追憶の第38話 【ジェシカ編ラストエピソード】 ~グッドエンド? それとも、バッドエンド?~
デルタは、妹に、
「私は、王を暗殺する。ルミナスは、ここから離れて、落ち着くまで、休むといい。ここには、いない方がいいぞ」
と、言った。
ジェシカは、両手で顔を覆って、立ち尽くしまま、黙って、首を横に振る。
デルタは、妹に、
「……そうか。とにかく、本当に、よくやってくれた」
と、褒め称えて、『玉座の間』へと、入って行こうとする。
デルタは、言い忘れたことがあるかのように、振り返って、妹に、
「ルミナス、おまえは、私の誇れる妹だ……!! 決して、最低ではないからな……!!」
と、慰めの言葉をかけた。
ジェシカは、両手で顔を覆って、立ち尽くしたまま、特に、反応は、しなかった。
デルタは、
「では、終わらせてくる」
と、言って、倒れ込んで、眠っているラフレシアを、そのまま、引きずって、『玉座の間』へと入る!!
※※※※※※※※※※
【第19話 絶体絶命だぜ!! 強烈な一撃で、気絶!? ラフレシア、どうなった!? 最後の騎士カルロス VS 襲撃者!? 王の最期の提案!? 自分の価値と生きる目的!? ~ジェシカ編~】
タツヤとカルロスは、ラフレシアを助けるため、急いで出入り口の扉へと、向かう!!
その扉から、デルタが現れる!!
デルタは、「クククッ」と、不気味な笑みを浮かべて、
「プレゼントだ」
と、言って、ポイッとゴミを捨てるかのように、ラフレシアを、床へと放り投げた!!
ラフレシアは、床に倒れ込んだまま、動かない!!
タツヤは、
「あぁっ!! そんなっ!! 殺したのかっ!?」
と、ショックを受ける!!
デルタは、
「さぁな。自分で確かめろ」
と、言った。
タツヤは、ラフレシアの生死を確認しようと、ラフレシアのそばへと行く!!
カルロスは、
「行くなっ!! 馬鹿者!! そこは、奴の間合いだ!!」
と、叫ぶ!!
タツヤは、
「えっ?」
と、言って、周囲を確認しようとする。
デルタの強烈な手刀打ちが、タツヤの首筋に入る!!
タツヤは、倒れ込んで、気絶する!!
デルタは、
「……これで、王手まで、あと三人か」
と、言って、カルロス達を見る。
カルロスは、
「この先は通さんぞ!! 命に代えても、王をお守りする!!」
と、言って、背中の鞘から剣を抜いて、手に取る!!
デルタは、カルロスに、
「おまえが、この中のリーダーか?」
と、聞く。
カルロスは、両手で、剣を握り締めながら、
「そうだ!!」
と、答える。
デルタは、カルロスを見ながら、
「おまえ、弱そうだな」
と、言った。
カルロスは、特に気にする様子もなく、
「弱いかどうか、確かめてみろ……!!」
と、言って、デルタの様子を観察する。
王のそばで警護している、二人の男騎士も、鞘から剣を抜いて、手に取る!!
デルタは、王のそばで警護している、二人の男騎士を指差しながら、
「まずは、そこのザコ二人だ。こんな弱そうな奴らが、王の側近か?」
と、挑発する!!
カルロスは、二人の男騎士の方へと振り向き、
「挑発に乗るな……!!」
と、言った。
二人の男騎士は、挑発に乗ってしまったかのように、
「なめやがって!!」
「行くぞ!!」
と、言って、デルタの元へと、一直線に斬りかかる!!
デルタは、最上級即死魔法『デス』を、連続で唱えた!!
二人の男騎士は、倒れ込んで、死んだかのように、動かなくなった!!
カルロスは、驚いて、
「最上級即死魔法か!? 馬鹿な!? 何故、使える? 『魔法制御道具』で、使えないはずだ……!!」
と、確認する。
デルタは、「クククッ」と不気味な笑みを浮かべて、
「その『魔法制御道具』は、破壊された。残念だったな」
と、答えて、
「おまえも死ね」
と、言って、最上級即死魔法『デス』を、唱えようとする!!
カルロスは、
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
と、猪突猛進で、一気にデルタとの間合いを詰める!!
デルタは、
「何!?」
と、驚いて、唱えるのを止める!!
カルロスは、そのまま、上から、横から、下から、勢いよく剣を振り回す!!
デルタは、余裕で、全部かわした!!
ー全部かわすのか!?
カルロスは、驚くと同時に、
「クソッ!!」
と、イラ立つ!!
ブン!! ブン!! ブン!! ブン!!
斬撃の当たらない音だけが、空しく響く。
カルロスは、呼吸を乱しながら、
「ハァ…ハァ…ハァ…当たらない!? 何故だ!?」
と、不思議そうに言った。
デルタは、「クククッ」と不気味な笑みを浮かべて、
「遅いからだ。『フランシス王国騎士団』の、ビッチどもの攻撃は、もっと速かったぞ」
と、言った。
カルロスは、呼吸を乱しながら、悔しそうに、
「ハァ…ハァ…ハァ…クソッ!! だが、諦めんぞ!! ハァ…ハァ…ハァ…一撃でも入れば、形勢逆転だ!!」
と、言って、ひたすら剣を振る!!
だが、その剣は、デルタに、かすりもしなかった!!
デルタは、
「遅いな。それと、やっぱり、おまえ、弱いな。『フランシス王国騎士団』の、ビッチどもの方が、強い」
と、言って、左手で、カルロスの腕をつかんで、動きを止め、右手を、カルロスの目の前に出し、最上級破壊魔法『ブラインド・ネス』を唱えた!!
カルロスは、
「ぐぁぁぁぁぁー!!」
と、悲鳴を上げて、両目の視力を失った!!
デルタは、右手を、カルロスの体の前に出し、衝撃魔法を唱える!!
カルロスは、壁まで吹き飛んで、背中を強打する!!
カルロスは、
「ぐあっ!!」
と、苦痛の声を出し、両手で、剣を握ったまま、倒れた!!
デルタは、感心した様子で、
「まだ、剣を手放さないとは……。騎士としてのプライドか?」
と、聞く。
カルロスは、呼吸を乱しながら、ヨロヨロと立ち上がり、
「ハァ…ハァ…ハァ…そうだ」
と、答えて、
「……どんな状態になろうと、私は、王をお守りする!! それが、私の使命だからだ!! 私が、この世に生を受けた理由だ!!」
と、言って、両手で剣を握ったまま、デルタの元へと行こうとする!!
しかし、両目の視力を失っており、ウロウロした様子で、見当違いの方角へと、進んでしまう!!
カルロスは、呼吸を乱しながら、
「ハァ…ハァ…ハァ…どこだ? どこだー? そこか!?」
と、言って、剣を振り回す!!
デルタは、
「哀れな騎士だ。見てられん。終わりにしてやる」
と、言って、最上級即死魔法『デス』を唱えようとする!!
その時!!
フランシス王が、玉座から立ち上がり、
「待て!!」
と、口を開く!!
デルタとカルロスは、フランシス王の方へ、視線を向ける。
フランシス王は、デルタに、
「どうか、私の命と引き換えに、カルロスを殺さずに、見逃してくれぬか?」
と、お願いする!!
カルロスは、フランシス王の提案を、
「何を言っているのですか? 敵に、一撃も与えることができず、弱いと馬鹿にされ、両目の視力も奪われた、今の私に、何の価値もありません!! 自分の命と引き換えになど、そんなこと、言わないでください!!」
と、否定する!!
デルタは、「クククッ」と、不気味な笑みを浮かべて、
「……いいだろう。今、この場で、自害しろ」
と、フランシス王に要求する!!
フランシス王は、玉座の後ろの壁に飾ってある、剣を手に取る!!
カルロスは、
「どうか、止めてください!! 絶対、駄目です!! 私は、ここで死んでも、構いませんから!! いや、ここで、王を守る最後の騎士として、死なせてください!! 王が死んでしまったら、私は生きる目的を失います!! お願いですから、止めてください!!」
と、悲痛な叫びを上げる!!
フランシス王は、
「カルロス、今まで、私に忠誠を示し、人生の全てを捧げてくれて、ありがとう。これからは、もう、自由だ。好きに生きなさい。きっと、再び、生きる目的も、できるだろう」
と、笑みを浮かべる。
フランシス王は、意を決して、
「五十八年間、良き人生だった!! 神よ、感謝します!!」
と、言って、鞘から剣を抜き、自分の首に突き刺した!!
いつの間にか、深夜から、再び、早朝へと時間が経過しており、窓から、太陽の光が優しく差し込み始め、倒れ込んでいる、フランシス王を照らすのであった……!!
ジェシカが、『玉座の間』へと、入って来る!!
デルタは、妹に、
「ちょうど、終わったところだ」
と、報告する。
ジェシカは、黙ったまま、周囲を見る。
床に倒れ込んで、気絶している、タツヤ。
床に倒れ込んで、まるで、死んでいるかのように、眠っている、ラフレシア。
床に倒れ込んで、苦しそうに、目を見開いて、死んでいる二人の男騎士。
床に両手をついて、ひざまずいてる、カルロス。
カルロスは、両目を閉じたまま、剣を手放して、戦意喪失しており、抜け殻のようになっている。
そして、床に倒れ込んで、剣を首に突き刺したまま、多量の血だまりの上で、死んでいるフランシス王!!
ジェシカは、フランシス王の前に行き、両膝をつき、両手を合わせて、神に祈るような姿勢をとったまま、
「慈悲深き神よ、どうか、天へと導いて、安らぎを与えてください」
と、祈った。
デルタは、カルロスの前に行き、
「哀れな騎士よ、おまえのこれからの人生を、神に祈っておいてやる」
と、言って、右手を前に出して、
「今は、眠ってろ」
と、言って、最上級眠り魔法『ストロングスリ―プ』を、唱える!!
カルロスは、まったく抵抗をせず、望んでいたかのように、倒れ込んで、まるで、死んでしまったかのように、眠りについた!!
デルタは、妹に、
「これで、話せる。話を聞かれることは、ないから、安心して、喋っていいぞ」
と、言った。
ジェシカは、フランシス王の前で、まだ、神に祈りを捧げている。
デルタは、妹に、
「その辺にしておけ。そんなに、余裕はないぞ」
と、言った。
ジェシカは、神への祈りを終えて、立ち上がる。
デルタは、妹に、
「目的は果たした。約束は守る」
と、言った。
ジェシカは、兄に、
「『レッドブラッド教団』を辞めて、仲間になってくれるのね?」
と、確認する。
デルタは、
「そうだ」
と、答える。
ジェシカは、兄に、
「ラフレシア王女と、タツヤは、この先、殺される心配は、ないんだよね?」
と、再び、確認する。
デルタは、
「そうだ」
と、答える。
ジェシカは、
「よかった……!!」
と、安心して、
「……これで、後は、私が、死刑になって、終わりね」
と、言った。
デルタは、妹に、
「そんなこと、考えるな」
と、言って、続けて、
「罰を受ける必要はない。このまま、私と共に、逃げればいい」
と、言った。
ジェシカは、兄に、
「駄目だよ……そんなこと、できない……!!」
と、言って、感情的になり、
「私は、親しい人達の信頼を、裏切った……!! ラフレシア王女から、大切な家族を奪う、手助けをした……!!」
と、言って、強い口調で、続けて、
「だから、罰を受けなきゃいけないの……!! それが、たとえ、死刑でも……!!」
と、言った。
デルタは、妹に、
「そこまで、責任を感じなくていい。逃げるのは、別に、悪いことではない。ルミナスの罪は、『魔法制御道具』の場所を、私に教えただけだ。誰かを、殺したわけでもない。神も、大目に見てくれるだろう」
と、言って、続けて、
「それに、私が、仲間になっても、ルミナスが、死刑で、この世にいなければ、意味がないんだぞ。死刑になるのか、どうか、神にしか、わからないが、ルミナスが、この世にいてこそ、私が、仲間になる意味があり、ルミナスの、今までの苦労が、報われる」
と、言って、続けて、
「だから、生きるために、私と共に逃げよう……!!」
と、誘う。
ジェシカは、兄に、
「ここで逃げたら、私は、きっと、一生、自分を許せないと思う。だから、逃げないで、罰を受けるわ……!!」
と、言って、続けて、
「私が死刑になっても、お兄ちゃんは、仲間になったんだから、みんなを助けてね……!! 約束よ……!!」
と、言って、苦笑する。
デルタは、やれやれといった様子で、観念したように、妹に、
「成長して、綺麗になったのはいいが、中身は、昔のように、聞き分けがいい子では、なくなってしまったな……。頑固になってしまった」
と、言って、続けて、
「死刑になったら、全員、皆殺しにして、助けに行く」
と、言った。
ジェシカは、兄に、
「気持ちは、妹として、嬉しいけど、そんなこと、しなくていいから」
と、言って、苦笑しながら、
「面会に来てくれれば、それで、充分よ」
と、言った。
デルタは、妹に、
「……そうか。だが、私は、兄だからな。兄として、妹の死刑を、黙って、見過ごすわけには、いかないだろ? どんなことしても、妹を助ける」
と、言って、続けて、
「ルミナスが、死刑にならないように、毎日、神に、祈りを捧げることにする。面会には、できるだけ多く、行くからな。寂しい思いは、させないぞ」
と、言った。
ジェシカは、兄に、
「妹として、嬉しいわ」
と、言って、続けて、
「『レッドブラッド教団』を辞めたら、何処に住むつもり?」
と、聞く。
デルタは、妹に、
「まだ、決めてない。適当に、部屋を借りて、住む」
と、答える。
ジェシカは、兄に、
「なら、私が生きてたら、一緒に住みましょう」
と、提案して、続けて、
「家族として、もう一度、一から始めましょう」
と、誘う。
デルタは、妹の誘いに、
「そうだな」
と、賛成して、
「それには、ルミナス、おまえが、生きてることが、条件だ。たとえ、死刑になっても、脱獄して、必ず、生きろ。いいな?」
と、言って、続けて、
「これを、つけておけ」
と、言って、紫色のイヤリングを渡す!!
ジェシカは、兄に、
「これは?」
と、聞く。
デルタは、
「魔術道具の一つ、テレパシーイヤリングだ」
と、答えて、続けて、
「これを、つけてる者同士は、心の声が、届くようになっている。つけてみろ」
と、言った。
ジェシカは、右耳に、紫色のイヤリングをつける!!
デルタも、同じく、右耳に、紫色のイヤリングをつける!!
すると、[どうだ? 聞こえるか?]という声が、頭の中で聞こえた。
ジェシカは、声を出さずに、心の中で、[ええ。聞こえるわ]と、返事する。
デルタは、妹に、
「ーと、いうことだ。これで、離れていても、話ができる」
と、声を出して、説明する。
ジェシカは、
「すごい道具ね」
と、感心する。
デルタは、妹に、
「ただし、距離が限定されていて、離れすぎると、声が届かなくなる。離れすぎなければ、大丈夫だ。それと、使い続けると、消滅するから、常に、使い続けることは、できない」
と、説明して、
「今後、会って、話をするのが、難しい場合は、これで、話がしたい、いいか?」
と、確認する。
ジェシカは、
「いいわ」
と、頷く。
デルタは、
「そろそろ、去った方がいいな。これ以上、ここにいるのは、まずい」
と、言って、最上級移動魔法『スペシャルムーブ』を、唱えようとする。
ジェシカは、去ろうとする兄を見ながら、不安そうに、
「お兄ちゃん、私達、また、会えるよね? これで、最期ってことは、ないよね?」
と、聞く。
デルタは、不安そうに見送る妹に、
「当たり前だろ。家族として、一緒に住むんだろ?」
と、言った。
ジェシカは、去ろうとする兄を見ながら、不安そうに、
「王様を暗殺したのよ? 神が、許してくれるとは、思えない……!! きっと、これが、最期になるわ……!!」
と、言った。
デルタは、不安そうに見送る妹に、
「そうならないことを、神に祈ろう。もし、それでも、神が許してくれないのなら、その時はー」
と、言いかけて、最上級移動魔法『スペシャルムーブ』を、唱える!!
ジェシカは、呪文を唱えた兄を見ながら、不安そうに。
「ちょっと、その時は、何よ?」
と、聞く。
デルタは、最後に、妹に、
「その時は、『時間魔術の指輪』を手に入れて、過去を変えるしかない……!! 私とルミナスが、家族として、一緒に暮らせるように……!! どんなことをしても……!!」
と、いう言葉を残して、この場から消えた。
カロリーネとクリスが、駆けつける!!
どちらも、大急ぎで来たのか、呼吸が乱れてる。
カロリーネは、呼吸を整えながら、
「ハァ…ハァ…ジェシカ!! 大丈夫?」
と、聞く。
クリスも、呼吸を整えながら、
「ハァ…ハァ…まさか、パトロールに行ってる間に、ハァ…ハァ…城が、襲撃されるなんて……!!」
と、言った。
ー『時間魔術の指輪』を使って、過去を変える!? もし、それが、可能だとしたら……。
ジェシカは、兄が、最後に言った言葉について、考えを巡らしている。
カロリーネは、呼吸を整えながら、心配そうに、
「ハァ…ハァ…ジェシカ、どうしたの? 大丈夫?」
と、聞く。
ジェシカは、ハッとして、
「……私は、大丈夫。でもー」
と、言って、視線を、倒れ込んでいる、タツヤ、ラフレシア、二人の男騎士、カルロス、フランシス王に向ける。
カロリーネとクリスは、驚く!!
カロリーネは、驚きながら、
「嘘!? そんな……!!」
と、言って、言葉を失う。
クリスも、驚きながら、
「負けたのね……死んでるの?」
と、言って、確認するように、見ながら、
「あぁ、王様が……!!」
と、言って、口を閉ざす。
ジェシカは、心配そうに、
「レミ―は? 生きてるの?」
と、聞く。
カロリーネは、
「生きてるわ。デルタとの戦闘で、両腕にヒビが入って、地下の牢屋から、洞窟まで、逃げ込んだみたい。今、マリアとエリザが、『レッドブラッド教団』の追っ手と、戦ってる」
と、答えた。
ジェシカは、心配そうに、
「追っ手と戦ってる? 大丈夫なの?」
と、聞く。
クリスが、
「大丈夫よ。相手が、デルタとかなら、別だけどね」
と、答える。
カロリーネが、ジェシカに、
「王様以外は、生きてるの? 死んでるの?」
と、確認する。
ジェシカは、考える素振りをしながら、
「たぶん、二人の男騎士以外、生きてる」
と、言って、タツヤの元へ。
ー二人の男騎士は、お兄ちゃんの即死魔法をくらって、死んでる感じがする。ラフレシア王女とカルロスは、お兄ちゃんが、眠り魔法を唱えているのを、聞いたから、眠ってるだけね。タツヤは、どうなんだろう?
ジェシカは、タツヤの状態を確認する。
タツヤの首筋には、デルタの強烈な手刀打ちの痕が、できていた!!
ー死んでないけど、打ちどころが、首筋は、まずいわね。お兄ちゃん、ラフレシア王女みたいに、魔法で、眠らせる余裕は、なかったの? 側近として、育てるつもりが、裏切ったから、怒ったのかな?
カロリーネが、ジェシカの様子を見ながら、
「タツヤって、やばい状態なの? それなら、一刻も早く、手当てした方が、いいわね」
と、言って、クリスに、
「姉さん、今、救命道具が置いてあって、空いてる部屋とかって、ある?」
と、聞く。
クリスが、
「ないと思うし、探す時間が、もったいないわ。マリアレーヌの部屋なら、救命道具もあるから、使わせてもらいましょ」
と、答える。
カロリーネとクリスは、急いで、タツヤを寝かせたまま、運んでいく!!
ジェシカは、
「頼んだわ。後で、私も、様子を見に行くから」
と、言って、二人を見送る。
カロリーネとクリスは、『玉座の間』を出て行った。
ーさてと、やっぱり、問題は、ラフレシア王女ね。
ジェシカは、ラフレシアの元へ。
ラフレシアは、まだ、倒れ込んだまま、眠っている。
ジェシカは、フランシス王の死体を見ながら、考えを巡らせる。
ーここで、起こすのは、良くないわ。ショックが大きすぎる。何処か、別の場所で、起こした方が、いいわね。
ジェシカは、ラフレシアを背負って、歩く!!
そのまま、『玉座の間』から出て、廊下を進み、下の階へと降りる。
背負って歩いているからか、汗が、止まらず流れ出る。
ジェシカは、廊下を進んで、小さな『教会』へと入った!!
街中の『教会』まで、出向く時間がない時は、ここで、祈りを捧げている。
中央に祭壇があり、その後ろに、十字架と、聖母マリアの像が、飾られている。
長椅子が、祭壇を挟むように、縦に並んでいる。
横の窓からは、太陽の光が、優しく、差し込んでいた。
人は、誰もいない。
ジェシカは、ラフレシアを、長椅子に寝かせる!!
ジェシカは、
「失礼します」
と、言って、両手を前に出して、救命魔法の一つ、眠り魔法を受けた人間の、目を覚ますことができる、『ウェイクアップ』を唱える!!
ジェシカは、魔法は苦手で、あまり使えないが、『フランシス王国騎士団』のメンバーとして、日頃から、いろんな訓練を受けており、もしもの時のために、救命措置として、軽い救命魔法を、身につけていた。
ラフレシアは、深い眠りから、目が覚める!!
ジェシカは、
「大丈夫ですか?」
と、聞いて、続けて、
「ここは、城の中の教会ですよ」
と、説明する。
ラフレシアは、ハッとして、立ち上がり、
「父は? 無事なの? 生きてる?」
と、聞く。
ジェシカは、
「いいえ」
と、首を横に振り、
「お亡くなりに、なりました」
と、告げる。
ラフレシアは、
「そんな……そんな……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と、泣き崩れる!!
ジェシカは、なんて言葉をかけていいか、わからず、下を向いて、顔を覆ったまま、黙り込む……!!
ラフレシアは、泣き崩れたまま、
「どうして……なんで……こんなことに……!! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と、号泣する!!
ジェシカは、ラフレシアを、まともに見ることさえできず、下を向いて、顔を覆ったまま、黙り込み、ラフレシアが泣き止むのを、ただ、待つことしか、できなかった……!!
このまま、しばらく、時間が経過する!!
ラフレシアが、徐々に、落ち着きを取り戻す。
ジェシカは、まだ、下を向いて、顔を覆ったまま、黙り込んでいる……!!
ラフレシアは、
「……少し、落ち着いたわ。……王女として、見苦しいとこ、見せてしまったわね」
と、言って、続けて、
「顔を上げて。ジェシカさん」
と、言った。
ジェシカは、顔を上げようとは、しなかった。
ラフレシアは、
「ジェシカさん? いいのよ、顔を上げて」
と、言った。
ジェシカは、下を向いて、顔を覆ったまま、
「……ごめんなさい!! ごめんなさい!! ごめんなさい……!! 私が……私が、余計なことをしたせいで、ラフレシア王女から、家族を……父親を……奪ってしまった……!!」
と、言った。
ラフレシアは、
「……説明して、くれるわよね?」
と、聞く。
ジェシカは、顔を上げて、黙ったまま、頷く。
ジェシカは、マルコの家から出てから、今に至るまでのことを、全部、説明した!!
ラフレシアは、驚愕して、考える素振りを見せながら、黙り込む……!!
ジェシカも、同じように、黙り込み、ラフレシアが、口を開くのを、じっと待つ……!!
このまま、しばらく、時間が経過する!!
ラフレシアは、
「さて、どうしたものか……困ったわね」
と、口を開く。
ジェシカは、
「私は、死刑ですか?」
と、聞く。
ラフレシアは、
「他の国なら、そうでしょうね」
と、言って、続けて、
「でも、ここは、『フランシス王国』。ジェシカさんは、今まで、『フランシス王国騎士団』として、人生を、捧げてきたことを知ってる。だから、その功績を称えて、私が、死刑なんかに、させないわよ」
と、言った。
ジェシカは、
「いいんですか? 私が、『魔法制御道具』の場所を、教えたんですよ? 他にも、マリアを城から離したりと、兄が暗殺しやすいように、協力してたんですよ?」
と、言って、続けて、
「死刑にならないのは、嬉しいです。でも、死刑以外で、ラフレシア王女の、気が晴れるとは、思えません。ラフレシア王女に、一生、恨まれながら、生きるのは、嫌です」
と、言った。
ラフレシアは、
「……死刑になったら、家族として、お兄さんと、一緒に住めなくなるわよ? いいの?」
と、聞く。
ジェシカは、
「それで、ラフレシア王女の、気が晴れるのであれば、仕方ありません。自業自得です。受け入れます」
と、答える。
ラフレシアは、
「小さい頃に、両親も兄弟も、『レッドブラッド教団』に殺されて、家族がいない中、一人で生きてきて、やっとできた、親友と呼べる、クリスティーナも、殺されて、最後は、死刑となって、生き別れた兄と、家族として、一緒に住むことを、夢見ながら、ギロチン(首を切断する死刑道具)で、人生終了よ。いいの? それで?」
と、確認する。
ジェシカは、寂しく、悲しそうな表情をしながら、
「実に、私らしい終わりかたです」
と、言って、続けて、
「でも、それで、ラフレシア王女の、気が晴れるのであれば、神が、地獄ではなく、天国へ送ることを、考えてくれるかもしれません」
と、言った。
ラフレシアは、
「……そう。そこまで、覚悟しているのなら、しょうがないわね。じゃあ、刑を伝えるわ……!!」
と、言って、ジェシカをじっと見る。
ジェシカは、覚悟を決めたかのように、目をつぶる!!
ラフレシアは、強い口調で、
「ジェシカ、あなたに、刑を命じる!! 一週間の禁固刑よ!!」
と、告げた!!
ジェシカは、目を開けて、
「えっ!? 一週間の禁固刑? それだけ?」
と、驚く!!
ラフレシアは、強い口調で、
「あなたに、拒否権はありません!! 今までの功績を称えて、一週間の禁固刑とします!! 禁固で反省した後、気持ち新たに、『フランシス王国騎士団』として、再び、活躍してもらいます!!」
と、告げた!!
ジェシカは、
「どうして……?」
と、呟く。
ラフレシアは、強い口調で、
「返事は、イエスのみです!! わかりましたか?」
と、言った。
ジェシカは、
「はい。わかりました」
と、返事する。
ラフレシアは、笑みを浮かべて、聖母マリア像を、眺めながら、
「私ね、考えみたんだけど……もし、私が、ジェシカさんと、同じ立場だったら、どうするかなって。たぶん、同じことを、したんじゃないかなって、思ったの」
と、言って、続けて、
「それでね、プラスに考えることにしたの。今、こうして、殺されずに、生きていられるのは、ジェシカさんのおかげだし、この先も、私とタツヤは、殺されずに、生きていられるのよね? それと、『レッドブラッド教団』の幹部である、お兄さんが、辞めて、私達の、仲間になってくれるんでしょ? これって、すごいことよ」
と、言って、一息ついて、
「これで、父と母の夢、いや、国民の夢である、『レッドブラッド教団』の壊滅が、実現できるかもしれない。残酷な言い方だけど、父は、そのための、犠牲になったんだって」
と、言った。
ジェシカは、どう反応していいか、わからず、
「ラフレシア王女……」
と、言うだけで、次の言葉が、出てこなかった。
ラフレシアは、
「まぁ、私が、ジェシカさんを、気に入ってるというのも、あるかな」
と、言って、苦笑しながら、続けて、
「もう、行っていいわよ。私は、大丈夫だから。行ってみたら、どう? ジェシカさんのことを、とても、大事に、想ってくれてる人のところへ。お兄さんだけでは、ないはずよ。わかってるでしょう?」
と、言った。
ジェシカは、
「えっ!?」
と、言って、戸惑いながら、
「いいんですか? もう、行っても?」
と、確認する。
ラフレシアは、
「早く行った方が、いいわよ。私の気が、変わらないうちに」
と、言って、続けて、
「やっぱり、気が変わって、死刑にするかもだから」
と、言って、笑みを浮かべる。
ジェシカは、
「ありがとうございます……!!」
と、言って、頭を下げて、教会から、出て行く。
ラフレシアは、聖母マリア像を眺めながら、
「これでいいよね? お父様」
と、言って、目に涙を浮かべる。
ラフレシアは、そのまま、顔を覆って、今度は、静かに泣いた……!!
ジェシカは、マリアレーヌの部屋を、訪れる!!
タツヤが、ベットで、寝ており、カロリーネとクリスは、いなかった。
ーカルロスの手当てに、行ったのかしら?
タツヤの首筋に、救命道具の液体が、大雑把に塗ってある。
ーどうやら、急いで、手当てしたみたいね。
ジェシカは、救命道具を使って、タツヤの首筋を、ゆっくりと、手当てしていく。
ジェシカは、ふと、思い出す。
自分が、『玉座の間』の扉の前で、警護している時、タツヤが、ラフレシアと共に、会いにやって来た時のことを。
※※※※※※※※※※
ラフレシアは、ジェシカに、
「……彼はね、本当に、あなたのことを想って、会いたがってたの。だから、連れて来たわ」
と、説明した。
ジェシカは、感動した様子で、
「……ありがとう……!! タツヤ……!!」
と、言った。
タツヤは、再び、目に涙を浮かべながら、
「……パトロールから、帰って来なくて、本当に、心配したんだぞ……!!」
と、言った。
※※※※※※※※※※
ジェシカは、寝ているタツヤに、
「マルコの家の寝床から、パトロールに出て、ここまで、ずいぶんと、待たせちゃったけど……今、帰ってきたよ」
と、言って、続けて、
「マルコの家の寝床じゃなくて、マリアの部屋の寝床だけど、別に、いいよね?」
と、言って、続けて、
「どちらにしろ、また、こうして、寝床に戻って、再会できたんだから……!!」
と、言って、笑みを浮かべるのであった……!!
【ジェシカ編 閉幕】




