その後のあれこれ
本日2作目の投稿です
―――そうして一月ほどあと。
わたしは、本当にジェンティーレ侯爵家の養子になった。
新しい生活がどんなものになるか、ちょっと不安だったけれど……義理の父と母は、こちらが恐縮するほど優しい。十歳以上年の離れた義理の兄と姉も優しい。こんな幸せなお家って世の中にあるんだ?!と驚いている。そして、美味しいものを毎日食べさせてもらっているので。とても充実した日々だ。
ちなみに……わたしの実の父と母はいわゆる貴族的な政略結婚だった。二人の間に愛とか、信頼とか、全然なかったように思う。そもそも父は結婚前から平民の愛人がいて、そっちの方をずっと大事にしていたくらいだった。
そして実の母はわたしが七歳のときに病気で亡くなり、愛人が後妻としてカルーソ家へ入ってきた。ミアを連れて。
そう、ミアは……父と愛人の子だ。
だから、父はわたしよりもミアを溺愛した。
まあ、こんな家は巷にありふれているから、わたしも別に今まで自分が不幸だ悲しいなんて思ったことはない。いろいろとイジワルはされたけど、学校には行かせてくれたしね。
だけど。
レナートがわたしのことを調べて、実の母がわたしのために残した遺産を、父と愛人が勝手に使っていたことが判明した。そんなワケで、レナートは父に賠償するよう求めてくれているらしい。
カルーソ家と縁を切ることができたから、わたしは遺産がなくてもいいんだけどなぁ。
まあとにかく、レナートの中に入って―――そこからわたしの人生は一変した。
こんな風になるなんて、予想もしなかった。
まだ薬草師の夢は捨ててないんだけど、レナートの婚約者になるのも悪くないかも知れないかも?と最近、思い始めている。わたしにだけ、本音を言うレナートは結構カワイイ。
とはいえ、ご飯に釣られたと思われるのは悔しい。なので、返事はまだ保留中だ(あのとき、咄嗟に「受けます」と言ったけど、あとでもうちょっと待って欲しいと訂正した)。
まだ時間はあるし……こういうことは、ゆっくり考えていけばいいよね?
蛇足だけど。
ディエゴは、マルケッティ公爵領の中でも僻地にある北の領地で地道に働かされているらしい。殺そうとする気はなかった!と釈明していたけれど、二度もレナートを殺しかけた件は事実だ。さすがにお咎めなしにはならなかった模様。そもそも、家の方針とは違う“第一王子派に付く”という暴挙もやっている。公爵家からは放逐するという話もあったのだとか。それをレナートが「ディエゴが反省してくれれば充分」と取り成したらしい。
……もっともディエゴがそれを感謝するかどうかは、ナゾだけれども。
「ま、ディエゴとの件がなかったら、マルティナとの縁はなかったからね。僕も寛大になるってものさ」
レナートの方は、余裕綽々だ。
でもまあ、確かにレナートの言う通りだよね。
わたしの今の“美味しい生活”も元を辿ればディエゴのおかげ……。いつか会うことがあったら、お礼を言うことにしよう!
このあと、マルティナとレナートが16才になったときの話を書く予定をしております。
次はレナートもちゃんと意識のある状態(?)なので、今作以上のドタバタした話になる……と思います。そちらでも入れ替わりをする、かも?
なお、この話の続きに第2章として書くのではなく、新規小説で書きます。投稿するのは一月以上先になると思いますが、そちらも読んでいただけると嬉しいです。




