高校時代
如月高生になった。
入学式当日早々、怜勇はゴルフ部に愁月はバスケ部に入部した。
好きな事や夢に向かって進んでいる二人は、どんどん先に進んでいる。
今までは必ず
「笑はどうする?」
「こうしようと思うけど、いい?じゃ笑はこうすれば?」
っていつも気にかけてくれていたのに。
成長とともに、相談や声かけは少なくなっていった・・・。
「澪~。帰ろ!」
隣のクラスの澪の所へ行き、声をかえた。
「OK!ちょ、待って」
クラスメートとの雑談を終えてやってきた。
「海藤君と山村君てもてるよね。さっきも他中から来た子にいろいろ聞かれてさ」
「ふーん。目立つもんね。二人とも」
「笑さ~。幼馴染じゃん?みんな言ってたよ。羨ましいって。ドキドキもせず、普通に話せるのが。っ て」
「・・・。だってオムツしてた頃から知ってんだよ。はぁ~。二人があんなになっちゃうなんて・・・
思ってもなかったよ。ずるいよ。二人だけあんなヒーローみたくなって・・・。」
「私だけ、超普通じゃん・・・。」
「ずるいよ」
最後のずるいよは、余りに小さな声で澪には聞こえなかっただろう。
暗い顔になりかけたので、気持ちを切り替えて澪に聞いてみた。
「ね。ね。澪もさ。やっぱ。どっちか好きだったりする?澪は幼馴染じゃないけど、同中じゃん?中学 ん時からとか・・・。ないの?」と ニヒヒ顔で聞く
「えー。私?全然。どっちもパス!美形に優秀!しかも性格まで二重丸なんて・・・パスパス。」
「すごいな。とは思うけど、そこどまりね。憧れにもほど遠いよ。神様?いやぁ宇宙人?みたいな域 ね。」
少し間が開き、澪が赤い顔で
「私は、下村君・・・が・・・ す き」
って言いました。今言いましたよね。
「う・うそ!澪と下村君じゃぁ 美女と野獣じゃん・・・・」
言ってしまった。ごめんなさい。
だって、澪は怜勇と愁の女版。綺麗で優秀みんなのマドンナですよ。確かに下村君は、豪快でやさしくて面白くてクラスのムードメーカーでいい人です。でもあまりにギャップありすぎでない?
そうです。マドンナが選んではだめです。
世の男性は、あなたに憧れてきっとマドンナは、怜勇や愁みたいな超超王子男性が好みなんだと・・・
釣り合うのだと・・・
勝手に思い込んで無駄かもしれない努力をしている男性が山ほどいると私は思います。
不憫じゃないですか・・・努力している男性が。
せめてマドンナの彼氏を見て『やっぱり・・・か』と、納得できる人ではないかとダメではないか!私は心で叫びました。
しかし、えてしてこんなものでしょうか。恋と言うもは・・・。
ため息交じりに、澪を横目で見つめながら、後は、クラブをどうするかとか。今日は家に帰ってどうするかとか・・・
たわいもない話をしながら電車で帰りました。
ホラホラ、澪分かります?
世の男性のあなたを見つめる熱~い目線。
その隣にいるのが野獣さん・・・。
付き合う事になるんだろうか?下村君と澪は。私は下村君の良さいっぱい知ってって、お似合いの二人だと思うけど、世間の目は冷たいんだろうな・・・
私と怜勇を見る目のように・・・。
何度、嫌な思いをしただろう・・・
その度に、『関係ない関係ない!ただの幼馴染です。』とプルプル頭を振って言い聞かせたことか・・・
「幼馴染っていいよね。あんな顔でも隣にいれるんだから・・・フフフ」
高校になって今ではそんな言葉もよく耳にする。
同中だった友達や澪なんかは
「気にするんじゃないよ!笑かわいいよ!えくぼの出来る笑顔なんて天下無敵だよ」
って言ってくれるけど・・・。
そんな励まし言ってくれても・・・自分が一番わかるもん。
もう、そろそろ隣の席は空けなくっちゃって。
「じゃ、バイバイ。又明日」
最寄の駅で東と西に別れ、トボトボと一人家路に向かって歩き出しまた。
空が春だというのに、どんより暗い・・・。
私の心をうつしてるのだろうか・・・
『あーーーー!やだやだ!どうした?私!』
よし!前を向いて胸張ってトボトボではなく、テクテク歩き出した。
赤いレンガ造りの大きな家、怜勇の家の前で怜勇の部屋を見上げて立ち止まった。
『最近きてないなぁ。三人でよく遊んでたのに。また来れるかな?テスト勉強教えてもらえば来れるか な!・・・』
「笑、俺今日もクラブだから・・・じゃ」
「あ、そーだ。お前も何か入れよ。もうすぐ体験入部あるだろ。ゴルフ部も体験しろよ。な」
「じゃ、行くわ」
怜勇は嬉しそうに駆け出して行った。怜勇の夢への足がかり・・・
中学の時からアマチュアで大会に出たり、中学生大会で何度も優勝したりと活躍はしていた。
メディアにもちょくちょく登場していた。あのルックスなもんで、巷に私設ファンクラブが在るという噂も耳にした。高校在学中にもプロへ転向するのではないか・・・とも。
幼馴染として、一番近かった存在がどんどん遠い存在になっていく気がして、日々距離を感じている。
まだ義務教育だった頃はそれでもなんとか必死で怜勇についていった。
距離をあけられまいとして。
でも、もう限界かもしれない・・・。
自分の気持ちに気付いたから。
必死で怜勇と愁についてスポーツも勉強もがんばれたのは、いつも三人でいたかったからじゃない。
それは、たんなる言い訳だったと気付いたから。
私は怜勇に自分の存在を忘れてほしくなかったからがんばった。
いつも見ていて欲しかったから、付いていった。がんばった。
それは、私が怜勇を好きだから・・・。
いつまで隠し通せるかな、
この思い・・・。
気付かせては絶対だめだ・・・
夢のため・・・