最高最後の思い出②
男子団体戦は、僅差でライバル校、川田君のいる弥生高校が優勝。如月高校は準優勝。
女子団体戦は、反対に僅差で初優勝を飾った。
新聞クラブの記事には、悔しい顔をごまかし切れてない怜勇の顔。部長の放心状態の顔が載り、女子の優勝が一面にのった。その三人の顔は涙でグシャグシャ ドロドロの見るも無残な写真が載った。
笑は、またきっちり綺麗な新聞をスクラップしたけれど、自分の顔があまりに情けないので、新聞クラブの部長を少し罵ったのでした。だって。一生残るんだよーー。
そして、いよいよ。混合ペアマッチの始まりです。
『う・・。めちゃ緊張なんですけどぉぉぉぉ』
「えーーみ。緊張してるんでしょう。大丈夫よ。海藤君がいるじゃない。笑のミスは俺が全部ホローして 絶対優勝してやる! って言ってたよ。大船に乗った気でOKよ」
「がーーーっ。だからぁ それがプレッシャーなんじゃなーい」
言ってたとおり、怜勇が本当に凄くがんばってくれて、私のミスをすべてカバーいてくれて、なんとか決勝までコマを進めることができた。
怜勇がここまで鬼気迫る感じの試合をした事がないのでは?と思うほどで、怖かった。私には笑顔でやさしく接してくれていつもとなんら変わらないけど、かもし出すオーラが違う・・・。
『怜勇。ありがと。後1戦だね。がんばるよ。 二人の思い出の為に!』
「笑・・・。ここまで来たんだ。よくがんばったな。最後は笑ってプレーしようぜ。いい思い出になったよ。ありがと。」
「怜勇!何言ってんの。優勝するんだよ。絶対に。川田君チームには勝とうよ ね?」
「よし。わかった。でも楽しくだ!わかったか? 行くぞ」
怜勇・・・・。ティーグランドで方向を確認している怜勇の横顔をボーっと見つめていたら
「おーーーーーーい。怜勇ーーー。笑ーーーーーー。」
はっとしてギャラリーの方を見ると、愁がいた。
「愁!」といいながら駆け寄って
「愁。来てくれたんだ。練習は?」
「アハハ。サボった!」
「ええ?一度もサボった事ないのに・・」
「バカ!こんな組み合わせこれから先もないだろう。見逃せねーよ。それに一日ぐらい練習さぼったって 俺には何も影響ない!」
「ほら、行けよ。怜勇が見てるぜ」といいながら怜勇に手を上げてる。
「うん。がんばるから応援してね。しっかりと!近くの女の子ばっかナンパしないで!だよ」
「笑。リラックスできたか?愁、いいとこ来てくれるぜ。あいつ。 がんばろうな」
と、ふいに抱きしめてきた。
「え?」うそ・・・。びっくりするよーー。今、そんな事されたらクラブ振れないよーー。
せっかく、愁としゃべって落ち着けたのに!落ち着け!って言う怜勇がそんな事しないでよ!バカ。
シュッ シュッ。
素振りして、さーいっくぞぉ!
あれ?うそーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ
まさかの空振りぃーーーーーーーーーーー。
怜勇と第二打地点まで歩いて行きながら
「怜勇・・ごめん。」
「気にすんな。」
「笑は笑らしく。何も気にせず、無になってプレーして。楽しめ!笑ってろ。 ミスなんて気にするな! 笑のミスは、俺が必ずリカバリーしてやる! 俺がいる事を忘れるな!」
まっすぐ前を見ながら力強い目をしながら、きっぱりと言ってくれた。
『わかったよ 怜勇』
それからというもの、このコースにはまるで二人しかいないような気になり、自分の気持ちを隠すことなく、普通の笑顔で普通の態度で、まるで小さな頃の二人に戻ったように普通でいれた。
イエーイ。ハイタッチ。
ニコニコ、しゃべりながら。
あっちを見たり こっちを見たり・・・。
最終ホール・・・
1打差。
そんな事、どうでもいい。楽しい。怜勇とこの時間をもっと過ごしていたい。怜勇はどう思ってる?
怜勇もそう思わない?
スコーーン。
よっしゃーー。イケー。
~~~ 『ナイ ショッ』 ~~~
「笑!グッ!」
「エヘヘピース」
ハイタッチ。
「よし!やってやるぜ!俺に任せろっ」
コロコロコロカラ ン・・・・
『ウワーーーーッ』 『オーーーーーッ』 『ピーーピーーーッ』
イーグル!
逆転!後は・・・・。
相手のバーディトライ・・・
コロコロコロ クル ん・・。
はずれたーー。
ポロポロポロポロ
涙が止まらない・・・
涙でかすんで見えない・・・
怜勇・・・どこ・・・
やったね怜勇・・・
ふわっと後ろから抱きしめられた。
怜勇の匂いがした。
怜勇・・・・・・。
クルッと振り返り怜勇に抱きついた。
『パチパチパチパチパチ』
大歓声にやっと現実に戻った。
川田君達がこちらに歩いてきて握手を交わした。
「いい戦いだった。楽しかったよ。ありがと おめでと」川田君が言ってくれた。
「おめでと。あなたゴルフクラブじゃないそうね。ゴルフすればいいのにいいライバルになれそうなんだ けど? おめでと。 また機会があればよろしく」宮崎さんが素敵な笑顔で言ってくれた。
「おーーい。やったな。二人共」
「愁!やったよーー。帰ったらお祝いしてねーー」
「愁月」よッと手を上げ
「怜勇 ああ」と親指を上にむけた。
二人は心で会話しているのだろう と笑は微笑んで見ていた。
結果発表 優勝チームのみ前へ
女子団体戦 如月高校
男子団体戦 弥生高校
混合ペアマッチ 如月高校 海藤怜勇 星野 笑チーム
個人戦結果発表 優勝者のみ前へ
男子個人 海藤怜勇
女子個人 宮崎紫音
ちなみに個人戦3位に早崎さん。10位に三島さん。
そして。私は・・・・精魂尽きてブービー賞となった。
いよいよ。次話で高校を卒業します。