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エッセイ

嫁のいない週末──ちょっぴり羽目を外してみる

作者: 歌池 聡


 この週末、嫁が家にいません。

 別に、実家に帰ってしまったとかじゃないですよ──て言うか、今住んでるのが嫁の実家ですしね。

 実は2泊3日で、検査入院に行っているのです。何か問題があったとかじゃなく、何年か毎に必ず受ける定期的な検査なので、特に心配はしてません。


 まあ、義父の身の回りのお世話とかもあるので、完全にフリーというわけでもないんですが、少しぐらいは羽目を外しても大丈夫かな?


 と言っても、別にエッチなお姉さんのいるお店にこっそり遊びに行っちゃうとかじゃないですよ。

『愛妻家』を自認する身としては、そんなフラチな羽目の外し方などもっての外です。


 こういう時の自分なりの『羽目の外し方』とは、主に食に関することです。嫁と一緒の時には絶対に行かないような飲食店に行ったり、絶対食べないようなメニューを作ったりするのです。

 ──羽目の外し方も、いかにも『小市民的』ですよね。






 嫁は特に舌が肥えているわけでもないのですが、肉に関しては好みがうるさいです。

 脂身が得意じゃないので、庶民の味方である『吉野〇』や『〇つや』あたりのチェーン店には絶対に行きたがりません。

 なので、嫁の入院の時はその手の店に行くチャンスなのです。


 また、鶏の皮もあまり好きではありません。カリカリに焼いた鶏皮とか、旨いのにねぇ。

 まあ、そこは個人の好みですから、何かを無理強いするつもりはないのです。

 鶏肉料理をする時は、脂や皮の多いモモ肉ではなく胸肉のかたまりを買って、皮を一気に引っぺがしてから一口大にカットします。

 で、取り除いた皮なんですが、鶏皮好きとしてはもったいないと思ってました。でも鶏皮たった1枚で、わざわざ自分だけのためにもう一品作るのもめんどくさい。

 そう思って、泣く泣く処分してたんですが、ある時はたと気づきました。


 ──これ、冷凍して何枚か溜まったところで料理したらいいんじゃね?

 そうだ! 5月に検査入院があるから、居酒屋なんかで見る『鶏皮ポン酢』とか作ってみようか!






 そして、ラップに包んで冷凍保存しておいた鶏皮が5枚分。これをラップのまま耐熱皿に乗せてレンジへ。


『まずは解凍して──ま、どうせ後で火を入れるんだから【あたため】でいいか。余分な脂も落ちそうだし』


 ──今にして思うと、これがそもそもの間違いだったんですけどね。


 あたためが終わると、確かにラップの中で脂が溶けて液状になっています。でも、肝心の鶏皮が、くるんとかなり強めに丸まった状態に。

 何だかイメージと違います。これだけ丸まってると、グリルで焼いても脂がちゃんと落ちない気もします。それに、脂でギトギトの様子を見ていたら、後でグリルを洗うのが超めんどくさそうに思えてきました。


 そこで路線変更。脂ごとフライパンに入れて、『揚げ焼き』みたいな感じでカリカリを目指します。

 

 火が通りやすいよう、皮をトングでつまんで食材用のキッチン・バサミで1~2cm幅にジョキジョキ。弱火でじっくり揚げ焼きにしていきますが──脂がどんどん出て、めちゃめちゃハネます。おまけに皮同士がすぐくっつこうとしやがる!

 悪戦苦闘しているうちに、だいぶ色が変わってきました。求めるカリカリ感には程遠いけど、これ以上やると焦げてしまいそうです。

 火を止めて、次に脂を切る作業です。鶏皮をバットに取り上げますが、表面にまとわりついた脂はそう簡単に落ちてくれそうにありません。

 幸い、100均で天ぷらの下に敷く紙50枚入を買ってあったので、何枚か犠牲にして表面の脂を落としていきます。


 さて、出来上がりは──やはり表面は脂でテッカテカで、見るからに『カロリーの権化』といった風情があります。よし、罪悪感をごまかすために、見えないくらいたっぷりの刻みネギを乗せて、ポン酢をかけて、いよいよ実食です。


 ぱくっ。しゃりっ。もぐもぐ──。


 お、意外にいい感じです。カリカリ感は足りなくてホルモンっぽい食感だけど、ネギのシャリシャリ感とポン酢の爽やかさで油っこさは緩和されて、これはこれでアリです。


 念のため、糖質と脂質の吸収を抑えるサプリを飲んで──よし、これで摂取カロリーはゼロだ!(たぶん違う


 ビールやレモンサワーと一緒にちびちび味わいながら、何となくネットを見ていたら──何や、そもそものやり方から間違ってるやん。

 次にやる時は、ちゃんと下調べしてからやろうっと。


 ──もっとも、その機会は何年か先なんですけどね。






 さて、夜に極悪なものを食べてしまったので、昼はさっぱりと、夏の定番『ざる蕎麦』です。

 しかしここにも、ちょっとした『羽目外し』があります。

 それは、『ざる蕎麦のツユにウズラ卵を入れること』です。


 以前エッセイでも書きましたが、夫婦そろってウズラ卵好きなので、以前はよくざる蕎麦に入れていました。それこそ、それだけのために『ウズラ卵カッター』なる道具を探して入手したくらいでして。


挿絵(By みてみん)


 ただ、嫁が薬の関係で生卵NGになってしまったので、それからはやらなくなっていました。嫁からは『別に気にせず食べていいよ』と言われましたけど、やっぱり気が引けますしね。


 しかし! 嫁がいない間なら罪悪感なし!

 生のウズラ卵1パックを買ってきて、封印から解き放たれたウズラ卵カッターを使ってばんばんツユに入れていきます。ああ、何という贅沢感! これこそ、まさに『羽目を外す』というやつです!


 ──でも、ウズラ卵なんて1パック10個入りで、せいぜい130円くらいなんですよね。やっぱり『小市民』だわー。


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― 新着の感想 ―
奥様への愛が伝わる文章でした。 そうですよね、奥様食べられないもの、食べづらいですよね。 そして、奥様不在時の羽目の外し方がなんとも平和的で微笑んでしまいました笑 癒されるエッセイをありがとうござい…
 お嫁さんを大事にしてらっしゃるんですね。  愛妻家は正義です❗( ☆∀☆)  たまにの羽目はずし、楽しく過ごせたみたいで良かったですね。  ちゃんと使ったお鍋や食器は洗いましたか❔  愛妻家はそうゆ…
お肉、奥様と好みが似てるかもꉂꉂ(ˊᗜˋ*) そのへんのなんやらにある鶏皮、思っているよりカリカリじゃないんですよ、ぶよんとした食感あると、うわー!うわー!ってなります笑 うちは鶏皮をじーっくり炒め…
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