⑬ 有言実行
ちょっと同様した怜勇!
しかし、怜勇はきっちり有言実行
決勝トーナメント最終日。
単独リーダーの怜勇はもちろん、最終組!
今日はゆっくり、観戦しようと、最初から一番ホールのスタンドに、怜勇の両親・爽快・愁の両親・笑の両親・凛と一緒に席に座っている。
快は凛の隣を陣取り、ゲーム好きの二人は新作ゲームの話で盛り上がってる。
爽はまた私の足の間に立っている。
「ねえ。笑ネエ。今日も怜勇ニイ気付いてくれるかな?昨日はちゃんとわかったって言ってたよ」
「そうねぇ。気付いてくれたら手を振ろうね。」
そうなのだ。やはり思った通り、怜勇はちゃんと気付いてくれていたのだ。
メールで。「どこにいるかすぐわかったぜ。サーヤと一緒にいただろ?明日も応援よろしく。おやすみ」
って、届いたのだ。
怜勇が入って来た。相変わらず、爽やかな笑顔で観客席に挨拶し、手を上げている。
怜勇ファンクラブが大拍手!
私と爽は大きく手を振っている。
「爽ぁ。今日はさすがに気付かないかもね。この歓声と人だかりじゃぁ・・」
「ううん。大丈夫!怜勇ニイは絶対わかるよ。」
「うふ。そうね」
『ほんと、爽は怜勇の第一崇拝者なんだから・・・ふふふ』
ナーイショット!
怜勇今日も会心のティショット!
スウィング後、スタンドを振り向いて、爽やかな笑顔で挨拶し、少ししてこっちに?親指を立ててグッジョブ!と口を動かした・・・?
「ね?笑ネエ。解ってたでしょ?」
と、爽は食べちゃいたいぐらいの笑顔でドヤ顔を私にして見せた。
「ほんとね。」
と笑いながら、髪の毛がチリチリパーマになってしまうぐらい頭をグリグリした。
5番ホールぐらいで、爽と歩いていると、
「あのー。星野さんですよね?」
と色黒の背の高い体格のいい男の人に声をかけられた。
爽と一瞬立ち止まって
「爽、先行ってて、お母さん達かココ達と」
「うん。はやく来てね。怜勇ニイ、すぐ気付くからね」
と走って快と凛に追いかけていった。
「あのぉ。どちらさまですか?」
「同じ職場なんですよ。僕」
「あ、そうなんですか?知らなくて・・・ごめんなさい。」
「いーえ。部署が違うとなかなかわからないですよね? 僕はたまたまある、きっかけで星野さんを知ったんですよ」
「そうでしたか」
などと、急に声をかけられて、一瞬ひるんだけど、職場が一緒って事でしばらく一緒に怜勇のラウンドを付いて回ることにした。
仕事の内容や、同じ大学の後輩が藤見君で、藤見君とはわりと一緒に飲みに行ったりすることが多いとか。藤見君は密かに凛の事を思ってるとか、いろいろ楽しい話をしながら、移動していた。
すると、どうしたんでしょ、急に怜勇のショットやパターが乱れだしたのか、観客のため息が立て続けに
聞こえだした。
「どうしたんだろ?急に調子が悪くなってるみたい・・」
「そうだね。気がそれてると言うか・・・今までのいい感じの緊張の糸が切れた って感じだね。珍しいね海藤君にしたら・・」
「そうですね。」
『怜勇。どうしたんだろ・・・ あーあスコア追いつかれちゃったよ』
「あの・・。ごめんなさい。私、ちょっと前から応援していいですか?また、いつか藤見君たちと一緒に飲み会でもしましょう。今日は幼馴染として、応援来てるんで、このままじゃ、やばそうなんで・・・」
と、言い終えるか終えないかで走って爽に追いついた。
『え?怜勇!二位に落ちてる!なんで?最終ホールでバーディ取ってプレーオフ。バーディ必須か』
「爽・・・」
「笑ネエ・・・。」
「大丈夫!怜勇はバーディとってくれるよ!」
「怜勇!」
ついつい大きな声で呼んでしまった。
怜勇はこっちを振り向いたけど、なんか冷たい視線だった。
『なに?どうしたの?』
「見てるから・・・。信じてるから」
と言って爽と笑って手を振った。聞こえてるかどうかわかんない。人が多いし皆、口々に応援の言葉を言っているから。
でもしばらくすると、怜勇は下を向きながらフーッと息を吐き笑って、爽と私のいる方に微笑み掛けた!
昨日の一番ホールのように、ギュッと口を結び何かを決意いしたようなするどい目をして頷いた。
爽と私は目を見合わせて笑った。
怜勇は水を得た魚のように今までとは、打って変わって最終ホール、ティショット。ナイスショット。
昨日と同じイーグルチャンス!惜しくもイーグルならず。しかし、バーディ奪取!
塩崎さんとのプレイオフ決定!
爽と手を繋いでいた手に力が入る。爽も力が入っているのか、小さい手ながら力強く手を握り返してくる。二人の手の汗も尋常じゃない。
一回目、両者共PAR
二回目、同じくPAR
三回目、両者ともバーディチャンス・・・
塩崎・・・惜しい!バーディならず!
怜勇・・・怜勇の空気が変わった! コロン・・・。 バーディ!
二人が握手した。死闘に決着が付いた!
爽快二人とおじさんおばさんが近づいて行って。ねぎらっている。
拍手 拍手 拍手。
私も手が真っ赤になるくらい、拍手した。有言実行の怜勇が涙で見えない。
『おめでとう。かっこいいよ怜勇!』
心の中で大きな声で叫んだ。
涙で霞んでよく見えない中、爽と快が怜勇の手を引いて、こっちに来てる。
怜勇は爽やかな笑顔で、頭をさげ、もう一度ニッコリ笑って親指を立てていた。
あのポーズは高校時代に優勝した写真に二人でとったポーズだ。
笑の目からは涙が止め処もなくながれた。
その夜怜勇からのメールで、
「笑が知らないやつと歩いてるのに気付いて気がそれた・・・。俺もまだまだだな・・。でも、最終ホール笑の姿が見れてまた、気合が入ったよ。有言実行出来て良かったぜ!サンキュッ」
と 届いたのでした。
もうそろそろ、完結に向けて後、数話の予定です。