7話 誤嚥
こんな感じでぼちぼち何とかなりそうかなって、思ってたんだけど……。
「隠れて食べなくても良いだろう?」
あおきがそう突然言いだした。
いや、隠している指輪の事もあるし、困る。しかもこの水槽、砂しか入ってないし、隠して置いておく場所がないのよ。
砂の中にずっと隠しておくと、何処かに紛れそうで怖いし。
「嫌だけど」
「……そろそろ信用してくれてもいいだろう、少しだけでも」
いや、そういうことじゃないし。
口の中に指輪が入ってるから、箸で魚の切り身を突き付けられても、困るのよ。
「ほら、あーん」
「いや、ちょっぶぅ」
ふざけっんぐぅ、ちょっとまって指輪が喉の方に!!
やばい、うえっtぅお!!
「がっごっほ、えぇ」
「!?」
出さないと!
ぐるしいっ。
「すまない、そんなつもりでは」
うるさい、じゃあどういうつもりよ!
「がはっけほっ!!」
焦ったあおきが私を水槽から引きずり出すと、背中をバンバンと叩いた。
痛いけど、そのお陰で、口から魚の切り身と指輪が飛び出す。
「はぁーーーで、でた」
カラン、コロンと私の指輪が転がる、良かったけど良くなぁい!
気付かれた!
あおきはそれを見て、拾い上げる。
「ちょっとそれ」
「こんなのを口の中に入れてたのか」
「こんなのじゃない! 私の!!」
捨てないで、持っていかないで。
「……」
地面を這って追い掛けようとしたけれど、水の外じゃ……。
あおきは指輪を机の上に置くと、戻ってきて私を抱き上げて水槽に戻そうとする。やだやだ、離しなさいよ!
「こら、暴れるな。別に捨てたりしない。でも口に入れるな、間違って呑み込んだらどうする」
「あおきが余計なことしなければ、呑み込んだりしなかったわよ!」
「それは……悪かったが」
むっきー頭なでなでするな、嫌いだよ。
それから、見えるところに置いておくから待てと言って、ご飯を渡すと出て行った。
何を待てばいいの?
捨てる気が無いなら、早く返して欲しいのに……。