表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/40

追憶の第38話 【ジェシカ編ラストエピソード】 ~グッドエンド? それとも、バッドエンド?~

 デルタは、妹に、

「私は、王を暗殺する。ルミナスは、ここから離れて、落ち着くまで、休むといい。ここには、いない方がいいぞ」

 と、言った。


 ジェシカは、両手で顔を(おお)って、立ち尽くしまま、黙って、首を横に振る。


 デルタは、妹に、

「……そうか。とにかく、本当に、よくやってくれた」

 と、()(たた)えて、『玉座(ぎょくざ)()』へと、入って行こうとする。


 デルタは、言い忘れたことがあるかのように、振り返って、妹に、

「ルミナス、おまえは、私の(ほこ)れる妹だ……!! 決して、最低ではないからな……!!」

 と、(なぐさ)めの言葉をかけた。


 ジェシカは、両手で顔を覆って、立ち尽くしたまま、特に、反応は、しなかった。


 デルタは、

「では、終わらせてくる」

 と、言って、倒れ込んで、眠っているラフレシアを、そのまま、引きずって、『玉座の間』へと入る!!



 ※※※※※※※※※※



 【第19話 絶体絶命だぜ!! 強烈な一撃で、気絶!? ラフレシア、どうなった!? 最後の騎士カルロス VS 襲撃者!? 王の最期の提案!? 自分の価値と生きる目的!? ~ジェシカ編~】



 タツヤとカルロスは、ラフレシアを助けるため、急いで出入り口の扉へと、向かう!!


 その扉から、デルタが現れる!!


 デルタは、「クククッ」と、不気味な笑みを浮かべて、

「プレゼントだ」

 と、言って、ポイッとゴミを捨てるかのように、ラフレシアを、床へと(ほう)()げた!!


 ラフレシアは、床に倒れ込んだまま、動かない!!


 タツヤは、

「あぁっ!! そんなっ!! 殺したのかっ!?」

 と、ショックを受ける!!


 デルタは、

「さぁな。自分で確かめろ」

 と、言った。


 タツヤは、ラフレシアの生死を確認しようと、ラフレシアのそばへと行く!!


 カルロスは、

「行くなっ!! 馬鹿者!! そこは、奴の間合(まあ)いだ!!」

 と、叫ぶ!!


 タツヤは、

「えっ?」

 と、言って、周囲を確認しようとする。


 デルタの強烈な手刀打(しゅとうう)ちが、タツヤの首筋に入る!!


 タツヤは、倒れ込んで、気絶する!!


 デルタは、

「……これで、王手まで、あと三人か」

 と、言って、カルロス達を見る。


 カルロスは、

「この先は通さんぞ!! 命に代えても、王をお守りする!!」

 と、言って、背中の(さや)から剣を抜いて、手に取る!!


 デルタは、カルロスに、

「おまえが、この中のリーダーか?」

 と、聞く。

 

 カルロスは、両手で、剣を握り締めながら、

「そうだ!!」

 と、答える。


 デルタは、カルロスを見ながら、

「おまえ、弱そうだな」

 と、言った。


 カルロスは、特に気にする様子もなく、

「弱いかどうか、確かめてみろ……!!」

 と、言って、デルタの様子を観察する。


 王のそばで警護(けいご)している、二人の男騎士も、鞘から剣を抜いて、手に取る!!


 デルタは、王のそばで警護している、二人の男騎士を指差(ゆびさ)しながら、

「まずは、そこのザコ二人だ。こんな弱そうな奴らが、王の側近か?」

 と、挑発(ちょうはつ)する!!


 カルロスは、二人の男騎士の方へと振り向き、

「挑発に乗るな……!!」

 と、言った。


 二人の男騎士は、挑発に乗ってしまったかのように、

「なめやがって!!」

「行くぞ!!」

 と、言って、デルタの元へと、一直線に斬りかかる!!


 デルタは、最上級即死魔法『デス』を、連続で唱えた!!


 二人の男騎士は、倒れ込んで、死んだかのように、動かなくなった!!


 カルロスは、驚いて、

「最上級即死魔法か!? 馬鹿な!? 何故、使える? 『魔法制御道具』で、使えないはずだ……!!」

 と、確認する。


 デルタは、「クククッ」と不気味な笑みを浮かべて、

「その『魔法制御道具』は、破壊された。残念だったな」

 と、答えて、

「おまえも死ね」

 と、言って、最上級即死魔法『デス』を、唱えようとする!!


 カルロスは、

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 と、猪突猛進(ちょとつもうしん)で、一気にデルタとの間合いを詰める!!


 デルタは、

「何!?」

 と、驚いて、唱えるのを止める!!


 カルロスは、そのまま、上から、横から、下から、勢いよく剣を振り回す!!


 デルタは、余裕(よゆう)で、全部かわした!!


 ー全部かわすのか!?


 カルロスは、驚くと同時に、

「クソッ!!」

 と、イラ立つ!!


 ブン!! ブン!! ブン!! ブン!!


 斬撃(ざんげき)の当たらない音だけが、(むな)しく響く。


 カルロスは、呼吸を乱しながら、

「ハァ…ハァ…ハァ…当たらない!? 何故だ!?」

 と、不思議そうに言った。


 デルタは、「クククッ」と不気味な笑みを浮かべて、

「遅いからだ。『フランシス王国騎士団』の、ビッチどもの攻撃は、もっと速かったぞ」

 と、言った。


 カルロスは、呼吸を乱しながら、悔しそうに、

「ハァ…ハァ…ハァ…クソッ!! だが、諦めんぞ!! ハァ…ハァ…ハァ…一撃でも入れば、形勢逆転(けいせいぎゃくてん)だ!!」

 と、言って、ひたすら剣を振る!!


 だが、その剣は、デルタに、かすりもしなかった!!


 デルタは、

「遅いな。それと、やっぱり、おまえ、弱いな。『フランシス王国騎士団』の、ビッチどもの方が、強い」

 と、言って、左手で、カルロスの腕をつかんで、動きを止め、右手を、カルロスの目の前に出し、最上級破壊魔法『ブラインド・ネス』を唱えた!!


 カルロスは、

「ぐぁぁぁぁぁー!!」

 と、悲鳴を上げて、両目の視力を失った!!


 デルタは、右手を、カルロスの体の前に出し、衝撃魔法を唱える!!


 カルロスは、壁まで吹き飛んで、背中を強打する!!


 カルロスは、

「ぐあっ!!」

 と、苦痛の声を出し、両手で、剣を握ったまま、倒れた!!


 デルタは、感心した様子で、

「まだ、剣を手放(てばな)さないとは……。騎士としてのプライドか?」

 と、聞く。


 カルロスは、呼吸を乱しながら、ヨロヨロと立ち上がり、

「ハァ…ハァ…ハァ…そうだ」

 と、答えて、

「……どんな状態になろうと、私は、王をお守りする!! それが、私の使命だからだ!! 私が、この世に生を受けた理由だ!!」

 と、言って、両手で剣を握ったまま、デルタの元へと行こうとする!!


 しかし、両目の視力を失っており、ウロウロした様子で、見当違(けんとうちが)いの方角へと、進んでしまう!!


 カルロスは、呼吸を乱しながら、

「ハァ…ハァ…ハァ…どこだ? どこだー? そこか!?」

 と、言って、剣を振り回す!!


 デルタは、

(あわ)れな騎士だ。見てられん。終わりにしてやる」

 と、言って、最上級即死魔法『デス』を唱えようとする!!


 その時!!


 フランシス王が、玉座から立ち上がり、

「待て!!」

 と、口を開く!!


 デルタとカルロスは、フランシス王の方へ、視線を向ける。


 フランシス王は、デルタに、

「どうか、私の命と引き換えに、カルロスを殺さずに、見逃してくれぬか?」

 と、お願いする!!


 カルロスは、フランシス王の提案(ていあん)を、

「何を言っているのですか? 敵に、一撃も与えることができず、弱いと馬鹿にされ、両目の視力も奪われた、今の私に、何の価値もありません!! 自分の命と引き換えになど、そんなこと、言わないでください!!」

 と、否定する!!


 デルタは、「クククッ」と、不気味な笑みを浮かべて、

「……いいだろう。今、この場で、自害しろ」

 と、フランシス王に要求する!!


 フランシス王は、玉座の後ろの壁に飾ってある、剣を手に取る!!


 カルロスは、

「どうか、止めてください!! 絶対、駄目です!! 私は、ここで死んでも、(かま)いませんから!! いや、ここで、王を守る最後の騎士として、死なせてください!! 王が死んでしまったら、私は生きる目的を失います!! お願いですから、止めてください!!」

 と、悲痛な叫びを上げる!!


 フランシス王は、

「カルロス、今まで、私に忠誠(ちゅうせい)を示し、人生の全てを(ささ)げてくれて、ありがとう。これからは、もう、自由だ。好きに生きなさい。きっと、再び、生きる目的も、できるだろう」

 と、笑みを浮かべる。


 フランシス王は、意を決して、

「五十八年間、良き人生だった!! 神よ、感謝します!!」

 と、言って、鞘から剣を抜き、自分の首に突き刺した!!


 いつの間にか、深夜から、再び、早朝へと時間が経過しており、窓から、太陽の光が優しく差し込み始め、倒れ込んでいる、フランシス王を照らすのであった……!!



 ジェシカが、『玉座の間』へと、入って来る!!


 デルタは、妹に、

「ちょうど、終わったところだ」

 と、報告する。


 ジェシカは、黙ったまま、周囲を見る。


 床に倒れ込んで、気絶している、タツヤ。


 床に倒れ込んで、まるで、死んでいるかのように、眠っている、ラフレシア。


 床に倒れ込んで、苦しそうに、目を見開いて、死んでいる二人の男騎士。


 床に両手をついて、ひざまずいてる、カルロス。


 カルロスは、両目を閉じたまま、剣を手放して、戦意喪失(せんいそうしつ)しており、()(がら)のようになっている。


 そして、床に倒れ込んで、剣を首に突き刺したまま、多量の血だまりの上で、死んでいるフランシス王!!


 ジェシカは、フランシス王の前に行き、両膝をつき、両手を合わせて、神に祈るような姿勢をとったまま、

慈悲深(じひぶか)き神よ、どうか、天へと(みちび)いて、安らぎを与えてください」

 と、祈った。


 デルタは、カルロスの前に行き、

「哀れな騎士よ、おまえのこれからの人生を、神に祈っておいてやる」

 と、言って、右手を前に出して、

「今は、眠ってろ」

 と、言って、最上級眠り魔法『ストロングスリ―プ』を、唱える!!


 カルロスは、まったく抵抗をせず、望んでいたかのように、倒れ込んで、まるで、死んでしまったかのように、眠りについた!! 


 デルタは、妹に、

「これで、話せる。話を聞かれることは、ないから、安心して、(しゃべ)っていいぞ」

 と、言った。


 ジェシカは、フランシス王の前で、まだ、神に祈りを捧げている。


 デルタは、妹に、

「その辺にしておけ。そんなに、余裕はないぞ」

 と、言った。


 ジェシカは、神への祈りを終えて、立ち上がる。


 デルタは、妹に、

「目的は果たした。約束は守る」

 と、言った。


 ジェシカは、兄に、

「『レッドブラッド教団』を辞めて、仲間になってくれるのね?」

 と、確認する。


 デルタは、

「そうだ」

 と、答える。


 ジェシカは、兄に、

「ラフレシア王女と、タツヤは、この先、殺される心配は、ないんだよね?」

 と、再び、確認する。


 デルタは、

「そうだ」

 と、答える。


 ジェシカは、

「よかった……!!」

 と、安心して、

「……これで、後は、私が、死刑になって、終わりね」

 と、言った。


 デルタは、妹に、

「そんなこと、考えるな」

 と、言って、続けて、

「罰を受ける必要はない。このまま、私と共に、逃げればいい」

 と、言った。


 ジェシカは、兄に、

「駄目だよ……そんなこと、できない……!!」

 と、言って、感情的になり、

「私は、親しい人達の信頼を、裏切った……!! ラフレシア王女から、大切な家族を奪う、手助けをした……!!」

 と、言って、強い口調で、続けて、

「だから、罰を受けなきゃいけないの……!! それが、たとえ、死刑でも……!!」

 と、言った。


 デルタは、妹に、

「そこまで、責任を感じなくていい。逃げるのは、別に、悪いことではない。ルミナスの罪は、『魔法制御道具』の場所を、私に教えただけだ。誰かを、殺したわけでもない。神も、大目(おおめ)に見てくれるだろう」

 と、言って、続けて、

「それに、私が、仲間になっても、ルミナスが、死刑で、この世にいなければ、意味がないんだぞ。死刑になるのか、どうか、神にしか、わからないが、ルミナスが、この世にいてこそ、私が、仲間になる意味があり、ルミナスの、今までの苦労が、報われる」

 と、言って、続けて、

「だから、生きるために、私と共に逃げよう……!!」

 と、誘う。


 ジェシカは、兄に、

「ここで逃げたら、私は、きっと、一生、自分を許せないと思う。だから、逃げないで、罰を受けるわ……!!」

 と、言って、続けて、

「私が死刑になっても、お兄ちゃんは、仲間になったんだから、みんなを助けてね……!! 約束よ……!!」

 と、言って、苦笑(くしょう)する。


 デルタは、やれやれといった様子で、観念(かんねん)したように、妹に、

「成長して、綺麗(きれい)になったのはいいが、中身は、昔のように、聞き分けがいい子では、なくなってしまったな……。頑固になってしまった」

 と、言って、続けて、

「死刑になったら、全員、皆殺しにして、助けに行く」

 と、言った。


 ジェシカは、兄に、

「気持ちは、妹として、嬉しいけど、そんなこと、しなくていいから」

 と、言って、苦笑しながら、

「面会に来てくれれば、それで、充分(じゅうぶん)よ」

 と、言った。


 デルタは、妹に、

「……そうか。だが、私は、兄だからな。兄として、妹の死刑を、黙って、見過ごすわけには、いかないだろ? どんなことしても、妹を助ける」

 と、言って、続けて、

「ルミナスが、死刑にならないように、毎日、神に、祈りを捧げることにする。面会には、できるだけ多く、行くからな。寂しい思いは、させないぞ」

 と、言った。


 ジェシカは、兄に、

「妹として、嬉しいわ」

 と、言って、続けて、

「『レッドブラッド教団』を辞めたら、何処に住むつもり?」

 と、聞く。


 デルタは、妹に、

「まだ、決めてない。適当に、部屋を借りて、住む」

 と、答える。


 ジェシカは、兄に、

「なら、私が生きてたら、一緒に住みましょう」

 と、提案して、続けて、

「家族として、もう一度、一から始めましょう」

 と、誘う。


 デルタは、妹の誘いに、

「そうだな」

 と、賛成して、

「それには、ルミナス、おまえが、生きてることが、条件だ。たとえ、死刑になっても、脱獄(だつごく)して、必ず、生きろ。いいな?」

 と、言って、続けて、

「これを、つけておけ」

 と、言って、紫色のイヤリングを渡す!!


 ジェシカは、兄に、

「これは?」

 と、聞く。


 デルタは、

「魔術道具の一つ、テレパシーイヤリングだ」

 と、答えて、続けて、

「これを、つけてる者同士は、心の声が、届くようになっている。つけてみろ」

 と、言った。


 ジェシカは、右耳に、紫色のイヤリングをつける!!


 デルタも、同じく、右耳に、紫色のイヤリングをつける!!


 すると、[どうだ? 聞こえるか?]という声が、頭の中で聞こえた。


 ジェシカは、声を出さずに、心の中で、[ええ。聞こえるわ]と、返事する。


 デルタは、妹に、

「ーと、いうことだ。これで、離れていても、話ができる」

 と、声を出して、説明する。


 ジェシカは、

「すごい道具ね」

 と、感心する。


 デルタは、妹に、

「ただし、距離が限定されていて、離れすぎると、声が届かなくなる。離れすぎなければ、大丈夫だ。それと、使い続けると、消滅(しょうめつ)するから、常に、使い続けることは、できない」

 と、説明して、

「今後、会って、話をするのが、難しい場合は、これで、話がしたい、いいか?」

と、確認する。


 ジェシカは、

「いいわ」

 と、(うなず)く。


 デルタは、

「そろそろ、去った方がいいな。これ以上、ここにいるのは、まずい」

 と、言って、最上級移動魔法『スペシャルムーブ』を、唱えようとする。


 ジェシカは、去ろうとする兄を見ながら、不安そうに、

「お兄ちゃん、私達、また、会えるよね? これで、最期ってことは、ないよね?」

 と、聞く。


 デルタは、不安そうに見送る妹に、

「当たり前だろ。家族として、一緒に住むんだろ?」

 と、言った。


 ジェシカは、去ろうとする兄を見ながら、不安そうに、

「王様を暗殺したのよ? 神が、許してくれるとは、思えない……!! きっと、これが、最期になるわ……!!」

 と、言った。


 デルタは、不安そうに見送る妹に、

「そうならないことを、神に祈ろう。もし、それでも、神が許してくれないのなら、その時はー」

 と、言いかけて、最上級移動魔法『スペシャルムーブ』を、唱える!!


 ジェシカは、呪文を唱えた兄を見ながら、不安そうに。

「ちょっと、その時は、何よ?」

 と、聞く。


 デルタは、最後に、妹に、

「その時は、『時間魔術の指輪』を手に入れて、過去を変えるしかない……!! 私とルミナスが、家族として、一緒に()らせるように……!! どんなことをしても……!!」

 と、いう言葉を残して、この場から消えた。



 カロリーネとクリスが、()けつける!!


 どちらも、大急ぎで来たのか、呼吸が乱れてる。

 

 カロリーネは、呼吸を整えながら、

「ハァ…ハァ…ジェシカ!! 大丈夫?」

 と、聞く。


 クリスも、呼吸を整えながら、

「ハァ…ハァ…まさか、パトロールに行ってる間に、ハァ…ハァ…城が、襲撃(しゅうげき)されるなんて……!!」

 と、言った。


 ー『時間魔術の指輪』を使って、過去を変える!? もし、それが、可能だとしたら……。

 

 ジェシカは、兄が、最後に言った言葉について、考えを(めぐ)らしている。


 カロリーネは、呼吸を整えながら、心配そうに、

「ハァ…ハァ…ジェシカ、どうしたの? 大丈夫?」

 と、聞く。


 ジェシカは、ハッとして、

「……私は、大丈夫。でもー」

 と、言って、視線を、倒れ込んでいる、タツヤ、ラフレシア、二人の男騎士、カルロス、フランシス王に向ける。


 カロリーネとクリスは、驚く!!


 カロリーネは、驚きながら、

「嘘!? そんな……!!」

 と、言って、言葉を失う。


 クリスも、驚きながら、

「負けたのね……死んでるの?」

 と、言って、確認するように、見ながら、

「あぁ、王様が……!!」

 と、言って、口を閉ざす。


 ジェシカは、心配そうに、

「レミ―は? 生きてるの?」

 と、聞く。


 カロリーネは、

「生きてるわ。デルタとの戦闘で、両腕にヒビが入って、地下の牢屋(ろうや)から、洞窟(どうくつ)まで、逃げ込んだみたい。今、マリアとエリザが、『レッドブラッド教団』の追っ手と、戦ってる」

 と、答えた。


 ジェシカは、心配そうに、

「追っ手と戦ってる? 大丈夫なの?」

 と、聞く。


 クリスが、

「大丈夫よ。相手が、デルタとかなら、別だけどね」

 と、答える。


 カロリーネが、ジェシカに、

「王様以外は、生きてるの? 死んでるの?」

 と、確認する。


 ジェシカは、考える素振(そぶ)りをしながら、

「たぶん、二人の男騎士以外、生きてる」

 と、言って、タツヤの元へ。


 ー二人の男騎士は、お兄ちゃんの即死魔法をくらって、死んでる感じがする。ラフレシア王女とカルロスは、お兄ちゃんが、眠り魔法を唱えているのを、聞いたから、眠ってるだけね。タツヤは、どうなんだろう?


 ジェシカは、タツヤの状態を確認する。


 タツヤの首筋には、デルタの強烈な手刀打(しゅとうう)ちの(あと)が、できていた!!


 ー死んでないけど、打ちどころが、首筋は、まずいわね。お兄ちゃん、ラフレシア王女みたいに、魔法で、眠らせる余裕は、なかったの? 側近として、育てるつもりが、裏切ったから、怒ったのかな? 


 カロリーネが、ジェシカの様子を見ながら、

「タツヤって、やばい状態なの? それなら、一刻(いっこく)も早く、手当てした方が、いいわね」

 と、言って、クリスに、

「姉さん、今、救命道具が置いてあって、空いてる部屋とかって、ある?」

 と、聞く。


 クリスが、

「ないと思うし、探す時間が、もったいないわ。マリアレーヌの部屋なら、救命道具もあるから、使わせてもらいましょ」

 と、答える。


 カロリーネとクリスは、急いで、タツヤを寝かせたまま、運んでいく!!


 ジェシカは、

「頼んだわ。後で、私も、様子を見に行くから」

 と、言って、二人を見送る。


 カロリーネとクリスは、『玉座の間』を出て行った。



 ーさてと、やっぱり、問題は、ラフレシア王女ね。


 ジェシカは、ラフレシアの元へ。


 ラフレシアは、まだ、倒れ込んだまま、眠っている。


 ジェシカは、フランシス王の死体を見ながら、考えを巡らせる。


 ーここで、起こすのは、良くないわ。ショックが大きすぎる。何処か、別の場所で、起こした方が、いいわね。


 ジェシカは、ラフレシアを背負って、歩く!!


 そのまま、『玉座の間』から出て、廊下を進み、下の階へと降りる。


 背負って歩いているからか、汗が、止まらず流れ出る。


 ジェシカは、廊下を進んで、小さな『教会』へと入った!!


 街中の『教会』まで、出向く時間がない時は、ここで、祈りを捧げている。


 中央に祭壇(さいだん)があり、その後ろに、十字架と、聖母(せいぼ)マリアの像が、(かざ)られている。


 長椅子が、祭壇を(はさ)むように、縦に並んでいる。

 

 横の窓からは、太陽の光が、優しく、差し込んでいた。


 人は、誰もいない。


 ジェシカは、ラフレシアを、長椅子に寝かせる!!


 ジェシカは、

「失礼します」

 と、言って、両手を前に出して、救命魔法の一つ、眠り魔法を受けた人間の、目を覚ますことができる、『ウェイクアップ』を唱える!!


 ジェシカは、魔法は苦手で、あまり使えないが、『フランシス王国騎士団』のメンバーとして、日頃から、いろんな訓練を受けており、もしもの時のために、救命措置として、軽い救命魔法を、身につけていた。


 ラフレシアは、深い眠りから、目が覚める!!


 ジェシカは、

「大丈夫ですか?」

 と、聞いて、続けて、

「ここは、城の中の教会ですよ」

 と、説明する。


 ラフレシアは、ハッとして、立ち上がり、

「父は? 無事なの? 生きてる?」

 と、聞く。


 ジェシカは、

「いいえ」

 と、首を横に振り、

「お亡くなりに、なりました」

 と、告げる。


 ラフレシアは、

「そんな……そんな……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 と、泣き崩れる!!


 ジェシカは、なんて言葉をかけていいか、わからず、下を向いて、顔を覆ったまま、黙り込む……!!


 ラフレシアは、泣き崩れたまま、

「どうして……なんで……こんなことに……!! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 と、号泣する!!


 ジェシカは、ラフレシアを、まともに見ることさえできず、下を向いて、顔を覆ったまま、黙り込み、ラフレシアが泣き止むのを、ただ、待つことしか、できなかった……!!


 このまま、しばらく、時間が経過する!!


 ラフレシアが、徐々(じょじょ)に、落ち着きを取り戻す。


 ジェシカは、まだ、下を向いて、顔を覆ったまま、黙り込んでいる……!!


 ラフレシアは、

「……少し、落ち着いたわ。……王女として、見苦しいとこ、見せてしまったわね」

 と、言って、続けて、

「顔を上げて。ジェシカさん」

 と、言った。


 ジェシカは、顔を上げようとは、しなかった。


 ラフレシアは、

「ジェシカさん? いいのよ、顔を上げて」

 と、言った。


 ジェシカは、下を向いて、顔を覆ったまま、

「……ごめんなさい!! ごめんなさい!! ごめんなさい……!! 私が……私が、余計なことをしたせいで、ラフレシア王女から、家族を……父親を……奪ってしまった……!!」

 と、言った。


 ラフレシアは、

「……説明して、くれるわよね?」

 と、聞く。


 ジェシカは、顔を上げて、黙ったまま、頷く。


 ジェシカは、マルコの家から出てから、今に(いた)るまでのことを、全部、説明した!!


 ラフレシアは、驚愕(きょうがく)して、考える素振りを見せながら、黙り込む……!!


 ジェシカも、同じように、黙り込み、ラフレシアが、口を開くのを、じっと待つ……!!


 このまま、しばらく、時間が経過する!! 


 ラフレシアは、

「さて、どうしたものか……困ったわね」

 と、口を開く。


 ジェシカは、

「私は、死刑ですか?」

 と、聞く。

 

 ラフレシアは、

「他の国なら、そうでしょうね」

 と、言って、続けて、

「でも、ここは、『フランシス王国』。ジェシカさんは、今まで、『フランシス王国騎士団』として、人生を、捧げてきたことを知ってる。だから、その功績(こうせき)(たた)えて、私が、死刑なんかに、させないわよ」

 と、言った。


 ジェシカは、

「いいんですか? 私が、『魔法制御道具』の場所を、教えたんですよ? 他にも、マリアを城から離したりと、兄が暗殺しやすいように、協力してたんですよ?」

 と、言って、続けて、

「死刑にならないのは、嬉しいです。でも、死刑以外で、ラフレシア王女の、気が晴れるとは、思えません。ラフレシア王女に、一生、恨まれながら、生きるのは、嫌です」

 と、言った。


 ラフレシアは、

「……死刑になったら、家族として、お兄さんと、一緒に住めなくなるわよ? いいの?」

 と、聞く。


 ジェシカは、

「それで、ラフレシア王女の、気が晴れるのであれば、仕方ありません。自業自得(じごうじとく)です。受け入れます」

 と、答える。


 ラフレシアは、

「小さい頃に、両親も兄弟も、『レッドブラッド教団』に殺されて、家族がいない中、一人で生きてきて、やっとできた、親友と呼べる、クリスティーナも、殺されて、最後は、死刑となって、生き別れた兄と、家族として、一緒に住むことを、夢見ながら、ギロチン(首を切断する死刑道具)で、人生終了よ。いいの? それで?」

 と、確認する。


 ジェシカは、寂しく、悲しそうな表情をしながら、

「実に、私らしい終わりかたです」

 と、言って、続けて、

「でも、それで、ラフレシア王女の、気が晴れるのであれば、神が、地獄ではなく、天国へ送ることを、考えてくれるかもしれません」

 と、言った。


 ラフレシアは、

「……そう。そこまで、覚悟しているのなら、しょうがないわね。じゃあ、刑を伝えるわ……!!」

 と、言って、ジェシカをじっと見る。


 ジェシカは、覚悟を決めたかのように、目をつぶる!!


 ラフレシアは、強い口調で、

「ジェシカ、あなたに、刑を(めい)じる!! 一週間の禁固刑(きんこけい)よ!!」

 と、告げた!!


 ジェシカは、目を開けて、

「えっ!? 一週間の禁固刑? それだけ?」

 と、驚く!!


 ラフレシアは、強い口調で、

「あなたに、拒否権はありません!! 今までの功績を称えて、一週間の禁固刑とします!! 禁固で反省した後、気持ち(あら)たに、『フランシス王国騎士団』として、再び、活躍してもらいます!!」

 と、告げた!!


 ジェシカは、 

「どうして……?」

 と、(つぶや)く。


 ラフレシアは、強い口調で、

「返事は、イエスのみです!! わかりましたか?」

 と、言った。


 ジェシカは、

「はい。わかりました」

 と、返事する。


 ラフレシアは、笑みを浮かべて、聖母マリア像を、眺めながら、

「私ね、考えみたんだけど……もし、私が、ジェシカさんと、同じ立場だったら、どうするかなって。たぶん、同じことを、したんじゃないかなって、思ったの」

 と、言って、続けて、

「それでね、プラスに考えることにしたの。今、こうして、殺されずに、生きていられるのは、ジェシカさんのおかげだし、この先も、私とタツヤは、殺されずに、生きていられるのよね? それと、『レッドブラッド教団』の幹部である、お兄さんが、辞めて、私達の、仲間になってくれるんでしょ? これって、すごいことよ」

 と、言って、一息ついて、

「これで、父と母の夢、いや、国民の夢である、『レッドブラッド教団』の壊滅(かいめつ)が、実現できるかもしれない。残酷な言い方だけど、父は、そのための、犠牲(ぎせい)になったんだって」

 と、言った。


 ジェシカは、どう反応していいか、わからず、

「ラフレシア王女……」

 と、言うだけで、次の言葉が、出てこなかった。


 ラフレシアは、

「まぁ、私が、ジェシカさんを、気に入ってるというのも、あるかな」

 と、言って、苦笑しながら、続けて、

「もう、行っていいわよ。私は、大丈夫だから。行ってみたら、どう? ジェシカさんのことを、とても、大事に、(おも)ってくれてる人のところへ。お兄さんだけでは、ないはずよ。わかってるでしょう?」

 と、言った。


 ジェシカは、

「えっ!?」

 と、言って、戸惑(とまど)いながら、

「いいんですか? もう、行っても?」

 と、確認する。


 ラフレシアは、

「早く行った方が、いいわよ。私の気が、変わらないうちに」

 と、言って、続けて、

「やっぱり、気が変わって、死刑にするかもだから」

 と、言って、笑みを浮かべる。


 ジェシカは、

「ありがとうございます……!!」

 と、言って、頭を下げて、教会から、出て行く。


 ラフレシアは、聖母マリア像を眺めながら、

「これでいいよね? お父様(とうさま)

 と、言って、目に涙を浮かべる。


 ラフレシアは、そのまま、顔を覆って、今度は、静かに泣いた……!!



 ジェシカは、マリアレーヌの部屋を、訪れる!!


 タツヤが、ベットで、寝ており、カロリーネとクリスは、いなかった。


 ーカルロスの手当てに、行ったのかしら?


 タツヤの首筋に、救命道具の液体が、大雑把(おおざっぱ)()ってある。


 ーどうやら、急いで、手当てしたみたいね。


 ジェシカは、救命道具を使って、タツヤの首筋を、ゆっくりと、手当てしていく。


 ジェシカは、ふと、思い出す。


 自分が、『玉座の間』の扉の前で、警護している時、タツヤが、ラフレシアと共に、会いにやって来た時のことを。



 ※※※※※※※※※※



 ラフレシアは、ジェシカに、

「……彼はね、本当に、あなたのことを想って、会いたがってたの。だから、連れて来たわ」

 と、説明した。


 ジェシカは、感動した様子で、

「……ありがとう……!! タツヤ……!!」

 と、言った。


 タツヤは、再び、目に涙を浮かべながら、

「……パトロールから、帰って来なくて、本当に、心配したんだぞ……!!」

 と、言った。



 ※※※※※※※※※※



 ジェシカは、寝ているタツヤに、

「マルコの家の寝床(ねどこ)から、パトロールに出て、ここまで、ずいぶんと、待たせちゃったけど……今、帰ってきたよ」

 と、言って、続けて、

「マルコの家の寝床じゃなくて、マリアの部屋の寝床だけど、別に、いいよね?」

 と、言って、続けて、

「どちらにしろ、また、こうして、寝床に戻って、再会できたんだから……!!」

 と、言って、笑みを浮かべるのであった……!!



 【ジェシカ編 閉幕】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ