第9話 深夜の街で、毒薬を握って、テスト開始だぜ!! もう、やるしかないぜ!! おまえら、マジで、頭イカレテルぜ!! ~この世界、予測不可能だぜ!!~
深夜。
廃墟となった教会の外は、不気味なほど静寂で、圧倒的な闇に包まれていた。
酒場が一軒だけ営業しており、その酒場以外、全ての店が閉まっていた。
暗すぎて、人の行き交う姿は見えず、確認できない。
街灯の僅かな光に照らされて、自分の足元だけ、何とか確認できた。
その圧倒的な闇の中を、タツヤは、毒薬を持ちながら、うろついていた。
ーダッシュで教会を出たけど、これだけ暗いと、用心して、慎重に進んだ方がいいな。
タツヤは、警戒しながら、目の前の道を進む。
ー他の人達(テスト参加者達)は、どうしてるんだろう? もう、誰か殺したのか? っていうか、人殺しなんて、できるのか? テストの合格が掛かっていることや、できなければ、殺されるという状況とはいえ、人殺しなんて、そんな簡単にできるはずがないっ…!!
タツヤは、毒薬を握っている自分の手を眺める。
ーでも、やるしかないのか…? この毒薬で、誰かを殺す…そうしないと、ジェシカが殺される…!! 俺だって、殺されるし!! 仕方ないんだ…!! そうだ…!! やるんだ!! 覚悟を決めろ!!
タツヤは、自分を奮い立たせる!!
ーそうだ!! 俺には、迷っている時間など、ないんだ!! 一番に戻らなきゃいけないんだ!! もう、誰かを殺すしか道はないんだ!! やってやる!!
「クソッタレ!! やってやるよ!!」
タツヤは、覚悟を決めた!!
ーとにかく、誰かに、この毒薬を飲ませないと…!!
タツヤは、周囲を見回す。
酒場以外、目につく所はない。
ーまた、酒場か。今日で二回目だな。
タツヤは、酒場に入った。
二十代前半ぐらいで、『中世の大学生』のような格好をした男が、斧を握って、『酒場の男店員』の頭を、かち割ろうとしている光景が、目に入った!!
『酒場の男店員』は、頭から流血しながら、
「金なら持って行けよ!! クソ野郎!!」
と、言って、怒鳴る。
『中世の大学生』は、すまなさそうに、
「すまない。金は、いらないんだ。死んでくれ」
と、淡々と言った。
さらに、二十代後半ぐらいで、『事務の受付嬢』の格好をした女が、槍を握って、『酒場の女店員』を、刺し殺そうとしていた!!
『酒場の女店員』は、服が破けて、そこから流血しており、
「一体何なの? あなた達は?」
と、言って、『事務の受付嬢』を睨む。
『事務の受付嬢』は、
「何だっていいでしょ。とにかく、死んで!!」
と、言って、槍を振り回す!!
『酒場の女店員』は、かわそうとするが、かわせずに、胸や腹などを斬られて、床に血が飛び散る。
『事務の受付嬢』は、
「あたし、人殺しは初めてなの。だから、抵抗しないでね」
と、言って、とどめを刺そうとする。
ー何なんだ、この光景は…!?
タツヤは、呆気に取られる。
『中世の大学生』は、入り口のタツヤの姿に気付く。
『中世の大学生』は、溜め息をついて、タツヤに、
「またか。こいつは、俺の獲物だから。他を当たってよ」
と、言った。
『事務の受付嬢』も、入り口のタツヤの姿に気付き、
「やっぱり、酒場は目につくからね。こっちもよ。他を当たって」
と、言った。
タツヤは、どうしていいか、わからず、
「あ、ああ。そうするよ」
と、言って、酒場を出た。
ーこれでいいのか? 店員を助けるべきなのでは? いや、何、言ってるんだ!? 俺も、これから、誰かを殺すんだろ!? さっさと次へ行こう。
タツヤは酒場を離れる。
近くの民家から、「ギャー」という悲鳴が聞こえた!!
タツヤは、悲鳴が聞こえた民家へと入る。
三十代前半ぐらいで、冒険者ギルドにいそうな、『ギルドの戦士』の格好をした男が、老人と老婆を殺そうと、剣を振り回している!!
老人は、体中、流血しており、
「誰か、助けてくれー!!」
と、叫んで、助けを求めている。
老婆は、老人にしがみついて、
「何でも、持って行っていいから、やめておくれ!!」
と、悲痛な叫びを上げている。
『ギルドの戦士』は、
「うるせえ!! やるしかねぇんだよ!! 死ね!!」
と、叫んで、イラ立っている。
すぐ横の民家からも、「うわっー」という悲鳴が聞こえた!!
タツヤは、その民家へと行く。
五十代前半ぐらいで、『農作業員』の格好をした男が、大鎌を両手で握りながら、三人家族の父と母と娘を皆殺しにしようと、襲い掛かっていた!!
父親は、剣を握って、抵抗した様子で、頭と体を流血し、呼吸を乱しながら、
「ハァ…ハァ…何なんだ? おまえは?」
と、言って、膝をつく。
母親も、頭と体を流血しており、
「あなた!! あぁ、神様!! どうか、お助けを!!」
と、神に祈っている。
娘は、母親の後ろに隠れて、ひどく怯えた様子で、
「お父さん!! お父さん!!」
と、泣き喚いている。
『農作業員』は、
「これが殺人作業か。たまらんなぁ。もっと聞かせろ」
と、言って、楽しんでいる様子だった。
他の民家からも、「ぐあっー」という悲鳴が聞こえる!!
次から次へと、民家から、悲鳴が聞こえてくる!!
ー地獄絵図だ。もう、勘弁してくれよ。
タツヤは、頭を抱えた。
タツヤの横を、一番最初に教会を出た、四十歳ぐらいの『商人』の格好をした男が、通り過ぎる。
『商人』の左手には、血の付いた剣、右手には、男の生首が!!
『商人』は、
「へへへっ、やったぞ!! これでテスト合格だ!!」
と、嬉しそうにしている。
ーああっ!! まずいっ!! あの『商人』が戻ったら、『商人』が一番に戻ったことになり、ジェシカが殺されるっ!! 俺も殺されるっ!!
タツヤは、ひどく動揺する!!
ーどうしよう、どうしよう、どうしよう!? どうすれば、どうすれば、どうすればいい!?