表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/63

15,体の中で渦巻く激情と導く手と初めての体験

 伸に聞かれて、自分がいじめに遭っていたことも話した。あまり詳しいことは、辛くて話せなかったけれど、伸が聞いてくれたことが、うれしかった。

 

 伸は、とても優しい。いじめられていることも、母親に心配をかけまいとして、誰にも話さずにいるのだ。

 

 そんな伸に、卑劣なやつらが、ひどいことをしている。手のひらの傷を見つけたときには、伸の孤独を思い、胸が痛くなった。

 

 腕に怪我を負っていると知ったときには、あまりにかわいそうで、思わず抱きしめてしまった。行彦の腕の中で意識を失ってしまった伸を見て、なんとかしてあげたいと思った。

 

 自分には、なんの力もないけれど、せめて伸を慰めたい。少しでも、伸の苦しみを和らげることが出来たら……。

 

 そして行彦は、意外に幼い伸の寝顔を見ながら、はっきりと自分の気持ちを意識した。僕は、伸くんが好きだ。

 


 伸は、本当に優しい。ひどいことをされながら、その相手の事情まで気遣っている。

 

 そんな伸に、行彦は、つい無神経なことを言ってしまい、それを怒りもしない伸に申し訳なくて、泣いてしまった。

 

 気持ちが高ぶり、行彦の涙を見て動揺している伸にキスをした。最初、体を硬くしていた伸は、振り払ったりせず、行彦の舌を受け入れてくれた。

 

 伸の舌の動きを感じながら思った。伸くんも、僕のことを……。

 

 

 とは言え、感情にまかせて大胆なことをしてしまい、不安になって、行彦は聞いた。

 

「僕のこと、嫌いになった?」


 伸は、不思議そうな顔をする。

 

「どうして?」


「だって、あんなこと……」


 だが伸は、照れくさそうに、目をしばたたかせながら言ってくれた。

 

「嫌いになんか、ならないよ」




 次に会ったときには、自分の思いが一方通行ではないことを確信した。それは、ドアを開けて、伸の目を見た瞬間にわかったけれど、それだけではない。

 

 今度は、伸のほうからキスをしてくれたのだ。行彦の口の中で、伸の舌は妖しい生き物のように動いた。

 

 口の中の隅々まで、舌で丁寧に愛撫され、体の奥が切なく疼く。佐賀に奪われそうになったときは、恐怖と嫌悪しか感じなかったのに、伸には、ずっと続けてほしいと思う。

 

 

 唇が離れた後、行彦は、伸の肩にもたれて言った。

 

「うれしい」


「え?」


 伸の頭が近づく。行彦は、その頭に、自分のそれをこすりつけるようにしながら言った。

 

「伸くんのほうから、してくれて。……伸くん、好きだよ」


 少しの間があった後、伸が言った。

 

「俺も……好き、だよ」




 行彦のことが好きだ。行彦とのキスは、たまらなく素敵だ。でも、もうそれだけでは満足出来ない自分がいる。もっと先に進みたい。もっと……。

 

 つい最近、キスを覚えたばかりだというのに、自分は、なんと貪欲でスケベなのかと呆れる。だが伸は、部屋のベッドの上で、火照る体を持て余しながら考える。

 

 今まで、同性に興味を持ったことがなかったので、その方面の知識が乏しい。キスより先は、男同士で、いったい、何をどうやって……?

 

 だが、すべては杞憂だった。

 

 

 伸が、後ろ手にドアを閉めるなり、行彦が、胸に飛び込んで来た。

 

「伸くん……」


 切なげな表情で見つめる行彦にキスをする。だが、舌を入れようとしたとき、不意に行彦の唇が離れた。

 

 驚いている伸を見つめたまま、行彦が手を引く。そのままベッドまで行き、絡み合うように倒れ込んだ。

 

 下から見上げる行彦の目が濡れている。体が熱い。激情が体の中で渦巻く。でも……。

 

 どうしていいかわからず、行彦を組み敷いたまま固まっていると、行彦が手に触れた。そのまま伸の手を取って、自分の胸へと導く。

 

「外して」


 言われるまま、パジャマのボタンに手をかける。手間取りながら、すべて外すと、驚くほど白くて滑らかな素肌が現れた。

 

 

 その後も、行彦の誘導に従い、すべてはスムーズに進んだ。何もかもが初めての体験だったが、行彦は美しく淫らで、伸は我を忘れ、行彦の体を貪るように味わった。

 

 あまりの快感に、最後は、声を上げながら果てた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ