12話 ある夜
「ねえ、この映画面白かったよ。あーあおきはもう見たのか?」
「いや、俺は見てない」
「え、なんで、えじゃあこっちのアニメの映画は見たよね。古いヤツだし名作だし」
「いや……」
「えーなんで、こんなに色々見れる環境があって、なんで」
し、信じられない。
面白いし、あおきなら何時でもすきに出来るのに?
「仕事が忙しいからな」
「でもずっとやってないでしょ、小さい時は?」
「……勉強で忙しかった」
そっか……そうなんだ、私は基本養って貰ってるだけだからな、人間の苦労は解らない。
お爺ちゃんご主人は、元々大金持ちの家系って言ってたけど、あおきは違うみたいだし、どれだけ頑張ったのか解らない。
「目標があったからな」
「そう、なんだ」
にこにこしてこっち見るな。
多分それが、私を飼うことだってのは、何となく解ったわよ。
「でも、もう多少は休んでもいいんじゃないの?」
ゆっくり私を見てる時間も、あんまりないじゃん。折角高いお金払ったのにさ。
一緒にドラマ見る時間くらい、作ってもいいと思うよ。
「そうだな……」
「そうだよ、たまには一緒にドラマ耐久しよう」
「わかった、時間を作る」
でも今日はもう遅いからって言って、電気を消して出て行った。
……この部屋を出て行ったけど、あおきはちゃんと寝ているのかな?
なんか、夜も人が動いてる音が聞こえるんだよね。私ってほら、音波で物体見れたりしちゃうくらい、耳がいいから。休んでいるように見えない時も、凄くあるし。
この部屋を出た後も、あいつ仕事してるでしょ……。
働き過ぎ。
あの水槽見たら、お金が必要なのは解るけど……。
「まあ私が悩んでもしょうがない……か、寝よ寝よ……」
目を瞑って、底に沈む。
もう砂に潜ったりしない、ただ静かに今日見た映画と、あおきと何を見ようかと考えながら私は眠りについた。
ガタンッ!!
大きな音がして、驚いて跳ね起きる。
な、なになに!?




