第10話 男の喧嘩だぜ!! 可憐な二人の乙女登場だぜ!! その正体は予想できなかったぜ!! ~この世界、予測不可能だぜ!!~
「ちょ、ちょっと待て!!」
タツヤは、『商人』を呼び止める。
『商人』は振り向いて、
「何だ?」
と、言った。
ー思わず呼び止めてしまった。どうする?
タツヤは、
「本当に殺すなんて…どうかしてるぜ、あんた」
と、言いながら、考えを巡らせる。
『商人』は、不快な表情をして、
「何だ? 説教か? こういう状況なら、仕方ないだろ。善人ぶるなよ。おまえだって、誰かを殺すつもりなんだろ?」
と、イラ立つ。
タツヤは、考えを巡らせながら、
「…そのつもりだったけど、考えが変わったよ。こんなこと、間違ってる。俺は、誰も殺さない。あんたのような人間には、なりたくない」
と、『商人』を軽蔑する。
『商人』は、イラ立った様子で、
「何だと!? 俺は、初めて人を殺して、今、興奮してるんだ!! おまえも殺すぞ!!」
と、言って、血の付いた剣をタツヤに向ける。
「やってみろよ、この人殺しのクソ野郎」
タツヤは言った。
『商人』は、完全にキレて、
「このガキ!! ぶっ殺してやる!!」
と、言って、右手に持っていた男の生首を、地面に置いて、両手で剣を握る。
タツヤは、ファインティングポーズをとった。
『商人』は、タツヤの頭めがけて、剣を振り下ろす!!
間一髪の所で、それをかわして、タツヤは、『商人』の股間を、思い切り蹴った!!
『商人』は、
「うぐっ」
と、言って、体を屈める。
『商人』は、片手で股間を押さえ、
「この野郎…急所狙いか」
と、痛みをこらえながら、タツヤの胸めがけて、剣を振り回す。
その時、ドカッ!! という音がして、商人は倒れ込む。
倒れた商人の後ろで、茶髪の若い女が、割れた花瓶を持って、立っていた。
髪型は、セミロングヘア(鎖骨下から、胸くらいまでの長さ)で、くせ毛で、ボサボサしている。
見た目は、十代後半。
柔らかで、ふっくらとした顔立ちで、朗らかな、中世ヨーロッパの美女という印象を受ける。
服装は、中世ヨーロッパの庶民が着るような、黒のワンピースドレス。
「大丈夫?」
茶髪の女は言った。
タツヤは、キョトンとしながら、
「ああ。ありがとう」
と、礼を言う。
茶髪の女は、
「あーあ、花瓶、割れちゃった。高かったのに。強く叩きすぎたわ」
と、言って、がっかりする。
「えっと…あなたは? テスト参加者?」
タツヤは聞いた。
「私? 私は、カロリーネ。テスト参加者って何? 寝てたら、家の前で声がして、何か戦っていたから、とりあえず、いい人そうな、あなたを助けたんだけど」
茶髪の女は言った。
「そっか。街の人か。ありがとう。俺は、タツヤ」
タツヤは自己紹介した。
「よろしく、タツヤ」
カロリーネは言った。
カロリーネの後ろの民家から、黒髪の若い女が出て来る。
髪型は、ロングヘア(胸の下くらいまでの長さ)で、綺麗に、ストレートに伸びている。
見た目は、二十歳ぐらい。
バランスが良く、整った顔立ちで、好奇心旺盛、知性的な、中世ヨーロッパの美女という印象を受ける。
服装は、中世ヨーロッパの庶民が着るような、灰色のワンピースドレス。
黒髪の女は、眠たそうに、
「今日は、何かとうるさいわね。明日、オルガンの発表会なのに」
と、言った。
「姉さん、起きちゃったんだ…」
カロリーネは言った。
「カロリーネ、何かあったの?」
黒髪の女は聞く。
「わからない。何か、やばそうな雰囲気がするけど」
カロリーネは言った。
タツヤは、
「あの…カロリーネさん。この人、君の姉さん?」
と、確認する。
「そうよ。クリス姉さんよ。あっ、私のこと、カロリーネって呼んでいいから」
カロリーネは答えた。
「二人暮らし?」
タツヤは聞いた。
「うん」
カロリーネは頷く。
「親は?」
タツヤは聞く。
ーおそらく、『レッドブラッド教団』に殺されたんだろうな…。
タツヤは、返答を予想する。
カロリーネは、
「栽培した青リンゴを食べて、お腹を壊して、病院で入院中よ。まったく、笑えるわ。アハハッ」
と、言って、思い出し笑いをする。
タツヤは、呆然とする。
クリスは、タツヤを見ながら、
「カロリーネ、この方は、誰かしら?」
と、聞く。
タツヤは、
「あっ、俺、タツヤです。タツヤって呼んでください」
と、自己紹介をした。
クリスも、
「よろしく、タツヤ。私は、クリスよ。クリスって呼んで」
と、自己紹介をして、続けて、
「えっと、タツヤ。一体、何があったの? 今日は、ずいぶんと騒がしいけど」
と、タツヤに聞く。
タツヤはハッとする。
ー何、のんびりしてるんだ、俺!! 急がないとっ!! ジェシカと、自分の命が、かかってるんだぞ!!
タツヤは、自分に言い聞かせて、焦る。
ー『商人』が、地面に置いた生首、あれを持って、ダッシュで戻れば、まだ、いけるかもしれないっ!!
タツヤは、地面にポツンと置いてある、男の生首と、倒れている『商人』を見る。
生首に気持ち悪さを感じて、嘔吐しかけるが、何とかこらえた。
『商人』は気絶しており、しばらく、目を覚ますことは、なさそうだった。
カロリーネは、タツヤの見ている方へと、視線を移し、
「姉さん、生首!! 男の生首があるわ!!」
と、驚く!!
クリスは、特に驚く様子もなく、冷静に、
「何か、殺伐としたことが、起きてるようね」
と、言って、続けて、
「タツヤ、何があったのか、話して」
と、タツヤを見る。
タツヤは、焦りながら、
「すまないけど、説明してる時間がない!! 俺、すごく急いでるんだ!!」
と、言って、男の生首を持って行こうとする。
クリスは、
「詳しく、話さなくていいわ。簡単でいいから」
と、言って、説明を求める。
「そうよ。説明してよ。どういうことなの?」
クリスと同じく、カロリーネも、タツヤに説明を求める。
タツヤは、
「わかった。簡単に話す。時間がないから、質問はしないでくれ」
と、言って、今の状況を簡単に話した。
カロリーネとクリスは、驚く。
「そんなことに、なってるなんて…!! やばいわね…!!」
カロリーネは言った。
「なるほどね。それで、急いでるわけね」
クリスは言った。
その時、冒険者ギルドにいそうな、十代後半の男二人組が、剣を握って、やって来た!!
「悪いが、その獲物、もらうぜ」
「おい、時間がないから、早く、やっちまおうぜ」
『ギルドの二人組』は、カロリーネとクリスを殺そうと、攻撃態勢をとる。
タツヤは、カロリーネとクリスをかばうように、前へと出て、
「おいっ、やめろっ!! バカ野郎!!」
と、叫んだ。
カロリーネは、
「野蛮な人達ね。嫌いなタイプだわ」
と、言って、タツヤの前へと出る。
クリスも、
「これが、テスト参加者ってわけね。わかりやすいわね」
と、言って、タツヤの前へと出る。
「カロリーネ!! クリス!! 俺より前へと出るな!! 俺が、何とかして、守るから!!」
タツヤは叫ぶ。
カロリーネは、割れた花瓶の破片を握り、
「大丈夫よ」
と、言った。
クリスは、手をブラブラとさせながら、
「さっさと終わらせましょ」
と、言った。
『ギルドの二人組』は、カロリーネとクリスを殺そうと、剣を振り回して、襲い掛かる!!
カロリーネは、
「花瓶流殺法・破片乱れカット」
と、呟き、熟練した武道家のように、素早い動きで、『ギルドの二人組』の攻撃をかわし、花瓶の破片だけで、『ギルドの二人組』の頭や腹を、十回ほど斬った!!
『ギルドの二人組』は、流血して、倒れ込む。
『ギルドの二人組』が倒れるまでに、費やした時間は、僅か十秒程度。
クリスは、残念そうに、
「カロリーネ、一人で終わらせちゃったわね。これじゃ、私が出る幕ないじゃないの」
と、言った。
タツヤは、呆然とする。
「タツヤ、急いでるんじゃなかったの?」
クリスは、確認する。
「あなた達は、何者なんだ? ただの一般市民じゃないだろ?」
タツヤは聞いた。
「今は、オフで、ただの一般市民よ。」
カロリーネは答えた。
「オンだったら?」
タツヤは再び聞く。
「『フランシス王国騎士団』のカロリーネになるわ」
カロリーネは答えた。
クリスは、
「カロリーネ、言っちゃ駄目でしょ。秘密にしておきなさいよ」
と、言って、カロリーネを注意する。
タツヤは、クリスを見ながら、
「クリスも、『フランシス王国騎士団』なのか?」
と、言った。
クリスは、溜め息をついて、
「そうよ。『フランシス王国騎士団』のクリスよ。せっかくのオフなのに、こんなことになるなんて。私達も協力するわ。仲間のジェシカを、殺させはしないわ。絶対に」
と、言った。




