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FJC第18話「ダイエット食べよー!」

「ねぇねぇたすく!」


 金曜日の夜、リビングのソファーでテレビを見てくつろぐ(たすく)の元に、風呂上がりのルルが目を輝かせながら近付いてきた。


「んっ、どうした?」

「あのね! すごいんだよボク」


 あっ、こりゃロクな話じゃないな……佑は直感でそう思ったが、一応聞いてやろうとテレビの音量を下げルルの方へ体を向けた。


「何が?」



「あのね! ボク、()()()()()()んだよ! すごいでしょ?」



「ふぅ……」


 佑は軽くため息をつき、


「ルル、そこに座れ!」

「わん?」


 ルルは佑の目の前に「おすわり」の格好で座った。


「そこじゃない、ソファーに座れ!」



 ※※※※※※※



 佑が「イヌ娘」になったルルと再会し、一緒に生活するようになって一週間が過ぎた。最初の週末は二日連続で家にいたルルが大暴れして住宅が半壊した。

 しかし平日はルルが学校に通っていたので、佑も住宅も壊れずに済んだ。こうして迎えた二度目の週末なのだが……佑は、数日前からルルの「外観」に違和感を覚えていた。


「ルル……オマエに二つ、言いたいことがある」

「なーに?」


「まずその一……体重が増えたのはすごくもなんともない!」

「えぇっ、すごくないの!?」


「その二、むしろ困った事態だ」

「えっ、何でー!?」


「オマエは中学生だ。まだまだ成長期だから体重が増えることは、まぁ至極自然なことなんだが……」

「なんだ、いいんじゃないか……やったー!」

「よくない! オマエの場合はその増え方が普通じゃねぇんだよ……ルル、普通の人間は食事の回数が朝昼夜の一日三回だが……オマエは普通じゃないよな?」


 するとルルは少しムッとした顔で答えた。


「えー、ボクも朝昼夜の三回だけだよー! えーっと、朝は朝ごはんでしょ! 昼は昼ごはん……それから」

「それから?」


「夜は夕ごはん晩ごはん夜ごはん! だから一日三回……」

「五回じゃねーか!」


「あぁっ!!」

「何だよ!?」

「十時と三時と寝るまえのおやつを数えわすれた!」

「計八回じゃねーか! ってか十時のおやつって何だよ!? 学校に行ってる時間帯だよな? 食ったらダメだろ!」

「だってぇー、三時間目と四時間目の勉強がんばるためにエイヨーホキューしてるんだよー! でも食べたあとは眠くて寝ちゃうけど……」

「意味ねーじゃん! オマエは太ったらダメなんだよ!!」


 ルルは犬だったときに椎間板ヘルニアを発症したことがある。後脚が麻痺して歩けなくなってしまったのだ。

 幸い、外科手術をして奇跡的に歩けるようにはなった。だが後遺症が残ってしまい、歩き方が少し不自然になって一生を終えた。

 元々ダックスフンドは椎間板ヘルニアを発症しやすい犬種だ。予防法として、腰に負担がかかる抱き方をしない。高い所から飛び降りたり、滑りやすい床を走らせない……など。そして……


 ――腰に負荷がかかるので太らせない。


 イヌ娘のルルにも椎間板ヘルニアのリスクがある……佑は、ルルの教育係・天神(あまがみ)ブリーダから太らせないようにと言われている。

 だが親の心子知らず……イヌ娘になってもルルは食べることが大好きで、廊下を走ったり階段を飛び降りたりとやりたい放題だ。前世の反省はない。


「ルル……ダイエットするぞ!」

「何ソレおいし……」

「食い物じゃない! 運動と食事制限だ」

「えっ、ショクジセイゲンって……まさか?」

「そうだよ、そのまさかだよ!」


 するとルルは、目をキラキラさせながら言った。


「ゴハンをいくらでも食べていいの~!?」

「なぜ『食事』『制限』の間に『無』を入れた!?」


 コイツには何言ってもムダ……佑は「奥の手」を使った。


「いいかルル、オレはブリーダさんからオマエを太らせるな……と課題を与えられている。つまりオマエが太ってしまった場合……トライアル(試用)は『不合格』になってオマエは天神家に逆戻り! オレとの生活は永遠にないぞ!」


 するとルルは一気に顔が青ざめ


「やだやだっ!! たすくといっしょがいいのっ! いっしょがいいのっ!!」

「そっか、じゃあダイエットするか?」

「うんっする! ダイエット食べよー!」

「だから食いモンじゃねー!」



 ※※※※※※※



「よし! それじゃあ早速、食事制限だ……ルル、オマエは寝る前におやつを食べているよな? まずはそれを止めろ」

ふぇ()? ふっへふぁいほー(食ってないよー)!」


 佑は、ルルが咥えているアメリカンドッグを取り上げた。


「んあーっ、何すんだよ! お風呂上がりの楽しみを……」

「一般的に風呂上がりで食べるモノじゃない」

「えーっ! だってアメリカンドッグだよー! ()()()()()()()()()()()なんだからニューヨークは今八時……朝ごはんだよ!」

「アメリカのドッグフードじゃねぇし、()()()()でもねぇ!」

「あっ……()()()()()()()()

「そういうことじゃない! それとオマエは九九もまともにできないのに何で時差がすぐに計算できたんだ?」

「知らないもーん……ぱくっ!」

「あーっ、こらーっ!」


 ルルは佑が取り上げたアメリカンドッグに飛び付き、残りを食べてしまった。佑の手には棒だけが残された。


「仕方ない、ルル……運動するぞ! 今食べた分を消費しないとな」

「おやすみなさーい! ボク、風呂上がりだし……寝るよ」


 ()ごはんの後に寝るのか? という疑問を残し、ルルは自分の部屋に戻ろうと廊下に出た。佑はすかさず……


「ルル! 取ってこーい!!」


 〝ぽーんっ〟


 ボールを廊下の突き当りに向けて放り投げた。


「わーい!」


 〝ドドドドドッ〟


 ルルは本能的にボールを追いかけた。風呂上がりでゆっくりしたいとか寝たいとか運動めんどくせーという感情は全てリセットされた。


 〝ぴょーん〟〝ぱくっ〟


 〝ドドドドドッ〟


ふぁふふーっ(たすくーっ)ふぉーふ(ボール)ふぉっふぇ(とって)ふぃふぁふぉー(きたよー)


 ルルは満面の笑みで、ボールを口に咥えたまま佑の元に走ってきた。


「よーしOK、いい子いい子」


 佑はルルの頭をなで、口からボールを取り上げると、


「それっ、もう一回取ってこーい!」


 〝ぽーんっ〟


「わーい!」


 〝ドドドドドッ〟


 〝ぴょーん〟〝ぱくっ〟


 〝ドドドドドッ〟


ふぁふふーっ(たすくーっ)ふぁふぁ(また)ふぉっふぁほー(とったよー)ふふぉいふぇふぉー(すごいでしょー)

「おぉすごいすごい……それっ!」


 〝ぽーんっ〟


「わーい!」


 〝ドドドドドッ〟


 〝ぴょーん〟〝ぱくっ〟


 〝ドドドドドッ〟


ふぁふふーっ(たすくーっ)……」

「それっ!」


 〝ぽーんっ〟


「わーい!」


 〝ドドドドドッ〟


 〝ぴょーん〟〝ぱくっ〟


 〝ドドドドドッ〟


 〝ぽーんっ〟


「わーい!」


 〝ドドドドドッ〟


 ……


(あーこりゃ楽だわ)


 我ながらグッドアイデアだと佑は思った。強制させなくとも、ルルの「習性」を活かせば勝手に運動してくれるのだから。


 だが……、


「それ、ルル!」


 〝ぽーんっ〟


「あっ!」


 調子に乗った佑は、思い切り強い力でボールを投げてしまった。


「わーい!」


 〝ドドドドドッ〟


 ルルはボールに追いつこうと全力で走り、勢いで廊下の突き当りにある……


 〝ドンッ!!〟〝バキバキッ……バタンッ!〟


 納戸の扉に激突、扉は破壊されてルルは納戸に飛び込んだ。


「おっおいっルル! 大丈夫か!?」


 佑は、自分のせいでルルが激突してしまったので激しく動揺した。すると、


ふぁふふーっ(たすくーっ)! ふぉっふぁほー(とったどー)


 納戸の中からボールを口に咥え満足げな顔をしたルルが、雑巾を頭に乗せ片足をバケツに突っ込んだ状態で出てきた。


「すっすすすまんルル! きっ今日は止めよう!」


 室内で運動はやっぱ無理がある……そう思った佑は


「あっ、明日オレも休みだから……さっ、散歩に行こう!」

ふぉんふぉ(ホント)? ひゃっふぁー(やったー)!」



 ルルは、食べることの次に「散歩」が大好きなイヌ娘だ。


「ルルだよ! こわれたトビラは『神の力(ご都合主義)』ですぐになおったよー!」

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