FJC第17話「チャコちゃんだーいすき!」
「もうガマンできない……ルルちゃん! 勝負よ!」
ルルに散々からかわれたチャコはついにブチ切れた。
「チャコちゃ~ん、とれるもんならとってみな~」
ルルは釣り竿の先についているネズミのおもちゃを、チャコの目の前でチラつかせて挑発した。どうやらチャコは、このおもちゃが大好きみたいだ。
チャコは動きを止め、ルルに隙ができるタイミングをうかがっていた。ルルが少しでも隙を見せたら奪い取ってやろうという状況……猫に鰹節だ。
〝バッ!〟
チャコがジャンプしてネズミを奪いにきた! だがルルの反射神経はチャコと互角……直前で攻撃をかわす。
「このぉっ!」
チャコもあきらめない。何度も奪いにいくがその度、ルルにかわされる。取れない苛立ちとルルにからかわれた悔しさで、チャコの怒りはピークに達していた。
だがここでチャコは「奥の手」を使おうと考え、再び動きを止め体勢を立て直した。ルルはニヤニヤしながら挑発を続けている。
「ルルちゃん!」
「ん?」
チャコはルルに声をかけ気を逸らせると〝ダッ!〟とルル目がけて突進した。ルルがネズミを奪われまいと、釣り竿を持ち上げようとしたそのとき……
〝パーンッ!!〟
と、ルルの目の前で両手を強く叩いた。
「うわっ!」
ルルが驚いて目を閉じた隙に、チャコはルルからネズミを奪い取った……見事な猫だましだ。
「あーっ! チャコちゃんズルい!」
今度はルルがネズミを奪い返そうとするが、チャコはとんでもない行動に出た。
〝ヒョイッ〟
何とチャコは軽々とジャンプすると、自分の身長よりも高い洋服タンスの上に飛び乗ったのだ。そしてタンスと天井のすき間から挑発した。
「ルルちゃーん! 悔しかったらここまでおいでー」
イヌ娘のルルにそこまでのジャンプ力はない。いや……NYASUKEじゃあるまいし、普通の人間でもこれは無理だ。
「ううぅっ!」
さすがにこれではあきらめるだろう……チャコは安心していたが、
〝ガタガタッ、ガタガタッ〟
「えっ……ちょっ、ルルちゃん! 何してるの!?」
「うをぉおおっ!」
ルルは洋服タンスをゆさゆさと揺らし始めた。チャコを振り落とすつもりだ!
「ルルちゃん! マジで危ないって」
「うがぁああああっ!!」
チャコが乗ったタンスが大きく揺れている……と、次の瞬間、
〝グラッ〟
「きゃっ!!」
〝ドッシーン!〟
「……っと!」
タンスが倒れた。チャコはすんでのところでベッドに飛び移り、すぐさまルルの部屋から脱出した。
「逃がすかっ!」
→〝ドドドドドッ!〟↓
〝! 〝ド
ッ ド
ド ド
ド ド
ド ド
ド ッ
ド〟 !〟
↑〝!ッドドドドド〟←
ルルとチャコの追いかけっこは無限に続くと思われたが……
「ハァハァハァハァ……」
「さっさすがに……疲れた」
〝〝グゥウウウウッ!〟〟
「……」
二人のお腹が同時に鳴り一時中断。
「チャコちゃん、おなかすいたー!」
「じ、じゃあピザでも頼む?」
チャコは、スマホアプリからピザを注文することにした。
「ルルちゃん、どれがいい?」
「んーと、マルゲリータ!」
「えっ? 猫も杓子も注文する定番よ! あと、肉が入ってない……」
「じゃいらない! このアンチョビは? 魚だよね……ボク、魚好きだよ」
「いいけどねー……ココのはしょっぱすぎるのよ、塩分摂りすぎ!」
「じゃあガーリック……」
「ニンニクよ……食べられる?」
「ムリ」
二人は食べられない物が多すぎるため、注文が猫の目のようにコロコロ変わり、すぐには決められない。
「もういいや……ピザはこれでOK! サイドメニューはどうする?」
「みそ汁!」
「無いわよ! 何でそんな物を……」
「だってチャコちゃん、ゴハンには何でもみそ汁ぶっかけて食べるんじゃ……」
「ねこまんまなんてしないわよ! ピザにみそ汁かけるトリッキーな発想ないし、そもそも私は猫舌だから熱いみそ汁はダメなの」
「じゃあ冷たいみそ汁……」
「どっちも無い! もう……これにするよ!」
なんやかんやで注文完了!
「じゃあ……戦闘再開!」
〝ピョーンッ〟
「チャコちゃん! ネズミ返せー!」
〝グラグラッ……ドッシーン!〟
チャコがタンスや食器棚の上に飛び乗り、ルルが倒す……。あちこちの部屋で同じことを繰り返したので家じゅうの家具が倒され、足の踏み場が無くなってしまった。ルルが移動できる場所は猫の額ほどしかない。
〝ピンポーン!〟
「ピザだ! ルルちゃんもおいで!」
「え? ちょっ待って! 越えられない……」
チャコは倒れた家具の上をピョンピョンと乗り越え玄関に向かった。
〝ガチャッ〟
「お待たせしましたー! テリヤキチキンピザのオニオン抜きとシーフードピザのガーリック抜きハーフ&ハーフでーす! あとこちらはサイドメニューのフライドチキンでーす!」
「あっどうも……おいくらですか?」
「二,二二二円でーす!」
「あっはい……ちょっルルちゃん遅いよ! 早く財布貸して」
ルルは、あらかじめ佑から「お昼代」として財布を預かっていた。
「えー、やだよー」
「何で!? 佑さんから財布預かってるでしょ……まさかルルちゃん! ネコババするつもり?」
「だってー、たすくからこれは食べ物を買う時に使えって……」
「今がその時! 早くよこせっ!」
チャコはルルから財布を奪い、ピザ代を支払おうとしたが……
「ったく、ルルが財布持っても猫に小判よ……あっ」
財布の中に小銭が二二〇円しかないことに気が付いた。
(あぁ、あと二円あればなぁー!)
するとチャコは
「ねぇ~お兄さぁ~ん、一円玉がないんだけどぉ~……まけてもらえな~い?」
猫なで声を使って値切ろうとした。
「えぇっと……ムリでーす!」
「ですよね……はぃ」
チャコは渋々、千円札を三枚渡した。
※※※※※※※
二人は倒れた家具の上でピザを食べている。
「あぁ、おいしかったぁー!」
「おいしかったねールルちゃ……あれ?」
だが突然ルルの姿が消え、同時にネズミのおもちゃも姿を消した。
「あーっ! いつの間に?」
ルルはチャコからネズミをこっそり奪うと、一目散に自分の部屋へ逃げたのだ。
「ルルちゃん!」
チャコが部屋へ乗り込むと、ベッドの上に座ったルルは再びネズミをチャコの目の前にチラつかせた。
「このぉ!」
怒ったチャコが飛びついた。だが飛びついたのはネズミではなく、ベッドに座ったルルの方だった。ルルに飛び乗り、押さえつけたチャコは
「この卑怯者ー!」
「フーンだ! 気をぬいたチャコちゃんがわるいー」
「許さん!」
右手を横から思いきり振ってルルに殴りかかる……猫パンチだ。するとルルは、
〝カプッ〟
「痛い!」
チャコの腕に噛みついた。窮鼠猫を嚙む……もとい、窮ルルチャコを嚙む。
「やったなぁー!」
「そっちこそ!」
チャコはルルに覆いかぶさり、ルルはチャコの両腕を掴んで離さない……まさにキャットファイト寸前! ところが、
「……ぷぷっ」
「……ふふふっ」
「「アハハハハッ」」
2人は突然笑い出した。
「あはっ! ボク、チャコちゃんだーいすき!」
「私も! ルルちゃんといると楽しーい!」
元々仲良しのルルとチャコ……単にじゃれ合っていただけだ。2人はベッドで抱き合うと……
「zzzzz」
そのまま寝てしまい……日が暮れた。
※※※※※※※
「で……どういうことかな? これは」
仕事から帰ってきた佑が玄関で仁王立ちしていた。その前でルルとチャコが、まるで借りてきた猫のように大人しくうなだれたまま正座している。
佑の家は再び半壊状態になっていた。二日連続の同じ結末に佑はあきれ返り、作者は頭を抱えた。
「とりあえず片付けてね……二人で!」
「く、くぅ~ん」
「ふ、ふにゃぁ!」
もうおわかりだろう……このチャコという女子中学生、実は人間になりたい猫が生まれ変わった『ネコ娘』である……妖怪ではない。
だがここで疑問が残る。最初、佑に会ったときは完全に人間の振る舞いをしていた……なぜあのときネコの本性を出さなかったのか?
それは彼女が「猫を被っていた」からである。
※※※※※※※
ルルとチャコは倒れた家具を起こしていた。
「チャコちゃーん……これ、終わりそうにないね?」
「んもうっ、猫の手も借りたーーい!!」
「ルルだよ! 本文から猫を何匹見つけたかな!? まだまだ続くよー!」




