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FJC第29話「じゃあ真っ二つに折ればいいんだね!?」

「たっ……大変だぁ~!!」


 ルルを誘拐している……と愉快犯、もとい誘拐犯から電話で聞かされた(たすく)は動揺した。だが佑は着信履歴に残された「電話番号」と、通話中に聞こえてきた「与太郎」「熊八師匠」という名前を控えたメモを片手に警察へ電話した。


 ルルと佑は、今後一緒に住めるかどうかを試している『仮譲渡(トライアル)期間』中だ。まだルルの所有権は育てた天神(あまがみ)家にある。警察に通報を済ませた佑は、天神家にも連絡を取ろうと考えた。


「ええっと、電話番号は……あっ!」


 よく考えたら天神家の住所も電話番号も知らないことに佑は気がついた。


 困った佑は…………ルルに聞いてみることにした。


『トゥルルルル……ガチャ! もしもし、熊八だ!』

「あのぅすみません、先ほど電話してた佑と言いますが……」

『おぅ、なんでぇ!? もう身代金の用意ができたのかぃ!?』

「あっいえ! ちょっとルルに聞きたいことがありまして……大変恐縮なんですがちょっとルルに代わっては頂けないでしょうか?」

『ん? ルルってあのガキか!? しょーがねえなぁ……ちょっと待ってろ!』


 しばらくするとルルが電話口に出た。


『たすくー!? ルルだよー!』

「あのさぁルル、ちょっと聞きたいんだけど! 天神家の執事……そうそう、飯田さんに連絡取りたいんだけどさぁ! よく考えたらオレ、天神家の電話番号知らないんだわ……ルルは知ってるか!?」

『ボクは知らないよー! でもさぁー、家のつきあたりに【いつでもドア】があるじゃん! それ使えばいつでも飯田さんに会えるよー』


 ――そうだった! 佑はやっと思い出した。


 佑の家には、時空を超えて天神家といつでも繋がっている「いつでもドア」という色々な意味でアウトな物が設置されている。仮譲渡(トライアル)期間中は困ったときにいつでも天神家と連絡を取ることができるのだ。


「ゴメンゴメン! すっかり忘れてたよー! じゃ、すぐ助けに行くから良い子にしてるんだぞ! あっそうだ! 熊八さんと与太郎さんにもよろしく言っておいてくれ……じゃあな!」

『うん! たすくーまたねー……あっおじさん! これって終わったらどうすればいいのー!? ……えっ、そんなこと知るか? わかった! じゃあ真っ二つに折ればいいんだね!? バキッ! ……ツーツーツー』



 ……この小説の登場人物は、どうやら『バカ』しかいないようだ。



 ※※※※※※※



 佑はさっそく、家の奥にある「いつでもドア」(いろいろアウトなやつ)の前にやって来た。


 〝ドンドンドンッ!〟


「飯田さーん! いらっしゃいますかー!? 佑でーす」


 するとドアが開き、中から身なりが整った初老の紳士が出てきた……天神家の執事・飯田である。


「お久しぶりです佑様、おや血相を変えて……どうなされました?」

「大変なんです飯田さん! ルルが……ルルが誘拐されちゃったんですよ!」


 佑は執事の飯田に今まで起こったことを事細かく説明した。だが飯田は少しも表情を変えることなく、


「それは……お気の毒さまですな」

「何を呑気なこと言ってるんですか! 一大事ですよ!」


 ……犯人に電話してルルと会話していたヤツに呑気とは言われたくない。


「えっ、あぁいえいえ! お気の毒というのは佑様やルルお嬢さまのことではございません……その誘拐犯とやらに対してでございますよ」

「へっ!?」

「どこのどなたかはもちろん存じ上げませぬが……ルルお嬢さまも元はイヌ、不用意に手を出されたら大変なことになってしまいますぞ」

「……はぁ?」


 ルルに手を出したら大変? 佑は意味がわからなかった。


「そうだ佑様! ちょうどいい機会でございます。ルルお嬢さまが本気を出されるコマンドというものがございます……それを今から佑様に教えておきますよ」


 ルルが本気を出すコマンド? 佑はますます意味がわからなくなった。


「犯人が武器を取り出すような危険な状態になりましたら、このコマンドをルルお嬢さまにお伝えくださいませ」


 そう言うと飯田は、佑にコマンドを教えてから「いつでもドア」(マジでダメなやつ)を使い天神家に帰っていった。ちょうどそのとき、玄関のチャイムが鳴り


和戸(わと)さんですね? 警察の者です」


 飯田と入れ替わるように刑事とおぼしき男性が二人やってきた。


(あれ? 想像していたより人が少ないな)


 佑は刑事ドラマとかでよく見る「逆探知の装置」を持って来て電話機にセットする警察官が同行しているものと勝手に想像していたが、手ぶらだったので思わず刑事の一人に質問した。


「あの、逆探知の準備とかされないのですか?」


 すると刑事さんは笑いながら


「いやぁ、今回は必要ありません! というのも誘拐犯たち、携帯電話の位置情報を思いっきり垂れ流していましたから! もうすでに場所は特定されていますよ」


 ……ポンコツにもほどがある。刑事たちは佑から事情を聴くと、


「では和戸さん、我々は今から犯人確保とルルさんの保護に向かいます。一緒に来ていただけますか?」

「えぇ、もちろんです」



 ※※※※※※※



 佑と刑事たちは悪人御用達の「使われていない倉庫」へとやって来た。今度は犯人確保とルルの救出が目的なのでパトカーや警官が大勢やって来て、周囲は物々しい雰囲気になっていた。


「あー、犯人に告ぐ! この建物は完全に包囲されている。無駄な抵抗をしないで大人しく出て来なさい」


 刑事の一人がオーソドックスなセリフで誘拐犯に声をかけた。本当はどんな形で接触するのか……このような事態に遭遇したことのない作者が知る由もない。


 するとポンコツ誘拐犯こと熊八と与太郎が、手足を縛られたルルと一緒に倉庫から出てきた。


「おぃなんでぃなんでぃ! 何でオメェらココがわかったんでぃ!?」


 それは誘拐犯(オマエたち)が電話番号と位置情報を晒したからである。


「スマホの位置情報がダダ洩れだ! まぁ途中で電波が途切れてしまったが」


 それはルルがスマホを真っ二つに折ってしまったからである。


「お前たちの要求は何だ!? 一応聞いといてやろう」

「そっそれは……まずは身代金だ!」

「いくらだ?」

「一兆億千万円っす!」

「オメェはだまってろ!」〝ゴツンッ!〟

「痛いっす!」

「ルルはフライドチキンが食べたーい!」

「何で人質が要求するんだよ!? いっ一億円だ! 一億円用意しろ!!」

「おいおい、そんな大金どうするんだよ」


 刑事が熊八に尋ねると


「オレはなぁ! その一億で宝くじ買うんだよ! いくらなんでも一億円も買ったらよぉ、一等前後賞は確実に当たるだろ!? そしたら十億円だぁ! 十倍にするんだよ! へへっ、どぉだ~オレたちは頭いいだろぉ!?」


 どうやら彼らは慈善事業に寄付したいらしい。ちなみに年末ジャンボ宝くじで確実に一等を当てるためには一ユニット=二千万枚必要……つまり六十億円投資しなければならない。刑事は呆れた顔をしながら熊八との交渉を続けた。


「そっか……で、他に要求はあるのか?」

「くっ車だ! 逃走用の車を用意しろ! 車種はな……スーパーカーだ! そっそうだ、ラソボルギーニカウソタックを用意しやがれぃ!」

「おい……そこのワンボックス車はお前らの車じゃないのか?」


 目の前には熊八の車が停まっていた……もちろん警察官に包囲されている。


「うっうるせーやい、オレが乗りてぇんだよ! しかもカウソタックならテメェらが追跡しても撒けるからな!」


 そんな車に乗ったらどこへ逃げても身バレしそうだが……?


「わかったわかった! もうねーか?」


 刑事は鼻クソをほじりながら熊八に聞いた。


「あと……スマホの機種変だ! 真っ二つに折られたからな」


 状況を察知した佑は、最後の要求だけは呑んでやろうと思った。


「よしわかった! 要求は呑むから人質をこちらに渡しなさい」


 もちろん要求など呑むワケがない……刑事たちが誘拐犯とルルに近づこうとしたそのとき、


「おい近づくな! コレが目に入らねぇのかぃ!?」



 熊八がルルにある物を突き付けた! それは……拳銃だった。

「ルルだよ! 半年以上更新してなくてごめんね! でも次回が最終回だよ!」

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