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FJC第15話「チャコちゃんだよー!」

 日曜日の朝……


「いいか! また昨日のようなことをやったら、今度こそ追い出すからな!」

「くぅ~ん」


 神の力(ご都合主義)によって復元されたダイニングで、ルルが(たすく)に説教されていた。昨日、佑が仕事に行っている間の留守番を引き受けたルルは、なんやかんやで家を半壊状態にしてしまったのだ。


「まぁ……今日はオマエの友だちが来るみたいだから大丈夫だと思うが……」

「ダイジョウブじゃな~い! 何でボクの朝ごはんこれだけ?」


 朝食の時間、佑の席にはトーストとコーヒーが置かれていたが、ルルのお皿の上には低カロリーの骨型ガムが一個置かれていただけだった。


「当たり前だ! オマエ昨日は朝食以外にプリン二人分と昼食を二倍以上と雁坂さんからもらった肉じゃがとゆで卵食ったろーが! もはや食い過ぎの範ちゅうを超えてるわ!」

「へぇー、ふへはふぁほはへんひふぉふぁふふぁ……」

「ルル、一旦そのガムを口から出してしゃべれ!」

「えぇー、ゆで卵は()()()のヤツが食っちゃったし、それに肉じゃがはたすくの分もちゃんと取っておいたもーん!」

「オマエ何、電子レンジを兄弟みたいな呼び方してんだよ! それに自分が食えない玉ねぎ()()残した行為を『取っておいた』とは言わねーんだよ!」


「きゅぅ~ん」


 佑に論破され、ぐうの音も出ないルルは「きゅぅ~ん」と鳴いた。


「そういえば今日来る友だちって……この前公園で会った子だっけ?」

「うん、チャコちゃんだよー! チャコちゃんのホントの名まえは……」


 ルルがそう言いかけたとき


 〝ピンポーン!〟


 玄関のチャイムが鳴った。


「あっ、チャコちゃんだー!」

「えっ? ずいぶん早いな」


 チャイムを聞くやいなや、ルルは玄関へまっしぐらに向かって行った。


 〝ガチャッ〟


「ひゃふぉひゃんふぉふぁひょー」

「ルルちゃん、一旦そのガムを口から出してしゃべって!」


 玄関先にいたのは、茶髪に黒のメッシュがしま模様に入った女子中学生(JC)だ。



 ※※※※※※※



「ええっと、君はこの間の……」

和戸(わと) 佑さんですね? 先日はちゃんとご挨拶できなくてすみませんでした」


 この女子中学生(JC)……佑と初対面ではない。二日前に公園で佑がルルと初めて会ったとき、飛びついたルルを引きはがしてくれた少女だ。


「私はルルさんと同じクラスの青葉 久子と言います。本日はお邪魔させていただきます。これはほんの気持ちですが、よろしければお召し上がりください」

「えっ? あぁ、わざわざすみません」

「あのねー、久子だからチャコちゃんだよー」


 久子ことチャコは、初めて佑の家に遊びに来たので菓子折りのようなものを手土産に持ってきたのだ。


(ずいぶん大人びた中学生だなぁ……ルルとは大違いだ)


 佑はそう思いながら


「どうぞ、お上がりください」

「あっ……お邪魔します」


 佑はチャコを家に上げてリビングに案内した。お茶を入れて先ほど頂いた菓子折り、つまり「おもたせ」を出そうとしたのだが……箱を開けると、中身は「かつお節の詰合せ」だった。


 これじゃお茶菓子にできない……佑はルルを呼んだ。


「いいかルル……オレは今から仕事に行くが、冷蔵庫にシュークリームが買い置きしてある。後であの子にちゃんともてなしてやれよ……ひとりで食べるなよ!」

「だいじょうぶ! たすくの分を食べ……」

「そう言うと思ってオレは昨夜のうちに食った」

「きゃいん!」

「二個あるから……ちゃんとあの子にもあげろよ」

「うん、それはだいじょうぶ! チャコちゃんの分はとっておくよ」


 ルル(こいつ)にしてはずいぶん物分かりがいい……何かウラがあるのでは? と佑は思ったが、急いでいたのでチャコに「ごゆっくり」と挨拶だけして家を出た。



 ※※※※※※※



 佑が出かけてすぐ、ルルは佑に代わって麦茶とシュークリームを用意し、リビングで待つチャコに出そうとしていた。

 昨日は佑の分のプリンまで速攻で食べてしまったルルだが、今日はチャコの分を出そうとしている。昨日のことを反省したのか? それとも友だち思いなのか?


「ふっふっふ、たすく……考えがこのシュークリームなみに甘いよ! チャコちゃんは牛乳が苦手だから生クリームが食べられないんだよ~、なのでコレはボクのところに回ってくるんだよん♪」


 違った……やはりウラがあった。


 イヌは乳糖を分解する能力が低いので、乳糖の多い牛乳は与えない方がいいと言われている。だがルルは、乳製品を摂ってもお腹が緩くなることがない……むしろ大好物である。

 シュークリームは中にホイップクリームが詰まったタイプだ。佑の言いつけを守り、なおかつチャコが食べられないことを知っていた上であえて出す。で、食べられないと言って残したシュークリームを堂々と食べようという魂胆……お腹は緩くならないどころかメッチャ黒い。


「チャコちゃ~ん! たすくがね、チャコちゃんにお菓子買ってきたよ」

「あら、ありがとう」


「はいっ、シュークリームだ・け・ど!」


 と言うとルルは、ドヤ顔で麦茶とシュークリームをテーブルの上に置いた。


 ふっふっふ、食べられるものなら食べてみろ! ムリだよね~チャコちゃんは牛乳を使ったモノが苦手だもんね~さぁ! そのシュークリームはボクのモノになるのだぁ~さぁよこせ! と腹黒イヌ娘が期待に胸を膨らませていると……


「いただきまーす!」


 チャコはシュークリームが入った袋を開けると、何の躊躇もなく食べはじめた。


「ぱくっ……うーん、美味しい」

「がーん! なっななな何で!?」

「えっ、どうしたの?」

「だっだだだだってチャコちゃん……牛乳ダメじゃなかったっけ?」


 ルルの言葉を聞いたチャコは、シュークリームの入っていた袋をルルにそっと見せた。そこには……


()()でつくったシュークリーム』


 と書かれていた。チャコは乳製品が苦手だが、豆乳は平気である。


「うがぁー!」

「えっ何? 私が牛乳ダメなの知っててワザと出したってこと?」

「いっいやそういうワケじゃ……ひゅ~♪ ひゅ~♪」


 ルルは吹けない口笛を吹いてごまかそうとした。


「ルルちゃん!」

「……ん? んんん??」


 ルルの目は完全に泳いでいた。


「昨日、私がこの家に『明日、伺います』って電話したの知ってた?」

「……えっ?」

「佑さんと話したんだけど……そのとき佑さんに携帯番号教えてもらってニャイン交換もしたんだよね~」

「……へっ?」

「で、私が牛乳ダメって言ったら、ルルちゃんはそういう悪だくみしそうだっていう話になって……ワナを仕掛けておいたんだよねぇ~」

「……なっ?」

「見事に引っ掛かったよね~ルルちゃん!」


 策士策に溺れる……ルルの悪だくみは完全に読まれていた。


「うがぁー! だましたぬぁー!」

「だまそうとしたのはどっち? 私が牛乳ダメなの見越して二個食べようとしたんでしょ?」

「うぅっ……」


 バツが悪くなったルルはその場から逃げようとした。チャコはすかさずルルの襟首を掴むと、顔を近付けて圧をかけながら言った。


「あっそうそう、佑さんからもうひとつお願いされたことがあるの……」

「……おっ?」


「ルルがちゃんと宿題をやるように見張っててくれ……だって」


「……やっ!」


 襟首を掴まれたままルルはバタバタともがいていた。


「さっルルちゃん、部屋に行くよ」

「やだやだぁ~! 今日は遊ぶんだも~ん! 遊ぶんだも~ん!」

「しょうがないわねぇ……ルル! ハイこれ」

「わぁ! たまごボーロだぁ」

「いい? 部屋までちゃんとついてきたらあげるからね……ハウス!」

「わん!」


 第二話から進歩のないルルは、チャコの誘導で部屋に連れていかれた。

「さいごまで読んでくれてありがとー! 次回はチャコちゃんのヒミツだよー!」

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