11話 大きな水槽
「次、それ、それみたい!」
「いいけど、今日はもう休みにしよう」
「ええー」
「いや、もう三、四本ぶっ続けで見ているぞ」
そろそろ夕飯と言われて、驚いた。そんなに時間が経っていたのか!?
そう言われると、お腹が空いた気がした。
「ご飯食べろ」
「わーい」
ちょっ頭撫でるな、手で払ったりはしないけど。
次の日は、テレビのドラマも配信? で見られるようにあおきがしてくれた。
後、げーむってのも二人でした、えーめっちゃ楽しい~。
そんな感じで、わりと楽しく過ごしてた。
んだけど、あおきが急に私を外に連れ出すって言いだした。
「ええー」
「外と言っても、下の階だ」
「下の階」
「ああ、ちょっと見て欲しいものがある」
何だろう、まあ私は肺呼吸も出来るから、多少水から出ても大丈夫だけどね。
あ、でもこのビルの中って事は……。
「まだ工事中なんだが」
「うわぁー……」
予想した通り、水槽だった。けど、予想した以上に――
「おおっきい……」
この大きなビルの一つの階、その殆どが水槽になる、そんな感じで作られている。
あおきに抱き上げられて、まだ水の入っていない底を見たけど。
階段で水槽の上側にも入れるみたいなんだけど、めちゃめちゃ広いよ、クジラでも飼う気なの?
「気に入ってくれたか」
「いや、大きすぎでしょ、これって水の重さに耐えられるの?」
「それは大丈夫だ、元からそのつもりで作らせてたから」
そうなのか、お爺ちゃんご主人のとこでも、こんな大きな水槽に入ったこと無いよ私。
いや、産まれて初めてかもね。
「もうすぐ完成するが、殺風景だろう」
「あーまあね」
それで、中のレイアウトの希望を知りたいんだってさ。
なるほどねー……。前までだったら、指輪を隠せる岩とか欲しいって言ったんだけどな。
なんだろう、ここまで広いの何か置いて狭くするのは、勿体ない気もする。
「海の中っぽくするとか……」
「うーん、テレビが見やすい場所作って欲しい、後げーむ」
「それでいいのか?」
「私、ぶっちゃけ海とか、知らないのよね」
「そう、なのか?」
「うん、水槽産まれ水槽育ちだからね。きっと一人で海とか行っても、生きていかれないよ」
「……そうか」
なんであおきが悲しそうにするのよ。
全然、私は平気なんだから。あんたが気にすると、気にしなきゃいけないみたいに、なるでしょう。
私には指輪があるし、今の生活に何の不満も無いんだし……。
結局、大きいテレビを二つ、横から見えるとこと、上側げーむ用で置いて貰う事になった。
ああ、水槽の中にも、多少それっぽい石のオブジェとか置くことにしたよ。




