
『なんで?私が・・・。アナウンス部に行ってなにするんだろ・・・』
「笑くん!」
「あっ 部長・・・。私・・・」
「おいで。喫茶室に行こう」
笑は、部長の後ろから付いて行った。
「何を頼む? あっ!僕はいつものを!」
「じゃ、コーヒーで・・・」
「うん?プリンパフェでもいいよ 笑くんここのプリパよく食べてるだろ?気分のすぐれ無い時は、好きな物を食べるといいんだよ!って事でプリパで!」
「プリパって、部長さんたら。フフフ。若い子ぶっちゃって。かしこまりました。少々お待ちください」
「どうしたんだ?何か聞きたいことあるんじゃないか?」
「・・・。」
「お待たせしましたぁ」
プリパとコーヒーが来た。部長は、笑が口を開くまで急かす事なく、コーヒーを美味しそうに飲んでいる。
「うん? ささ、とけるよ!食べなさい!笑くんが遠慮するなんて似合わんよ フォフォフォ」
と豪快に笑っている。
笑は、苦笑いを浮かべ、大好きなプリパを一口食べると口を開いた
「部長?私、アナウンス部に行って何するんでしょ?」
「やはり、元気なかったのは、その件か。レポーターとして一年間がんばって欲しいそうだ・・・」
「私がですか?急になんで?ずっ企画しかした事Bないのに・・・」
「うん。君は自分の事をどう思っているのか知らんが、結構視聴者に君のファンがおおいんだ!あの、特番でTVに少し映っただろ。あれからあの女の子は誰なんだ?とか。もっとTVに出せ!と言う問い合わせや意見が局に多数寄せられていてな・・・。私は反対したんだが、上層との話し合いを重ねた結果、一年のレンタル辞令と言う事で、話がついたんだ。君が表舞台に立つのが嫌で企画を受けた事をよく知っている・・・。私の力不足でこういう事になってしまって・・・すまない」
「部長のせいじゃないです。頭を上げてください。すみません。私こそ暗い顔して・・・。」
「あの、本当に一年でいいんですか?」
「そうだ。一年だ」
「わかりました。」
と、笑は言ったとたん、モクモクとプリパを食べ始めた・・・。
その、豪快さに部長は目を大きくあけ、唖然と見つめていた。
あっと言うまにプリパをたいらげた笑は、さっきまでの憂鬱な顔は影を潜め、いつもの満面の超特級笑顔で
「一年間、レポーター!おもいっきり楽しみます」
と手をおでこの横にあて、敬礼ポーズをとってみせた。
「そうか。その調子!笑くんらしく!頼んだぞ」
『すまない。無理をしてるんだな・・・。しかし、君ならきっとやり切れる!』
と、心の中で詫びを胸に、しっかりと握手した。
「準備や何やあるだろから、この一週間はゆっくり移動の事に力を入れるといい。そして、こころおきなくアメリカ旅行に凛くんと行ってきなさい」
「はい。ありがとうございます」
それから、少し怜勇の話や愁に会いに行く話など、他愛もない話をして、喫茶室を後に企画部に戻っていった。
すると、ドアノブに手を掛けながら
「席はこのままにしておく。補充人員も入れない!一年後、いろいろ体験して大きくなって帰ってこい!待っている!笑くん」
と、部長の背中越しに聞こえた・・・
次回は、凛とのアメリカ旅行編
またまたドタバタ旅行になりそうな予感!