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聖なる夜に過ごす2人のお話

作者: 白鷺雪華

12月25日 クリスマス

街ではイルミネーションが彩られ、

恋人達が手をつなぎ、笑い合いながら歩いている。


しかし、気楽な一人暮らしを満喫している私には

特に変わらない日常の日々である。


「ふぅ~~ やっぱり朝は冷えるわね」

「まぁ、買い物は昨日までに終わらせたし、

 今日はもう出かける必要はないのよね」

そう言って、キッチンへと向う。

歯磨きと洗顔を済ませてから椅子に座ると

これからの予定を反復する。

「今日は茜が遊びに来るからそれまでに

 家事と料理の下ごしらえは終わらせるか」

茜とは私の双子の妹である。

お互い一人暮らしをしているが、

家が近く頻繁にお互いの家に行き来している。

今日はクリスマスだからなのか、

2人で飲もうという話になり昨日から準備している。


「さて、それじゃ洗濯からはじめますか」

私は毎日の家事を終わらせるために立ち上がった。



所変わり茜の自宅

あたしはベッドに寝転びながら、

YouTubeで音楽を聴いている。

「〜♫〜♫」

何曲か聴き終わるとイヤホンを外して、

スマホのディスプレイで時刻を見る。

「うん、そろそろいい具合になってるかな」

立ち上がりキッチンへと向う。


フライパンの蓋を空けて蒸している

かぼちゃをヘラでつつく。

「よし、いい感じだ」

かぼちゃをその前に蒸していた

じゃがいもに加えて潰しながら和える。

「これに〜キャベツと人参を加えて〜」

事前に切っておいたキャベツと人参を加える。

「塩胡椒と醤油で整えたら完成!」

「かぼちゃの粘りでマヨネーズなくても

 十分まとまるんだよね」

箸で少しつまんで味見する。

「うん、良し!」

「じゃあこれを〜今日葵と一緒に食べる分と、

 普段の常備菜にする分とでタッパーを分けて……」

2つのタッパーに分け終えると、

2つとも冷蔵庫で冷やしておく。


「葵のところに行くのは夜だから、

 それまで読書しよっと」

あたしは再びベッドに寝転んで、

何度も読み返しているお気に入りの文庫本を広げた。



所は戻り葵の自宅のキッチン

私は愛用のエプロンを身に着けて、

必要な食材を冷蔵庫から取り出していく。


「まずは野菜から……」

「キャベツ、人参、玉ねぎを食べやすい大きさに切る」

切った野菜を鍋に入れる。

「野菜に塩をふりかけて炒める」

「こうすることで浸透圧で野菜から水分が出て、

 食材が傷みにくくなるみたい」

「で、野菜を炒めたらホールトマト缶を

 加えて更に炒める」

「具材がしんなりしたら水と固形コンソメを加える」

「そして塩胡椒とオレガノで整える」

「あとは30分ほど煮込んでおく」

スープを煮込んでいる間に

メインの下ごしらえをしておく。


茜が来るのは夜だから、

仕上げは来てからでいいかな。


下ごしらえを終えるとPCを起動させて、

趣味で書いている小説の続きを書いていると、

部屋にインターフォンの音が鳴り響いた……



あたしは葵の自宅に着くとインターフォンを押した。

しばらくしてドアが開くと葵が笑顔で出迎えてくれた。


「いらっしゃい」

「どうぞ」

「うん、お邪魔します」

あたしはきちんと靴を揃えて脱ぐと、

葵の部屋に上がる。


さぁ、姉妹2人だけの

クリスマスパーティーの始まりだ!



茜はさっそく手荷物をテーブルに置く。

「はい、熱いお茶。

 外は寒かったでしょう?」

「ありがとう!

 うん、結構風があって冷えてたよ」

熱いお茶をちびちび飲みながら笑う。

私もお茶を手元に置き、向かい側に座る。

「はぁ~ 冷えた体が暖まるね~」

「家が近いとはいえやっぱりね」

「そうね。今年は寒くなるらしいからね」

しばらくお茶を飲んで体を暖めた茜は

荷物を広げて冷蔵庫に向う。

「作ってきたサラダ冷蔵庫に入れとくね」

「ええ。私もメインの料理を仕上げるわ」

「じゃ、あたしはテーブルの用意しとく」

「お願いね」

私はキッチンに向かい、

メイン料理の仕上げにかかる。

あとは炒めてとろみをつけるだけなので

茜がテーブルを用意してくれてる間にできるだろう。



「よし、できたわ」

「こっちも準備OK!」

お互い整ったのでお互いの料理をテーブルに用意する。

メインを大皿に盛り付けて中央に置き、

トマトスープとサラダを盛り付ける。

そして、別で温めておいたホットワインを

お互いのカップに注いだら準備完了!


向かい合って座り、ホットワインで乾杯する。

「乾杯」

「乾杯」

軽くカップをあわせて一口飲む。

「はぁ~ 暖まるね~」

「えぇ、香りもいいし寒い日にはこれね」

ホットワインで体を暖めた茜は

「いただきます」と言ってサラダに箸をつける。

「うんうん、かぼちゃの甘みがいいね」

「出来立て味見したときとはまた違う味わい」

「キャベツや人参の食感もいいアクセントね」

私もかぼちゃサラダをいただく。

「そう! 生の野菜だからシャキシャキ!」

「人参も茹でないで生のまま和えてるの」

「サラダなら生のままでも成り立つわね」

私はトマトスープを挟みながら、

メインである八宝菜をいただく。

「うん、しっかりとろみもついてるし、

 野菜にも味が染みてる」

「彩りも綺麗だし赤と緑でクリスマスカラーね」

「茜のサラダもクリスマスを意識したんじゃない?」

「ふふっ じつはそうなの」

「まぁ、クリスマスに限らず普段から作ってるけどね」

「美味しくて常備菜にできて体にもいい」

「家にもまだたっぷりあるよ」

「双子だから似るのかもね。

 私も常備菜は常に用意してる」

「一つ作っておけば好きな時に食べられるから

 お気に入りも生まれてくるよね」

ホットワインをちびちび飲みながら

八宝菜をつまんでいる。

「トマトスープも野菜たっぷりで甘みがあって好き」

「八宝菜やサラダともピッタリあうし」

「玉ねぎの甘みも活きてるわ」

「煮込む前に炒めてるからかしらね」

「うちはずっとそうだったよね」

「冷凍も使うけど基本手作りの和食で」

「そうね、そこから自然と料理を覚えていって」

「いまでは手作りが当たり前で作らないと何か違和感」

「お惣菜を買うこともなくなっていったわね」

私はサラダを食べながらふと思った。

「そういえば、クリスマスなのに

 チキンもケーキもないわね」

「ふふっ そうだね」

「手作りの野菜料理ばっか」

茜が笑って答える。

「お互い好きな物作って持ち寄るから、

 自然とこうなるよね」

「私達2人のパーティーだからクリスマスには

 チキンとケーキ、ピザなんて思い込みもないわね」

「そうそう、自分がどうしたいかだよね」

そして2人で笑い合う。


「あ! 葵、外見て」

茜が窓を指差す。

「あら、雪」

「ホワイトクリスマスだね」

「天からのサプライズかしらね」

「雪の白にワインの赤。おめでたいね」

「来年も楽しい一年にしようね」

「えぇ、もちろん」

「一生忘れられない一年にしましょう」

2人で雪を見ながらホットワインで乾杯する。

紅白のクリスマスパーティーは

私達の心に刻み込まれていった……



そしてその後……

2人だけのクリスマスパーティーは

来年再来年と続いていったが、

いつしか新しい生命が産まれて

人数が増えていくのだが、

野菜たっぷりの手作り料理だけは変わらないのは

私達2人の約束で生涯続いていく……

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