表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/30

FJC最終回「たすくー! これからもいっしょだよ!!」

「おい近づくな! コレが目に入らねぇのかぃ!?」


 ルルを誘拐した熊八師匠と与太郎のポンコツコンビは、大勢の刑事や警察官……そして(たすく)に包囲された。だが刑事が近づこうとしたとき、熊八がルルに拳銃を突き付けたのだ!


「形勢逆転だ! 一歩でも近づいてみやがれ、この娘がどうなっても知んねぇぞ」

「えっ知らないっすか師匠! 拳銃で撃ったらこっぱミジンコになるっす」

「わかってらぁんな事! まずはテメェから撃ってやるぞ!」

「ひぇええええっ!」


 しかし相手はポンコツコンビ、オモチャの銃ということもあり得る。刑事が確認しようと一歩近づいたところ、


 〝パーンッ〟


 熊八が空に向かって発砲した。すると、


「おい、何気絶してんだテメェは!」


 突然の銃声で与太郎が気を失った……熊八はなぜこの男を弟子にした?


 本物の銃声に刑事たちは怯んだ。ポンコツ誘拐犯がまさかの拳銃所持……まさにギャップ萌え……いや萌えではないか。

 正直こいつらを舐めてかかっていた刑事たちは顔が青ざめ、急いでパトカーの陰に隠れると態勢を整え直した。


 だが一方のルルはいつものように何食わぬ顔……ではなかった。


「くぅううううん! こっ……こわいよぉ」


 恐怖に慄いてプルプル震えていた……実はルル、大きな音が苦手なのだ。普段の生活でも掃除機の音とか雷の音が苦手……無敵と思われたルルの弱点である。

 絶体絶命! 警察は身動きできない、ルルは怖がっている……なかなか近づけない状況に佑は焦っていた。


(くそぉ、どうすれば……あっ!)


 佑は天神(あまがみ)家の執事・飯田から教わった「コマンド」を思い出した。どうやらこのコマンドをご主人、つまり佑が言うとルルが本気を出す……というまるでポ●イにホウレン草の缶詰を与えるようなものらしい。

 ところで「ホウレン草の缶詰」って存在するのだろうか? 作者は子どもの頃から疑問に思っていたのだがこのストーリーには一切関係ない。


「ルル―ッ!!」


 佑がルルに呼び掛けた。だが、


「おっ、音がこわいよぉおおおおっ」


 ルルは銃よりも、その「音」に怖がっていて佑の声が届いていない。


「ルル―! 帰ったらフライドチキン腹いっぱい食わせてやるぞー!」

「……ホントっ!?」


 ルルのツインテールがピクッと動き佑の声が届いた……やっぱチョロい。ルルが反応したところを狙って佑はコマンドを発動した。



「ルルーーーーッ!! カーーーーーーーームッ!!」



「わかったー!」


 ルルは佑のコマンドを聞くや否や、拳銃を持った熊八の右手首を思いっきり〝ガブリッ〟と咬みついたのだ!


()てて―っ!」


 まるで筋肉がちぎれるかと思うような痛みに耐えかねた熊八は思わず拳銃を落としてしまった。

 そう! 「カム」というコマンドは本来「come(here)」つまり「こっちに来い」という意味なのだが、ルルはおバカなので何度教えても「咬む」という意味にしか捉えていなかったのである。


「なっ、何するっすか!」


 熊八が落とした拳銃を、今度は与太郎が拾い上げて構えたが


「おい逆だっ! 自分に向けて撃つ気かよ!?」

「えっ違うっすか!?」


 慌てて銃を持ち直すとようやくルルに向けて発砲しようとした。ところが、


「ガルゥウウウウッ!」

「ひぃっ!」


 本気を出したルルが今度は与太郎の腕に〝ガブリッ〟と咬みついたのだ。


「うぎゃあ! 痛いっす」


 与太郎はたまらず拳銃を放り投げてしまった。拳銃はルルの頭上を舞い、熊八がジャンプして取ろうとしたら……


 〝ぱくっ!〟


 反射的にルルが口でキャッチしてしまった。


「んっ!? なんだろコレ?」

「お、おじょうちゃん……それ、返しなさい」

「うん、いいよー」


 と言うとルルはポンコツ誘拐犯に銃口を向けた。


「おっ、おい! 弾じゃねーよ! 今持ってる物を返せ!」

「えっどうすんの!? こう?」


 〝パァーン!〟〝パリーンッ〟


 ルルは何も考えず引き金を引いてしまった。すると弾が発射され、パトカーの赤色灯に当たった。


「うっ、うわぁ! こ……こわかったぁ」


 大きな音が嫌いなルルはその場にへたり込んだが、


「でも……なんかおもしろそう♪」


 ……恐怖以上の「楽しみ(オモチャ)」に出会ってしまった。


「おじさん、遊ぼー」

「バッバカ! こっち向けんじゃねーよ」

「えぃっ」


 〝パァーン!〟〝パァーン!〟


 テンションが上がったルルは、もはや手が付けられない。もちろん命中などしないのだが、流れ弾が四方八方に発射され周囲はパニックになった。


「やっ、やめ……」


 熊八が命がけでルルに近付こうとしたら


 〝パァーン!〟〝パシーン!〟


 跳弾が熊八の頬をかすめ、傷口から血が流れ出た。


「ひっ、ひぃいいいいっ」


 恐怖に慄いた熊八はその場にうずくまったが、


 〝パァーン! ……カチッ、カチッ〟


「あれ? もうないのー? つまんないや」


(――!? 今だ!)


 銃が弾切れになったことを見計らって熊八が懐からナイフを取り出すと、


「このガキゃー! ぶっ殺す!」


 ナイフをルルに向けて突っ込んでいった。絶体絶命か!? そこへ、



「ルルーーっ!! カーーーームッ!!」



 再び佑のコマンドが……だがこれはルルにcome back、つまり「戻ってこい」という意味で使ったのだ。しかし残念なことにおバカなルルには伝わらなかった。


「うん、わかったー!」


 ルルは熊八の攻撃をひらりとかわすと、ナイフを持った熊八の腕に


 〝ガブリッ〟


 ついでに与太郎の腕も


 〝ガブリッ〟


 と咬みついた。二人はもう限界……思わず


「「おまわりさ〜ん! たっ助けて〜(っす)!!」」


 と泣き叫びながら警察官の所へ駆け寄っていきそのまま逮捕された。



 ※※※※※※※



「ご協力ありがとうございます! おかげさまで犯人逮捕することができました」


 ポンコツ誘拐犯がパトカーに乗せられている隣で、刑事は佑にお礼を言うと、そこへ事情聴取を終えたルルが駆け寄ってきて佑に飛びついた。


「たすくー! ただいまー」

「ルル……心配したぞ」


 飛びついたルルを佑は力強く抱きしめた。その姿はまるで遠い昔、少年と犬だった頃の二人……いや一人と一匹のようであった。

 ルルが事情を聴かれていた場所には熊野(くまの) (ふとし)巡査長がいた。犬嫌いの彼は今もガクガクと脚が震えているが、なぜ女子(J)中学生(C)相手に恐怖を感じているのか未だに理由がわからないでいた。


「お嬢ちゃんも……協力してくれてありがとう」


 刑事がルルに声をかけた。これはナンセンスコメディ―小説である。ルルが拳銃でパトカーを壊したから器物破損や銃刀法違反じゃねーかとか、ポンコツ誘拐犯はケガをしているのだから逮捕じゃなくて身柄確保が妥当じゃねーのか……などという意見は一切受け付けない。


 佑とルルはお互いの顔を見つめた。そこにはただの青年と女子中学生(JC)という間柄ではない深い絆が存在した。

 ちょうどこの日は仮譲渡期間(トライアル)の最終日、この日までにお互いが家族として納得しなければお別れになる。だがこの二人にその心配はないだろう。


「ルル、これからも一緒にいて……いいんだよな?」


 ルルは満面の笑みで


「たすくー! これからもいっしょだよ!!」

「……そうだな、一緒に過ごそうな」


 佑は刑事に頭を下げ、ルルは手を振りながらその場を離れようとした。


 ……ところがである。


「そうだたすく! これからはさー」

「ん!? 何だ?」



「毎晩ボクとおフロに入って! そしてこの前みたいにボクを洗って!」



 ルルの言葉に刑事の耳がピクッと反応した。


「お、おい! いきなり何言い出すんだよ」


 佑が止めようとしたがルルはさらに


「それから前みたいに一緒に寝よ! ベッドの中でボクをなでなでして気持ちよくして! それからおトイレはたすくの目の前でシーツの上にちゃんとするから片づけてね! それと、たすくがくれたドッグフードはちゃんと食べるよ! 家の中はハダカでいいから外ではちゃんと服着せてね! あと、ご主人様からはなれないように首輪もちゃんとつけてね! ルルはいつでもたすくの(ペット)だよー!!」



「お、おい……それって犬のときの話だろぉおおおおっ!?」



 そう叫んだ佑の肩をポンッと叩いた刑事が、


「和戸さん……詳しい話、署で聞かせてもらえませんかね?」


 佑の顔はみるみるうちに真っ青になり


「ちっ、違うんですよ! コイツは元々オレの犬で今まで世話して……」

「いけませんなー、女子中学生をペット扱いしてそういうプレイは」


「い、いやコイツは犬なんですよマジで! えっ、あっ……何でオレがパトカーに!? ちょっと待って! 信じてくださいって……うひゃぁー!」

「えーっ、たすくどこに行くのー!? ルルもいっしょに行くー!」


 この後、天神家の「神の力(ご都合主義)」は発動され、佑は釈放された。



 そして同じ頃……佑の家からひっそりと、いつでもドア(いろいろアウトなヤツ)が消えていった。



(イヌ娘JC【FJC編】・終わり)

「ルルだよ! さいごまで読んでくれてありがとー! FJC編のお話はこれでおわりだけど、実はボクが中学二年になったSJC編と中学三年生になったLJC編のお話もあるんだよー! またいつか会おうねー! バイバーイ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ