10話 暇
あおきはいい奴じゃないかもしれないけれど、いい飼い主ではありそう。
甲斐甲斐しく世話はしてくれるし、ご飯も美味しい。
我が儘言ったら、活魚まで取り寄せてくれたよ。
「水槽に放さないで、それはいいから、追いかけ回して捕まえたいとかはない」
「そうなのか?」
「新鮮なのが食べたいだけだから」
「なるほど、なら絞めた方がいいのか」
「もちろんだよ」
切り身以外の部分もたまに食べた方がいいらしいから、内蔵だけ取ってね!
ちゃんと説明したら、料理人呼んで捌いて貰ったみたい。めちゃくちゃ美味しかったよ。
ああ、あおきも一緒にお刺身食べてたね。
で、衣食住が一応あって、身の危険も無さそうってなるとさ。
「……大丈夫か、具合でも悪いのか?」
水槽の壁に下半身ごと尾びれ貼り付けて、しゃちほこ状態で砂に突っ伏してたら、心配そうにされた。でも私は、この娯楽のない刺激の無い生活に、飽き始めてきていた。
「……暇」
「?」
「暇なの、退屈! この退屈は流石に苦痛」
「そうか、苦痛……」
起き上がって、正面に向き合うけど、眉間の皺怖い顔になってるから。
作らせてるって大きな水槽、どれ位のサイズか解らないけど、お金も時間も掛かるのは解ってる。けど、運動も出来ないし、テレビも見れないし。
「ドラマが見たーい」
「ドラマ?」
「医者とか警察とか探偵のやつ」
「ああ、なるほど……そういうのが好きなのか」
「わるい?」
あおきは応えず、広い部屋の端に行くと、何か機械を操作する。すると、天井から板? 布? みたいなのが下りてきた。なにあれ?
それから、リモコンで夜寝る時みたいに暗くした。
「……何してるの?」
「会議用に付けたものなんだが」
パッとその白い画面に画が映った、えー凄い映画!?
驚いて、水槽の水をバシャッとこぼしてしまった。
「わぁーー……」
「テレビ番組は見れないが、配信している映画なら」
えー凄い!
めっちゃたのしい!




