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第1話 爆竹×10000

  パアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!

 パン! パン! パパパパパパパパパパパパン!!!!!!

 パパパン!!! パパパパ!! パンパン!! バンッ!!!!

 パパン! パン! パン! パンパン! パン! パパパパパパン!!!!! パン!


 満天の星空の下で、白から黒へと変わる煙。連鎖し火花を散らす爆竹。激しい騒音。

 視界の全てが光と熱に包まれ、人工の太陽のように煌々と輝いている。

 もはや事故。

 場所は、断崖絶壁を彫り進めて建造された寺院の二階にある展望デッキ。


「うわぁ……」


 180センチを超す長身の男シャンカラは、安全圏から目の前に広がる光景に絶句していた。

 顔は整っているが表情の起伏がやや乏しい。爆竹の光を反射するが、深淵を覗く様に生気の感じられない黒目。〈安全第一〉と書かれた黄色のヘルメットを被り、筋肉質だがしなやかさのやる鍛えぬかれた体には使い込んだ作業着を着ている。分厚い軍手に防火加工の長靴としっかり安全対策は万全だ。

 なにを隠そう自宅に届いた爆竹を意気揚々と全てを開封し、中庭で着火させた張本人である。

 


 パパアア! パン!! パン! パンパン!! パパパン! バンッ! パン!

 パン! パパパン! パン! パン! パパパパアァァ!! パンッ! 

 パンパン! パッ! パパパパン! パン! パン! バッ! パンパン!! 

 

「どうして1人で祭りやってるの」


 音を聞きつけてやって来たのは、人形のように可愛らしい少女リシルタだ。夜なので白の寝間着姿で、分厚いタオルを頭巾代わりに被って防御体勢に入っている。まだ眠る時間では無いとはいえ、白濁したように見える灰色の瞳がシャンカラを咎める。


「動画配信サイトで見かけて、お祝いのリハーサルのつもりで一束着火したら、こうなりました」


 祭りの動画だろうか。大量の花火の動画は、複数人、団体、町単位で行われている。それを一人でやろうなんて、どういう考えだろう。


「お祝いは……まぁ、嬉しいけど、限度があるよ。何個買ったの?」

「箱単位なら1250個。爆竹の本数は1万本です。通販サイトでセール中だったので」

「限度超えないでよ……」


 セールを言い訳にして買って良い数ではない。

 



 パン! パン!!! パアパパアアアアアア!!!!

 パンパン! パパパン! パンッ! バン! パパパパパパ!!!!

 パンパアアアアアア !!! パン!



「こ、これいつまで続くの?」

「もう少しかかりますね。着火させた責任者として見届けますので、お姉ちゃんはお休みください」


 シャンカラとリシルタはこう見えて、姉弟である。

 訳あって、長く離れていた2人はひとつ屋根の下で再び暮らす事となった。


「こんなにうるさいのに、休めるわけないでしょ……」


 リシルタは大きくため息をついて、シャンカラを見る。

 表情筋が硬いのか、声や行動に比べて顔出る感情が乏しく、あまり変化がない様に見える。知らない人から見れば、今のシャンカラはかなりの無表情だが、リシルタには楽しげに見えた。

 オトウトの、こういうところに彼女は弱い。


「私も、見てる」

「お疲れでは?」

「いいの! 1人で片づけは大変でしょう?」


 リシルタは用意してもらった木製のベンチへと座った。



 パパパパ! パン! パン! パパッ!!

 パアアアアア!!!! パパパン!! パン! パパパパパンッパンッ!



「人里から離れていてよかった……」


 派手な音と火花を散らす爆竹を眺めらながら、リシルタはしみじみと言う。

 そんな彼女の視界に、甘い飲料の入った缶が上から降りてくる。


「どうぞ」

「わぁ、懐かしい! 小さい頃に好きだったんだぁ」


 桃や、林檎、バナナなどが入ったフルーツミックスジュース。

 小さい頃は家族とお店に行くたびに、買ってもらっていた。次第に飲まなくなり、その味も忘れていたが、缶を見ただけですぐに思い出せた。


「おいしい……」


 口に広がるフルーツの酸味と甘みに、懐かしさを感じる。

 本当に、故郷の星から遠い所まで来てしまった。


 

 パパパパパパパアアアアアン!!!!!!!

 パン! パパッ! バンッ!! パンパンパパッ! パパパパ!!!!



「……水を掛けて、止める事は出来ない?」

「今は危険ですよ。治まるまで待った方が安全です」


 隣に座って缶のラムネソーダを飲むシャンカラの答えに、リシルタは大きくため息をついた。

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