とろける真夏
……夏は、暑い。
夏は……、熱すぎる。
夏は、暑くて熱くて……たまらない。
真夏の熱波は、著しく日常を脅かす。
瞬く間に傷む食品。
あっと言う間にぬるくなる飲料。
気付けば破損している部材。
急速に効率を低下させる生物。
夏は、暑すぎるのだ。
夏は、熱くなりすぎるのだ。
常軌を逸脱した猛烈な暑さは、あらゆるものを溶かす。
秋、冬、春であれば、気軽に口の中に放り込むことができるのに。
秋、冬、春であれば、正しく形状を維持しているはずなのに。
秋、冬、春であれば、活発に行動しているのが当たり前なのに。
真夏は…あらゆるものが変容してしまう。
たとえば、氷菓。
たとえば、チョコレート。
たとえば、グミ。
たとえば、マシュマロ。
たとえば、バター。
たとえば、ホイップクリーム。
たとえば、プラスチック。
たとえば、人。
真夏の熱波のせいで、形状が変わってしまうものは少なくない。
真夏の熱波に負けて、形状を保てなくなるものはあふれている。
液体化する食品を見ると…、悲しくなる。
変形して使えなくなったパーツを見ると…、泣けてくる。
だらしなく横たわる人を見ると…、やる気が削げる。
とろけてしまった食品を飲みこめば…むなしくもなる。
とろけてしまったパーツを取り替えていると…居た堪れなくなる。
とろけてしまった人間を見ると…意欲が失せる。
真夏は、本当に……忌々しい。
独特の食感を楽しめるはずの食品なのに、液体状態を受け入れざるを得ない。
苦労して手に入れた部品なのに、また探しに出かけなければならない。
溌剌とした動きが魅力的な生き物なのに、見る影もない。
暑くて、熱くて…食欲も、失せる。
マズそうになった食品。
使いにくくなったカトラリー。
ベタベタしてしょっぱくなった肉。
……暑さが和らぐまで、避難するか。
……熱さが消え去る頃、また来るか。
入道雲を見上げた私は…、2.725ケルビンの空間へと、飛び立った。




