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2.


目をぱちくりさせる。何度もさせる。

しかし何度瞬きをしても目の前のブルーの瞳は消えない。



「どうやら意識が朦朧としているようだ。悪いが私は彼女を保健室に連れていくから、先生に伝えておいてくれないか。」


「かしこまりました殿下。」


そのやり取りでハッと青い瞳から目を逸らすと、次は燃えるような赤い髪が視界に入った。



あれ……?


この特徴的な髪、日焼けした肌、190cmはあるだろう恵まれた体格。

彼も攻略対象者の一人、ハロルド王子の筆頭護衛であるエリック・カドラル辺境伯令息じゃない?


あたりをぐるっと見渡す。

ビルに遮られない広い空。

豪華絢爛な西洋建築。

その校舎をぐるっと囲むように咲いているマリーゴールドが風にたなびいている。



あ、思い出した。

これ、マリ恋のオープニングだ。


一平民として生まれ育ったヒロインが、教会で事前活動をしていたところを領主の男爵に見出され、特別推薦を受けてこの王立高等学院に入学することが決まって…

あまりの緊張に入学式の日に門をくぐったところで倒れて、そこをハロルド第2王子に助けてもらう……



ということは、


私、乙女ゲームの世界の中に転載しちゃったってこと…?




「君?気を失ってしまったのか?大丈夫か--」



クラスの皆さんが騒いでいたのが分かるわ、たしかにイケボよね、うんうん。


意識を失う直前に脳裏に浮かんだのはそんなくだらない感想だった。





話を整理しよう。


まず、私はなぜか今乙女ゲーム「マリーゴールドに恋して」の世界にいる。本当になぜ。

鏡を見る限りピンクブロンドのサラサラストレートヘア、兎のように赤い瞳、さくらんぼのような唇をした自分はこのゲームのヒロイン、マリア・ドルチェになっていると認識していいだろう。



しかし転生か…本当にこういうことって起こるんだなあ…。



まだ庶民JKだった頃、よくトラック転生とか過労で倒れて転生とかそういう設定の小説を読んでいたが、思い出そうとしてもこの世界に来ただろうキッカケというものは思い出せない。


まあ死んだかもしれない出来事なんて、覚えてても気持ち悪いだけか。もしかしたらこの世界は夢かもしれないし、深く考えないでおこう、うん。


勝手に結論づけたところで改めてぐるっと周りを見渡す。



今私がいるのは、この王立高等学院の学院寮だ。

この学院は王都の一等地にある。

伯爵家以上の高位貴族の場合は王都にタウンハウスを持っているのが通常で、その場合は馬車で通学することになる。

だが子爵以下の場合は王都とはいえ郊外に屋敷を構えることが多いため、寮に入って学院生活を送ることも出来るのだ。


たしかヒロインは王都から馬車で2時間ほどかかる地域の出身だった。

男爵領の市井で生まれ、教会の青空学校で学び、休日は積極的に奉仕活動をした。

その奉仕活動をたまたま領地視察で見かけたのが領主であるプラント男爵だ。

平民にしては珍しい柔らかな物腰と利発さを見出され、あっという間に後見人となり、この学院に入学することが決まったのである。



「聖女に選ばれたとか、魔力が強くて貴族学院に入学のパターンはよく聞くけど。マリアはなにかチート能力あったっけ?」



このゲームは学校で流行っていたが、私は無課金ライトユーザーだった。

設定もシナリオもざっくりとしか把握していないのは、いざこの世界で暮らすには些か心許ない。


幸い入寮にあたっての引越し作業は全て終わっていたようで、とりあえず手当り次第引き出しを開けては中をチェックしていくことにした。


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