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し、死ぬぅ……!

 エスタとイレーネの二人と別れ、考えこみながら森を歩く。

 すると、ディエゴと顔を合わせた。その後ろにはパオロとダミアーノがいる。

 顔を合わせた瞬間、ハッとディエゴが表情を強張らせた。

「レナート……」

 あちゃあ、いつも一緒にいるのに、今日は別の人と組んだことを咎められるのかな?だけど、レナートと仲の良かった人と組んでいたら、中身が違うってバレそうだしなぁ。

 困ったと思っていたら、ディエゴは真剣な顔でわたしを手招いた。

「ちょっと、君に話がある。少し、向こうで二人で話そう」

「う、うん……」

 あああ~、呼び出されてしまった。でもさー、別に恋人同士でもないんだし、たまに違う人と授業で組むくらい、いいじゃんねえ?

 ディエゴって心が狭い。

 レアンドロとジョナにちょっと行ってくると言って、ディエゴと二人で近くの池の畔の方へ。

 サクサクと草を踏みしめ、ディエゴから何と言われるのか……いろいろ頭の中で想像する。

 やがてディエゴの足が止まった。わたしも足を止める。

「レナート。……わざと飛び降りて僕の動揺を誘おうとしたんだろ?それが失敗したからって、記憶を失ったふりなんて止めろ。僕と君はもう決別したんだ。そのことは変わらない」

「……えーと、なんの話?」

「まだ誤魔化すのか?!」

 いやいや、本当に分からないんだってば。決別って?

 ディエゴとはもう友達じゃないの?

「セラフィーノ第一王子から僕だけが選ばれたこと、悔しいんだろう?認めたくないからって、見苦しいな。だけど、これが事実だ。君よりも、僕の方が優れているってことの。……ということで、これからは僕に話しかけないでくれ」

 ……わたしから話しかけていない。そっちから話しかけてきたんじゃん。

 じゃなくて。えーと……セラフィーノ第一王子は、側妃さまのお子だ。

 正妃さまのお子はパトリツィオ第二王子。お二人とも、わたしやレナートより一歳年上の十歳。生まれは三か月しか違わないと聞いた覚えがある。

 そんな訳で、王宮ではどちらを王太子につけるかモメているって話だったっけ。まあ、多くの貴族はパトリツィオ第二王子を推しているらしいけれど(セラフィーノ第一王子はやや粗暴で短慮、パトリツィオ第二王子は温和で人の話によく耳を傾ける方だからだ)。

 でもってレナートやディエゴは、十歳になったら王子殿下の側近につくらしい。

 どちらの公爵家もパトリツィオ第二王子派だった、ような?

 でも、ディエゴは第一王子派に転向したんだ。ふうん。

 王子本人から、自分の側近になるよう言われてそれを受けたってことよね?

「もう一度、君に言っておくよ。……僕はね、レナート。君のことなんか大嫌いだよ」

 わたしが情報を整理していたら、ディエゴはさらに言葉を続けた。突然の“大嫌い”宣言に、体がぴくっとする。

「同じ公爵家の子とはいえ、君は長男。僕は三男。全然、同じ立場じゃない。そのうえ、君は勉強ができて優秀だ。愛想が悪いくせにその顔のおかげで女子からも人気がある。僕がどれほど努力しても、何一つ、君には敵わないんだ。ずるいじゃないか!将来、君と一緒に第二王子殿下の側近になったとして……僕が輝く未来なんて、全然見えやしない。でも僕は第一王子殿下に選ばれた。殿下を必ず王太子にして……いつか君を見下ろしてやる」

 もう一度、体が大きく震えた。

 ああ……これは、レナートだ。レナートの意識が、ディエゴの言葉に傷ついている。

 わたしはムカムカとしてきた。こんなのにレナートが傷つくってバカバカしくない?

「小っさ……」

「え?」

「君、器が小さいね」

 腕を組み、少しだけ偉そうな態度をとる。

「要は自分が一番目立って、女の子からモテモテになりたいってことだろ。くっだらない。そういうのが理由で、どの王子の側近になるかを選ぶんだ?バカじゃないか?公爵家の一員なら、国のことを考えて何が一番大事か考えることが大切だろ」

「な……な、なにを……」

「絶交宣言、ありがとう。レナートも……僕も、君と縁が切れて良かったと思うよ。一緒にバカにならなくて済む」

 こんな嫉妬心にまみれた、人を蹴落とすことしか考えてないヤツなんて友達に要らない。レナートが傷つく必要もない。“見下ろしてやる”だなんて、最低だ!

 わたしは踵を返して歩き出した。

 ディエゴと話をしてもムダだ。さっさとレアンドロとジョナの元へ帰ろう。

 ―――ところが。

 ぐいっと首元を引っ張られた。

「君の。そういう高慢なところが、本当に……ムカつくよ!」

 低いディエゴの呟き。

 そして体が傾いで、バシャン!と池に放り込まれた。


 ゴポ……ッ。

 口を開いた途端に、大量の水が入ってくる。

 ウソ、やだ、わたし泳げない!

 ゴボボッ……。

 必死に手足を動かすけれど、上も下も分からない。どうしよう、どうしよう……!

 ガポッ!

 また大量に水を飲んでしまった。

 視界が霞む。息が出来ない。

 助けて。誰か……誰か、助けて……!!




 ―――ハッと目を開ける。

 白い空間。

 どこ、ここ?!

 慌てて起き上がったら、ベッドの上だった。

 た、助かったのかな……?

 一瞬、ホッとしたけれど、はらりと目の前に落ちてきた鳶色の髪に愕然とする。

 違う。わたし……わたし、戻ってる!自分の身体に、戻っているんだ!

 数日寝込んでいたせいか、力の入らない身体を必死に動かして、ベッドから下りる。ふらつく足で、扉の方へ。

 その途中で壁の鏡に映る自分の顔が見えた。

 うん、マルティナの顔だ。わたし、自分の身体に戻ってきている。

 つまり、今、森でレナートの身体が池に沈んでるってことだよ……!

「カルーソさん?!起きたの?ダメよ、まだ動いちゃ……」

 隣の部屋にいたアンナ先生がわたしに気付いてベッドに戻そうとしてきた。だけど、わたしはその手を振り払い、走り出す。がんばれ、がんばれ、わたしの足!

「カルーソさん……!」

 ごめんなさい、アンナ先生。

 今は、レナートを助けに行かないと!


 自分のどこにそんな力があったのか分からないけれど、わたしは走りに走って魔法樹の森の池まで行った。

 裸足だったせいで、足は傷だらけだ。

 途中で何人かすれ違った気もするけれど、そのことを意識するヒマもない。

 レナート。

 どうしよう、わたしがディエゴを煽ったせいで……池に落ちちゃった。死んじゃったりしないよね?いや、それともやっぱり、わたしが中に入ったときには死んでいたの?

 レナート……!

 息を切らして見覚えのある池までたどりついたとき。

「マルティナ・カルーソ?」

 少し驚いたような男の子の声がした。

 振り返ると……大きな木のそばに、びっしょりと全身が濡れた―――レナートの姿。

「レナート!」

「ああ、良かった。君は、自分の身体に帰れたんだね。急に君の意識が消えて、君が死んでしまったのかと思った」

 ?

 レナートは、わたしがレナートの身体にいたことを知っている……?

 とりあえず、びしょ濡れのレナートに恐る恐る近寄って、彼がちゃんと生きていることを確認する。

「はあ……生きてるぅ……」

「ふふ、ありがとう。僕のことを心配して、ここまで来てくれたんだ?僕はわりと泳ぎが得意なんだよ。これくらいの池、どうってことない」

「そ、そうなんだ。てっきり、殺しちゃったかと思った」

「……僕はディエゴに突き落とされた。君が殺したことにはならないと思うけど」

「ううん、わたしが余計なことを言ったせいだし。それに、泳げなかったし。……ていうか。レナートはどこまで知ってるの?今まで、どうしてたの?」

 安心して、思いっきり普通にしゃべってしまったけれど。

 よくよく考えたら、レナートとちゃんと話したのって初めてだ。ど、どうしよう。すごく馴れ馴れしく話しかけちゃった。怒られるかしらん。

 だけど、レナートはふいに笑顔になって、ぎゅっとわたしを抱きしめた。ひえっ!

「マルティナ。ありがとう。……君のおかげで、僕は救われたよ」

 ???

 全然、意味がわかんない。

「最初はとても驚いたけれどさ。君が僕になってくれて、本当に良かった」

 えーと?とりあえず、怒ってないってこと……?

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