第6話 宿屋から逃げるぜ!! 夜の街中を駆け抜けてゆくぜ!! ~この世界、予測不可能だぜ!!~
【タイムトラベル4回目スタート】
『フランシス王国』の宿屋の部屋から、
過去ランダムで、〇〇へタイムループ
タツヤは、ハッと目を覚ます。
そこは、『フランシス王国』の宿屋で、タツヤは白い椅子に座っている。
ジェシカは、部屋の扉の前に立ち、
「それじゃ、私、パトロールがあるから。宿代は払ってあるから、ゆっくり休むといいわ」
と、言って、扉を開けようとする。
「ちょっと待った!!」
タツヤは叫んだ。
「どうしたの?」
ジェシカの動きが止まる。
ーまたか。この場面に戻るようになってるのか?
タツヤは立ち上がって、
「扉を開けちゃ駄目だ」
と、冷静に言った。
「どうして?」
ジェシカは、不思議そうに聞く。
ーさて、どうする? 正直に、『レッドブラッド教団』のデルタが、待ち構えていることを話して、失敗した。ジェシカが、扉を開けないように、説得しても失敗した。
「タツヤ?」
ジェシカは、キョトンとしている。
タツヤは焦り始める。
ークソッ!! 早くしないと、デルタが部屋へと入って来て、また、殺されるパターンになる!!
「ねぇ、タツヤ? どうしたの?」
ジェシカは困惑している。
タツヤは、覚悟を決めて、
「ジェシカ!! 俺と一緒に、部屋の窓から、外に出よう!!」
と、言った。
「は? 何言ってるの?」
ジェシカは、呆気にとられる。
タツヤは、
「理由は後で話す!! 今は、話してる余裕はない!!」
と、言って、扉の前にいるジェシカの元へと行き、頭を下げながら、
「頼む!! 俺と一緒に来てくれ!!」
と、言って、手を差し出す!!
ジェシカは、
「一体何なの? どういうこと?」
と、再び困惑する。
タツヤは、頭を下げ続け、手を差し出しながら、
「もう時間がない!! ジェシカ、頼む!! 理由は、後で話すから!!」
と、必死な様子で、お願いする!!
「う~ん…」
ジェシカは迷っている。
「頼む!! 俺を信じてくれ!!」
タツヤは、必死な様子で、お願いを続ける!!
ジェシカは、溜め息をついて、
「…わかったわ。ちゃんと、後で説明してよ」
と、言って、タツヤが差し出した手を握る。
「よし!! 行こう!!」
タツヤは、ジェシカの手を引っ張りながら、部屋の窓の方へと急ぐ。
タツヤは、部屋の窓から、外の風景を眺めた。
外の風景は、『異世界ファンタジー』の世界そのものだった。
太陽の光が降り注ぐ、中世ヨーロッパの美しい街並み。
その美しい街並みの中を、多くの人間が行き交う。
国の象徴である立派な城、教会、時計塔などの芸術的な建築物。
武器屋、防具屋、道具屋、冒険者ギルドなどの店の看板。
上空では、複数の白い鳩が飛び交う。
「おぉ!! すげーな!!」
夢にまで見た、『異世界ファンタジー』の本物の風景に、タツヤは感動した。
タツヤは、窓から、下を向いて様子を確かめる。
ここは、宿屋の三階。
飛び降りたら、無事では済まないだろう。
外壁の突起部に、足を置いて、壁沿いに進みながら、慎重に下りて行くしかない。
「ジェシカ、先に俺が行くから、ついて来て」
タツヤは、振り向いて、ジェシカに言った。
「大丈夫なの?」
ジェシカは不安そうだ。
「大丈夫だ」
タツヤは、そう言って、窓から外へと出る。
タツヤは、外壁の突起部に足を置き、慎重に、壁沿いに進んでいく。
ジェシカは、タツヤの動きを真似しながら、ついて行く。
緊張で、全身から汗が噴き出る。
三階の外壁の突起部の端まで進み、突起部に手を掛けて、二階の外壁の突起部へと、慎重に下りる。
「ジェシカ、大丈夫か?」
タツヤは聞いた。
「うん、大丈夫」
ジェシカは答えた。
また同じように、二階の外壁の突起部に足を置き、慎重に、壁沿いに進んでいく。
同じように、二階の外壁の突起部の端まで進み、突起部に手を掛けて、一階の外壁の突起部へと、慎重に下りる。
「よし!! この高さなら、飛び降りても、大丈夫だろ」
タツヤはそう言って、一階の外壁の突起部から、飛び降りる。
ジェシカも真似して、飛び降りる。
タツヤの足とジェシカの足が、地面に着く。
タツヤとジェシカは、ホッとする。
街は、夕方から夜の風景へと、変化していた。
「ジェシカ、走れるか?」
タツヤは聞いた。
「ええ。大丈夫よ」
ジェシカは答えた。
タツヤは、
「じゃあ、できる限り、走るぞ!!」
と、言って、ジェシカに向けて、手を差し出す。
ジェシカは、
「ここまでするってことは、何か、すごい理由があるのよね?」
と、言って、タツヤの手を握る。
「そうだ。行くぞ!!」
タツヤは、ジェシカの手を引っ張りながら、走り始める。
ーなるべく、ここから離れるんだ!! できる限り、遠くへ!!
タツヤとジェシカは、行く当てもなく、無我夢中で、夜の街中を駆け抜けてゆく!!