表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

2話 幻獣ペット屋と競売

中が見えないように小さな水槽は梱包され、トラックに乗せられて私は移動していく。

外の世界は知らないけれど、お爺ちゃんご主人と一日中ドラマ見てた勢を舐めるなよ。うん、何処に運ばれているかはさっぱりだ。


1時間、2時間くらい走ってたかな?

凄い山奥とかに運ばれるのかと思っていたのだけれど、アパートとかビルとかに囲まれているのが見えた。


「ほら、隙間から覗かないよ」


「んー」

一般人に見付かると大変だもんね、ちゃんと解ってるよ。でも気になるじゃない。

お店の中に運ばれて、目隠しのシートを外される。そこは、元は狭くないのかも知れないけれど、大量に置かれたケージや水槽に圧迫された場所だった。


「うわ、私居るところあるのこれ?」


「ああ、大丈夫大丈夫、君は直ぐに買い手が見付かるから」

胡散臭い長髪のペット屋はそう言った。

幻獣ペット縁結びとか店名も嘘くさいし、本当に大丈夫なのかな?


「取りあえずお風呂にいて貰える」


「はぁ! 嘘でしょう!?」

本当だった。本当にお風呂の浴槽で過ごすことになった。

食事はお爺ちゃんご主人のところと変らず、新鮮な海鮮だったのは良かったけれどね。住処がこうだからゴミみたいなもの食べさせられるかと、疑ったのは私悪くないと思う。


私全長そんなに長くないし、全体が浴槽に沈みはするけど、泳げないのよ。流石にちょっとストレスだわ。まともじゃないんじゃん、このペット屋。

何を考えて生前のお爺ちゃんご主人は、ここを指名していたんだろう。


騙されたのだろうか?


尾鰭を外に出して、浴槽の底からお風呂場の狭い天井を見上げる。

口から泡を輪っかにして出していると、あの胡散臭いペット屋が覗き込んできた。


「ご飯ですよ?」

頭をずり上げ、尾鰭を下げる。


「尾鰭乾燥しないんですか?」


「ここ、湿気ぽいからね、それよりあんたはお風呂入らないの?」


「近くに銭湯があるんですよ」


「へぇ~銭湯」

知ってる、富士山が描いてある、でっかいお風呂のお店だよね。

女医が活躍するドラマで見たことある。全部テレビでしか知らないけれど。あーここはテレビが見られないのもストレスなんだよね。

頼めば居間のをつけてくれるけど、音しか聞こえない。


「ゆっくり食べなよ」

お風呂の蓋を湯船に一つ乗せて机にすると切り身の乗ったトレーをそこに置いて、ペット屋はお風呂場から出て行った。

食べている姿をまじまじ観察しないくらいの、デリカシーはあるらしい。


「ごはんごはん」

こんな状態だから、ご飯しか楽しみがないもの。マグロ、ホタテ、イカタコ、サーモンいえーい!


っと、いけない。

彼奴が戻ってこない事を確認して、口の中に仕舞っておいたモノを取り出す。

大事なもの、小さい頃の貰った指輪。

真珠の指輪とか言ってたけれど、プラスチックにそれっぽいオーロラ光沢が出るコーティングがされている子供の玩具。


もう小さくて指には入らないし、そのコーティングさえ剥げてきてるけど、捨てられたくないから、隠してる。


お爺ちゃんご主人は捨てたりしなかったけど、ここはいまいち信用できないから……。

お風呂の蓋の上に、隠すように置いてから、ご飯を食べてる。


「ううーん、美味しい~」


プリップリの貝柱を味わっていると、外からペット屋の騒ぐ声が聞こえた。


「おお、やったー!!」

そしてそれが、ドタバタと近付いてくる。

やっばい! 私は急いで残りを口の中に突っ込むと、指輪を掴んで湯船の下に下ろした。


「見て下さい、やっと競売の審査が下りて、売りに出されましたよ!」

ガラッとお風呂場の引き戸を開けて、見せてきたのはノートパソコンの画面だ。

なんか裏のネットの、競売サイトらしい。

私の写真と説明文が載せてある、そして見る間に金額が上がっていっているのが解る。もう一千万超えたよ、というか。


「こんな金額なのに、私の扱い悪くない?」


「いや、だから直ぐにお金持ちに買って貰えて、良い環境にいけますから、今だけ今だけ」


「こいつ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ