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TIME LAG  作者: ソーヤ
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第1話:クソッタレな縄文時代へようこそ

こんにちわ

ソーヤです。これは僕の最初の小説の作品です。

楽しんで貰えたら幸いです。

「え〜、また失踪届? 今回はアウトドア塾講師? ……どうせどこかでキャンプでもしに行ってんだろ、スマホの位置情報も切れてるんだろ?放っておけよ」

 警察署のデスクで、一人の警官が面倒くさそうに書類を放り投げた。

 2026年、現代。

 日本では、昭和の末期からずっと『ある異常な現象』が続いている。16歳から30歳までの若者が、前触れもなく突如として姿を消す謎の失踪事件。

 時代ごとに「暴走族への加入」「神隠し」「ネットのオフ会での家出」などと理由は時代ごとに変化し、適当に片付けられていった。

警察も世間も、いつしかそれを「よくある若者の失踪」として処理するようになっていた。

だが、消えた若者たちがどこへ行っているのか、現代の人間は誰も知らない。

原生林を歩き続けて、今日で一週間になる。

竹内たけうち じん、29歳。現代ではアウトドア塾講師をしていた。仕事用のアウトドアウェアに頑丈なトレッキングシューズを履いていたのは不幸中の幸いだったが、それでも足の裏はマメが潰れて激痛が走る。

現代のサバイバル知識を総動員し、泥水を濾過ろかして飲み、毒のない野草や虫を食って命を繋いできた。だが、体力も精神もとっくに限界だった。

あの日から、俺の人生は完全に変わってしまった。

夜になれば、人工の光が一つもない「本物の暗闇」が世界を支配する。スマホの画面は四日前に完全にブラックアウトし、ただのガラスの塊になった。

(誰でもいい……誰かいてくれ……!)

久しぶりの肉の匂い。鼻腔をくすぐるその香りに、俺は無我夢中で走った。

だが、斜面を下りた先、そこにあったのはテントでもタープテントでもなく、BBQをしている大学生がいる訳でもなかった。土を盛り、かやのような植物で編まれた屋根。肉を燻す煙が立ち上っている。

人間だ。集落がある。

「おい……! 誰か、誰かいないか!!」

迅はもつれる足を引きずりながら、なりふり構わず叫んだ。

斜面を転がり落ちるようにして村へ駆け込む。異変を察知した住人たちが、住居から次々と姿を現した。彼らは獣の皮を腰に巻き、手には鋭い黒曜石のついた石槍を握っている。完全に、教科書で見た「縄文人」そのものだった。

「助けてくれ! 俺は怪しい男じゃない! 誰か、日本語が分かる奴はいないのか!?」

迅は両手を挙げ、武器を持っていないことを示しながら、大声で日本語を叫び続けた。

しかし、言葉の通じない縄文人たちには、迅の叫びは「不気味な獣の咆哮」にしか聞こえない。彼らは一様に警戒と敵意の表情を浮かべ、鋭いうなり声を交わし合いながら、じりじりと距離を詰めてくる。一人の男が、威嚇するように石槍の先端を迅の喉元へ突きつけた。

「頼む、水だけでもいい、助けてくれ……!」

恐怖と飢えで、その場に膝を突く。突きつけられた槍の刃先に身を竦めながら、俺はただ、生きるために必死に懇願し続けた。その時だった。

集落の奥から一人の男が歩み出て、現地人に向けて短く鋭いうなり声を発した。

それだけで、槍を構えていた縄文人たちが、怯えたように一斉に一歩下がった。言葉による命令ではない。完全な力関係、あるいは恐怖による支配だ。

男の体つきは現地人と変わらないほど強健で、身体中には無数の傷があった。だが、その顔立ちは明らかに、現代の日本人のものだった。

男は地面にへたり込む迅の前に歩み寄ると、そのトレッキングウェアと、手首で鈍く光るアナログ腕時計をじっと見つめた。

その男は、泥まみれの迅の前に膝をつき、その両肩を壊れ物を扱うように掴み質問した。

「……日本語、喋れんのか?」

そして迅は生き残りたい一心で答えた

「ああ、俺は日本人だ、お前喋れるのか?助けてくれ、」

その言葉を聞いた瞬間、男の目つきが変わった。だが、背後に控える現地人たちに一瞬だけ鋭い視線を走らせると、感情を一切表に出さず、凄まじい怪力で迅の腕を掴み上げた。周囲を威嚇するように一喝し、抵抗する余裕すら与えずに、自分の住処へと無理やり引きずり込んでいった。

** 連れていかれた先はその男の住む家だった。**

外の気配が遠のき、二人きりになった瞬間。それまで鉄のようだった男の顔が、一気にくしゃくしゃに歪んだ。男の目から、大粒の涙がボロボロと溢れ落ちる。まるで子供のように、声を上げて号泣し始めた。

呆然とする中、家の中に、大切そうに祀られている「それ」があった。

泥と血にまみれ、革がすっかり硬くなった、茶色い野球のグローブのようなもの

そして、無造作に置かれた一本の太い木。表面が不器用に削られ、滑り止めのために植物のつるが巻き付けられた、手製の「木製バット」だった。

その男は迅に、素焼きの器に入った温かい鹿肉のスープを差し出した。一週間ぶりのまともな食事に、迅は貪るように食らいつく。

「……お前、どっから来た。今は、何年だ」

男は食い入るように迅を見つめ、掠れた声で問いかけた。涙の跡が残る顔のまま、外の世界の情報に、飢えた獣のように目を血走らせている。

「に、2026年だ。俺は東京でアウトドア塾の講師を……」

迅が答えた瞬間、男は天を仰ぎ、乾いた笑いを漏らした。

「2026……。そうか、もうそんなに経ったか。俺はタカシ。消えたのは2010年だ。神奈川の高校に通ってた」

タカシは、愛おしそうに祀られたグローブへと視線を移した。

「驚いたか。……そいつ、俺が自分で作ったんだよ。仕留めた獣の皮を剥いで、骨の針と植物の繊維で何ヶ月もかけて縫い合わせた。16年前、高校の卒業式の帰りにここに飛ばされた時、俺の手元には何もなかった。秋のドラフトで指名されて、来月からプロ野球選手として寮に入る予定だったってのに、全部消えた」

タカシは手製のバットを愛おしそうに撫でた。

「最初は死ぬことばっかり考えてた。言葉は通じねえ、夜は暗え、バカでかい熊や狼が襲ってくる。でもな、生き残れたのは……こいつのおかげだ」

タカシが自分の右腕を叩く。服の隙間から見える前腕の筋肉は、丸太のように太い。

「言葉がねえ連中だ。舐められたら殺される。だから、俺の『武器』をアイツらに見せつけてやった。アイツらの狩りは酷いもんだ。大振りで三振を繰り返すような、成功率の低い、命がけの特攻。……だから俺は、そこらに落ちてる重い石を拾って、マウンドに立つつもりで全力で投げ込んでやった。150キロ近く出せる右腕だ。コントロールを狂わせなきゃ、獲物の頭蓋骨なんて一発で粉々になる」

迅の脳裏に、凄まじい光景が浮かんだ。

言葉の通じない原始の森で、現役プロ級のストレートで石を投げつけ、獣を一撃で仕留める18歳の怪物。現地人からすれば、それは魔法であり、圧倒的な「神の業」に他ならない。

「アイツらが持ってきた一番硬い木を削って、バットも作った。突っ込んできた猪の脳天を、フルスイングで叩き割った時、ここの連中は全員、俺の前にひれ伏したよ。言葉なんて要らねえ。俺が一番強くて、俺が一番肉を獲ってくる。だから俺が『長』だ。それだけだ」

タカシの目は笑っていなかった。

夢を奪われ、16年間、孤独に「暴力と生存」だけで頂点に君臨し続けた男の、壮絶なプライドがそこにあった。

いかがでしょうか

自分は大学生なので投稿頻度は遅めになるかもしれませんが、好評ならこれからもどんどん投稿しようかなぁって思ってます。

読んで頂きありがとうございました(≧∇≦*)

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