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プロローグ side 彼女
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「もしもし」
通話開始。私はすぐに口を開いた。
「…………」
「えっと、聞こえてる?」
「……ああ」
しぶしぶと、だけど彼は返事をしてくれた。
良かった。切られなくて。
「で、なんだよ。急に電話なんかしてきて」
そうだ。安心している場合じゃない。私は彼に、伝えたいことが
あるんだ。
「あのさ、今外に出れる?」
「無理」
あ、なんか普通にグサリときたかも。
「わかったよ。どこ行けばいいんだ?」
でも、そこは優しい彼のこと。私が黙っているとすぐに私のこと
を安心させてくれる。
そういうところが、彼は上手だった。
「駅の近くのマンションの脇。そこの公園で待ってる」
だけど、私は今日
「じゃあね。また」
彼と別れるんだ。
通話終了。一分四十七秒。




