8話 ネックレス
何処かに行かないように、指輪を監視ながらご飯を食べて。
その後もずっと待っていたんだけど、あおきがなかなか帰ってこなくて、お昼を過ぎた頃にやっと戻ってきた。
途中でよっぽど水槽を抜け出して、指輪を取り戻そうかと思ったけれど、自力じゃ水槽に戻れないし、乾いたら死んじゃうし……。
「待たせたな……そんなに睨むな」
またお魚と、それと何か小さな紙袋を持って来た。
私は返してっと手を伸ばしたんだけれど、そこにご飯を載せたトレーを乗せられてしまう。
違うって!
「指輪、返してよ!」
「解ってる、もう少し待て」
待てって私は犬じゃ無いのよ。
さっきから待っているんだけど?
そう思っていると、指輪を置いてある机の前にあおきが立って見えなくなった。
何やってるの、私の指輪に何か変なことしてないでしょうね。
「ねえっ! ちょっと!!」
「解ってる、ほら」
そう言って差し出してきたのは、銀色に光るチェーンと、それに通した指輪だった。
「こうやって着けろ、危ないから」
「……あ、うん」
すんなり返されて、拍子抜けした。
飼い主として、危険な行為は許さないけど、安全に身に付けるならいいって事かな……?
でも、そうならそうと、もうちょっと喋って説明してくれてもいいじゃない!
ちょっと本当怖かったんだから、私の物なんてそれしか無いんだから。
でも――
「……ありがとう」
「……お昼、食べろ」
「わかった」
……悪い奴では無い、のかもしれない。
その日の魚も、貝もいい感じに解凍されてて美味しかったわよ。