第3話 俺は『レッドブラッド教団』のメンバーじゃないぜ!! ~この世界、予測不可能だぜ!!~
「ぐぁぁぁぁぁぁ…!!」
タツヤは、激痛による苦しみの声を上げた。
腹には、暗殺用ナイフが刺さっている。
ジェシカは、その様子を見ながら、
「で、誰に命令されたの? 次は、どんな手で、『フランシス王国騎士団』のメンバーを殺す気?」
と、お構いなしに聞く。
タツヤは、弱々しい声で、
「…何、言ってるんだよ…」
と、苦しそうに言った。
タツヤの全身から汗が噴き出る。
「まだ、とぼける気? あなた、辛抱強いわね」
ジェシカは、淡々と言う。
タツヤは、弱々しい声で、
「…知らないよ…俺には…何のことだか…全然…わからない」
と、言いながら、刺された激痛の苦しみで、意識が飛びそうになっている。
「あなた、死ぬわよ。早く言いなさい。言えば、助けてあげる」
ジェシカは、変わらず淡々と言う。
「…だから…知らない…何…言ってるのか…わからない」
タツヤは声を振り絞る。
「おかしいわね…こんなに辛抱強くて、忠誠心があるなんて…!! 聞いてた報告とは違うわ…!!」
ジェシカは驚く。
ジェシカは続けて、
「もしかして…あなた、本当に何も知らないの? 『レッドブラッド教団』のメンバーなのに?」
と、タツヤに聞く。
タツヤは、
「…俺は…メンバーじゃない…そ…そんな…教団…知らない」
と、答えて、意識を失った。
タツヤはハッとして目を覚ます。
「目、覚めた?」
ジェシカが白い椅子に座りながら、タツヤを見ている。
タツヤの腹には、包帯が巻かれている。
「俺、まだ、生きてるんだな…」
タツヤは、小さな声で呟いた。
「もともと、急所を外してあるわ。だから、死ぬことはなかったの。でも、危険な状態だったと思う。効果が強い回復液体薬草を、お腹に塗って、出血は止まったけど、まだ元気に動ける状態ではないと思うわ」
ジェシカは言った。
ジェシカは続けて、
「…どうやら、私の勘違いだったような気がする。タツヤ、あなた、本当に『レッドブラッド教団』のメンバーじゃないのね?」
と、最終確認のように聞く。
「だから、そんな教団知らないし、メンバーじゃないって」
タツヤは、うんざりした様子で答える。
それを聞いたジェシカは、ベッドに倒れているタツヤの所に行き、
「ごめんなさいっ!! 本当にごめんなさいっ!!」
と、頭を深く下げて、謝った。
タツヤは、
「すげー痛かったよ。死ぬかと思った。マジで」
と、言って、苦笑する。
ジェシカは、頭を深く下げたまま、
「本当に、ごめんなさいっ!!」
と、申し訳なさそうに謝る。
タツヤは、
「もういいよ。俺のこと、信じてくれれば、それでいい。俺も、ジェシカさんのこと、信じるからさ。仲良くやっていこうぜ」
と、言って、笑った。
ジェシカは、頭を上げて、ホッとした様子で、
「ジェシカでいいわ。本当にごめんなさい。改めて、よろしくね、タツヤ」
と、言って、握手を求める。
「よろしく、ジェシカ」
タツヤは、それに応じて、握手をした。
「ーそれで、その『レッドブラッド教団』って、一体何なのさ?」
タツヤは聞いた。
タツヤとジェシカは、白いテーブルを挟んで、向かい合わせで、白い椅子に座っている。
「神の教えだとか言って、無差別に、暴力、強盗、レイプ、殺人などを繰り返す集団よ。最近は、この国を象徴する建物を破壊したりと、テロ行為みたいなこともしてるわ。たまったストレスを、発散してるだけにしか思えないけど」
ジェシカは、呆れるように言った。
「警察は? 警察は何をやってる? そいつら、全員逮捕だろ?」
タツヤは言った。
「警察? 自警団のこと? 都市部の自警団なら、壊滅したわ。『レッドブラッド教団』と戦って、皆殺しにされた。今は、農村部の自警団だけね」
ジェシカは言った。
「ええっ!? 警察が壊滅するなんて…じゃあ、ここは、無法地帯じゃないかっ!? 犯罪やりたい放題だろ?」
タツヤは驚く。
「そうよ。だから、私達、『フランシス王国騎士団』が、自警団の仕事を引き継いでるの。本来、私達、『フランシス王国騎士団』は、そういう犯罪の取り締まりみたいなことは、しないんだけどね」
ジェシカは言った。
「『レッドブラッド教団』が、ジェシカ達を殺そうとするのは、そういう犯罪の取り締まりみたいなことをしてるから?」
タツヤは言った。
「そうだと思う。奴らにとって、『フランシス王国騎士団』は、邪魔な存在。壊滅させたいでしょうね」
ジェシカは、苦い物を飲んだような表情をする。
「『レッドブラッド教団』を、逆に壊滅させることは、できないの?」
タツヤは言った。
「やろうとはしてるけど、難しいわ。実体のつかめない集団なの。わかってるのは、四人の幹部がいて、そいつらを中心に動いてるってことだけ。そいつらが強すぎて、戦士達は戦うことを恐れてるわ」
ジェシカは言った。
いつの間にか、窓から見える外の風景が、夕方へと変化していた。
「そろそろ、パトロールの準備しなきゃ」
ジェシカは、椅子から立ち上がる。
「そういえば、俺、ジェシカの家の前で倒れてたんだよな? ここは、宿屋じゃなく、ジェシカの家の部屋?」
タツヤは確認する。
「私の家じゃないわ。宿屋よ。タツヤのこと、警戒していたから、家には入れず、近くの宿屋まで、運んだの。以前、クリスティーナが、傷だらけの人を家に入れて、殺されたって報告もあったし」
ジェシカは言った。
「クリスティーナって、その『フランシス王国騎士団』の仲間?」
タツヤは言った。
「うん。中心メンバーのひとりだった子よ」
ジェシカは言った。
「その『フランシス王国騎士団』って、どのくらいいるの?」
タツヤは言った。
「数名よ。私も入れて、六人くらい。昔は、たくさん、いたんだけどね。ほとんど、奴らに殺されたわ」
ジェシカは言った。
「六人!? たった六人だけ!?」
タツヤは驚く。
ジェシカは苦笑して、
「そうよ。六人だけ。だから、タツヤも、怪我が治ったら、協力して」
と、お願いをする。
「協力って言われても…俺じゃ、戦力にならないぜ。今のところ、チート能力もなさそうだし」
タツヤは言った。
「ご飯の支度とか、書類の記入とか、そういう雑用系をお願いするわ」
ジェシカは言った。
「えぇ~、嫌だよ」
タツヤは困惑する。
ジェシカは笑った。
「それじゃ、私、パトロールがあるから。宿代は払ってあるから、ゆっくり休むといいわ」
ジェシカは、部屋の扉を開けた。
そこには、全身赤い色で覆われた、『赤魔導士』がいた!!
『赤魔導士』は、最上級即死魔法『デス』を唱えた!!
ジェシカは、
「うっ!!」
と、言って、倒れ込んだ。
「ジェシカ!!」
タツヤは驚いて、椅子から立ち上がる。
「おい!! ジェシカ!! どうした!?」
ジェシカは、死んだかのように、ピクリとも動かない。
ーまさか、死んだ? こんなにあっさり? 嘘だろ!? こんなの、ありえない!! 嘘だろぉぉぉぉぉぉぉー!?
タツヤは混乱した。