⑫ トーナメントリーダー
かっこいい。かっこ良すぎです。海藤怜勇。
決勝トーナメント 一番ホール
すごい人です。
「ちょっとぉー。笑ぃ。この人 人 人・・・。どうよ?見えないんじゃない?海藤君」
スタートホールは、絶対見送りたいのに・・
「笑ネエ!こっちぃ!」
爽と快の声がする。声のする方に振り向くと、スタンドから二人が立ち上がって手を振っている。
『いた。ラッキー』
「凛!あそこ。席確保してくれてる」
と、スタンドの前席を指差しながら、腕を引っ張り小走りでスタンドに向かった。
二人で顔を見合わせて
「よかったね」
と、笑顔で微笑んだ。
席につくと、快は凛の事が気に入ったのか盛んに話かけている。
凛はサバサバした性格で、物事をキビキビ話す。相手に対して対応が変わる事ないので、きつい感じを受けるけど、快はそういう人が話しやすいのだろう。子供として関わられるより、一人の人間として扱われるのが好きな子だから。
二人を横目に私は、もうすぐティーグランドに入ってくるであろう怜勇を見る為に、入り口の方を見ていた。
『よかった。間に合ったうえに、いいところから怜勇を見れて。怜勇気付いてくれるかな・・・』
会場がざわついた。怜勇が来たのだろう。
爽が、私の前にきて耳元で
「お兄ちゃん来たよ・・・」
と言った。
「うん。がんばってほしいね」
拍手で迎えた。爽も必死で拍手している
『ふふふ。怜勇はこんな爽の姿にメロメロなんだもんね』
『怜勇・・・がんばって!』心で手を合わせる。
怜勇がこちらに顔を向けて、観客に挨拶している。
爽が思いっきり手をふっている。
怜勇がこちらに気付いたような気がした。
一瞬、ふと動作が止まって爽に微笑み、私には、
『ずっと、しっかり見てろよ!』
と、言うように口をギュッと結んで頷いた。
私も、にっこり笑って頷いた。
私達にしたのかどうかは、定かではないけど、爽と私は顔を見合わせて
「気付いたね」
と二人で言い合った。
怜勇はきっと気付いてくれた。そう、二年前あの時のように・・・
二年前、取材先で行った先が、怜勇がトーナメントに参加してるゴルフ場の近くだった為、私は取材が終了してもすぐに帰らず、有給休暇を一日申請し、翌日怜勇の応援に誰にも内緒でこっそり行った。
もちろん、怜勇にも連絡を取らずに・・・。その時も一番ホールをスタンドから見ていたら、今日と同じように観客に挨拶している怜勇がこっちを見た。でも、その時は今日ほどの確信は持てず、『気付いてないよね』と、思っていた。すると、その日の夜遅くに、私の携帯に怜勇から電話が入り
「笑、ありがと。見に来てくれるなんて思ってもなかったよ。一番ホールで、笑を見つけた時は一瞬疑ったけど、何回見ても笑だった。アハハハ。そのおかげでいきなり一番からイーグルを取れて今日の大爆発のスコアを生み出せたよ」
と・・・。
その時、私も本当にびっくりした。あの大勢の人の中で行くとも言ってない私に気付くなんて。
でも、あの人混みの中でも私を見つけてくれた事を知ってものすごく嬉しかった。一人部屋でニコニコ浮かれていた時、コーヒーを持ってきてくれた母が気持ち悪そうな怪訝な顔していたのを今でも覚えている。
そんな事があった事を今思い出し、怜勇がこっちを向いて頷いた事に確信を持った。
『ね。爽!』
と、心のなかで爽に言うと同時に頭をなでて
「さ、グリーンの方へ行こうか。早く行かなきゃ、怜勇のいい所見れないもんね」
と、爽と手を繋いだ。
すっかり快に懐かれた凛は、スタスタ二人で先に歩いている。
いつも通り、礼儀正しく愛想よく、淡々とゴルフをしている怜勇。
ときには怖いぐらいの顔で真剣にラインを読む。
時に穏やかにファンに微笑む。
大事なパーセーブ。ここでボギーを叩きたくない場面での力強いガッツポーズ!
ここで引き離したい、イーグルパットが決まった、これ以上ない嬉しそうな笑顔でのガッツポーズ!
すごい。ちゃくちゃくとスコアを伸ばしてる。他の追随を許さない。
『怜勇!かっこいいよ・・・。すごいよ。まだ、明日があるのに・・・なんか、涙が出そうだよ・・グスン』
「笑ネエ?」
「うん?何?爽。」
「泣いてるの?」
「ううん。違うよ!怜勇 かっこいいなぁ と思って。ね爽? しかも 今、リーダーだよ」
「うん。怜勇にい かっこいい」
最終18番ホール!PAR4!
「ナイス ショーーット!」
会心の当たり!グリーン端。イーグルチャンス!
二打目、イーグルパット。
怜勇が気合の入った顔でパット・・・
オーーーーーッ あーーー・・
『あーん。惜しい・・』
しかし、余裕のバーディでホールアウト!
トーナメントリーダーで明日の最終日へ・・・
有言実行へ 怜勇!
発進!
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