表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/30

FJC第25話「たすくー! 服着せてーっ!」

 前回ベタすぎる漫才師……じゃなかったポンコツ誘拐犯の登場により話がコースアウトしそうになったのでおさらいしよう。


 ルルのダイエットのため、(たすく)は市内にオープンした屋内温水プールにルルとその友だちのチャコを連れてやって来た。

 ダイエットしたがらないルルは、運動が苦手かと思いきや実は水泳が得意。小学校のとき校内水泳大会の五十メートル自由形で優勝したこともあるらしい。

 だがそのときの泳法が「犬かき」だったということで、ルルには人として常識的な行動をとってほしい……そう思った佑はルルにクロールを教えることにした。


 プールサイドで佑はルルの正面に立つと


「ルル、最初に腕の動きを教えるぞ! まずは下を向いて右腕を後ろから耳の近くを通るように前にもってくる……そう! そしたら腕を伸ばしてオレの手をタッチしてみろ!」


 ルルは言われた通り腕を伸ばすと、差し出された佑の手のひらをタッチした。


「よしっ! そしたら右の手のひらで水を押すイメージで……そうそう、その間に今度は左腕を同じように前に持ってきてオレの手にタッチする!」


 するとルルは突然、顔を上げ


「すごいよたすく! ボク『お手』ができたよ! あと『おかわり』も……」

「人間の姿でそれは覚えなくていい」



 ※※※※※※※



 佑はビート板を借り、プールに入って練習することにした。


「いいかルル、温水プールだけど水温差で心臓に負担がかからないように入るときは足からゆっく……」

「いやっほうっ!」


 〝バシャーン!〟


「飛び込み禁止だ!! まったく、言い終わる前から……」


 ……言い終わってからでも結果は同じである。


「じゃあ今度はバタ足の練習だ! ヒザを曲げずに足を交互に動かして……」


 〝パチャパチャパチャ……〟


「……前足じゃなくて後ろ足な」

「えっ?」


 ルルは右腕と左腕を交互に水面へ叩きつけていたのだ。


「ビート板の先端を前足……じゃなかった両手で持つ。そして身体が沈まないように足は水面近くを蹴る感じで……」


 〝チャポン……チャポン……〟


「おい、そんなゆっくりな動きだと沈んでしまうぞ! もっと小刻みに早く動かさないと……」

「もっと早く? うん、わかった!」


 〝バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ!!〟


 ルルは言われた通り超高速で水面をキックした。すると、


 〝ザザーッ〟


 ルルの超人的なバタ足によって大量の水しぶきが上がり、室内プールにゲリラ豪雨が発生……プールの水位が三センチほど下がった。


「おいっ! 何やってんだよルル、そんな掻き方しても全然進まないしプールサイドにいる人たちの迷惑だ」

「そうだね、犬かきのほうがぜんぜんすすむよ」

「もういい! いったん上がれ!!」


 佑とルルがプールから上がると……


 〝ブルブルブルブルルルッ!〟


 ルルはものすごい勢いで全身を高速に振り、周囲は再び水浸しになった。


 そこへ、


「ちょっ何やってんのアンタは!? 本がビショ濡れになったじゃないの!」


 怒りを露わにルルの元へやってきたのは、プールに全く入っていないのになぜか全身ずぶ濡れになったチャコだ。泳げないチャコはプールサイドで読書をしていたのだが、ルルが起こしたゲリラ豪雨(バタ足)の被害に遭ったようだ。


「あっチャコちゃん! いいところへ来たね」


 ルルはチャコの元に駆け寄った。


「あのね、このプールにニシキゴイが泳いでるんだよ!」

「はぁ? そんなのいるワケないでしょ!?」

「ホントだってば! 今、すごい近くにあつまってるよ……こーんにちはー!」


 ルルは水面に向かって呼びかけた。チャコは確実にダマされていると思いつつ、魚が泳いでいるという言葉に釣られて恐る恐る水面を覗き込んだ。そのとき、


 〝ドンッ!〟


 背後に回り込んだルルがチャコを足蹴にし、チャコはプールに落ちた……よい子はマネしないでね!


「ぶぶぶっ……ぶはぁ!」


 溺れかけてパニックになったチャコは命からがらプールサイドによじ登るとそのままルルに詰め寄った。


「シャァアアアア!!」


 チャコはマジ切れ……そう、チャコはネコの生まれ変わりの『ネコ娘』……水が大嫌いなのである。


「ルル~っ、きさまぁ~!!」

「はいっ! 焼きとうもろこし!」

「う゛っ……ま、しょうがないわね」


 ルルはチャコの扱いに慣れていた。



 ※※※※※※※



 その後もルルの暴走は続いた。


「ねぇたすく! あれは何?」

「あぁ、あれはウォータースライダーだよ。すべり台みたいな……」

「わーい!」


 すべり台という言葉を聞いた瞬間、ルルは一目散に向かっていった。だが、


「おいっ、そっちは出口だ! 逆だ逆!」


 ルルは階段ではなく滑走する側から駆け上がっていった。


「わああああぁぁぁぁぃぃぃぃ……」


「……ぅゎ!」


「……」


 〝ザザザザァーン!〟


 知らないおっさんと一緒に滑り降りてきた……これもよい子はマネしないでね!


「危ないだろルル……あれ? いない」


 目を離した瞬間に再びいなくなったと思ったら、遠くから


「ねぇねぇたすくーっ!」


 ルルが両手に何か持ってやってきた。


「あっちで金魚すくいやってたよ」

「金魚すくい? そんなもんないだろ?」

「えっ、だってコレ……」


 と言ってルルが見せたのは、ビニール袋に大量に入った……


「おい! これってドクターフィッシュだろ!?」


 ルルは足湯コーナーにいたドクターフィッシュを全て捕獲してきた。


「……あんまり美味しくないね」

「食うな! 戻してこい」


 ルルは渋々ドクターフィッシュを戻した……二十五メートルプールへ。


「うわっ! 何だコレ?」

「やだくすぐったい! 何で魚がいるのよ?」


 プール中がパニックになった……重ね重ね、よい子は絶対にマネしないでね!


「マズい! このままじゃ犯罪者になってしまう」

「たっ佑さん! とりあえずこの場を離れましょう」


 佑とチャコはルルを羽交い絞めにすると、逃げるように更衣室に向かった。


「ふぅ」


 男子更衣室で佑が、やっとルルから解放されてホッとしたのもつかの間、


「ちょっルルちゃんやめなさーい!」


 遠くからチャコの声が聞こえた。まさか……そのまさかである。


「たすくー! 服着せてーっ!」


 全裸のルルが乱入してきた。


「キャーッ!!」


 更衣室で着替えていた男たちが股間を隠して絶叫した。


「キャーッ♥♥」


 一部の男たちは「別の意味で」股間を押さえて歓喜した。



 ※※※※※※※



「たくもうっ! 何で私まで……ブツブツ」


 駐車場でチャコがブツブツ言いながら憤慨していた。佑たち三人はプール施設から「出禁」をくらったのだ。そんな三人を遠くから見ていたのは、あの漫ざ……誘拐犯の師弟コンビだ。すっかり存在を忘れていた。


「おい与太郎! ちょっとアイツに接触してみるぞ」

「えっ失笑、もう誘拐っすか? 他に男とかいるっすよ」

「バカ野郎! いきなりやんねーよ、ちょっと声掛けて『天神(あまがみ)家の娘』か確認するだけだ……それと」


 〝ゴツンッ!〟


「誰が失笑だ! それを言うなら師匠だろ」

「だから殴らなくても……痛いっす」


 すると「師匠」と呼ばれたその男は三人に近付いていった。車の前では佑とチャコがルルに説教をしている最中だ。


「あっあの~すみません、ちょっとお尋ねしますが……そちらのお嬢さんってもしかして天神さ……」


 と、優しい口調で話しかけてきた「師匠」に対し、怒りが頂点に達していた佑とチャコは、親の仇を見るような目で睨みつけると


「あぁっ!? 誰だぁオマエ!」

「何よアンタ! ルルの知り合いなの!?」


 確実に殺意を感じる態度で威圧してきた。


「いっいえ、何でもないです……失礼しましたーっ!」


 恐れをなして逃げ帰った師匠だが、下の名前が「ルル」だという情報だけは得られたようだ。

「ルルだよ! さいごまで読んでくれてありがとー! まだまだ続くよー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ