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FJC第13話「立ち去れーっ!!」

「あー、よく寝た」


 リビングのソファーで寝ていたルルが目を覚ました。もちろんダイニングテーブルの上にあるプリンの空容器はそのままだ。


 ルルは人間と犬、両方の特徴を持った「イヌ娘」だ。人間になって飼い主と一緒に過ごしたいという強い願いにより生まれ変わったルルは、人間の生活に合わせていかなければならない。

 彼女は十三歳、人間の世界では中学生だ。つまり……


 ――勉強をしなければいけない。


 もちろんこの週末も学校から宿題が与えられている。リビングのソファーで寝ていた彼女が起きてから最初にとった行動が……


「ゴハン食ーべよっ!」


 ルルは、同じように人間になろうと生まれ変わった「イヌ息子」「イヌ娘」たちを教育している神の使い・天神家の試練をギリの成績で合格し、かろうじて人間社会に出ることを許された「(バカ)イヌ娘」だ。自主的に勉強しようという考えなど一ミリもない。


 だが、こんな彼女にも得意なものがある。


「ま、明日チャコちゃんが来るから……宿題丸写しすりゃいいもんねー!」


 悪知恵だ。これだけは一流である。


「ゴハンゴハン……あった、ここだ」


 ルルは台所から自分の分のご飯=ドッグフードの袋と計量カップを用意した。


「ええっと、この線までだよね……これ以上入れるとたすくにおこられちゃう」


 ルルは太りやすいのでドッグフードの分量を厳しく制限されている。ドックフードが入った袋を傾け計量カップに移す。


 〝ザザザザッ〟


 そのとき


「あっ!」


 〝ガシャン〟〝ザザーッ〟


 計量カップが倒れて中身がテーブルの上こぼれてしまった。


「あぁっ、どうしよぉ……まぁでも、とりあえず量りなおそう」


 こぼれたフードは無視して計量し直した。


「よしっ、これでオッケー! でも……」


 ルルはテーブルの上にこぼれたフードが気になった。


「これ、もったいないなぁ……よし、入れちゃえ!」


 ルルは決められた量のドッグフードを皿に盛ると、テーブルの上にこぼれたフードも追加した。結局、いつもの倍以上のドッグフードが皿に盛りつけられた。


「いただきまーす!」


 ……食いやがった。


「あ、でもこれは多いかなぁ……ま、でも晩ゴハンで減らせばいっか!」


 間違いなく夕食時には忘れているだろう。だが、これに関してはイヌ娘のルルに限らず、「ダイエットは明日から」を()()言い続けている人間も相当数いるので責めることはできない。


「あっそうだ、ふりかけかーけよっ♪」


 ルルはイヌ娘になってから、ドッグフードにかつお節やチーズ味のふりかけをかけて食べるのが好きになった。少し味の濃いものを好むようになってきたらしい。


「ごちそうさまでしたー! さてと……寝よ」


 これは決して手抜きをして書いているワケではない。基本的にルルの日常は


『食べて』

『寝る』


 の繰り返しである。


 ルルは今度はリビングのソファーではなく、自分の部屋に移動した。寝る場所はそのときの状況で一番快適な場所を探して寝るのだ。

 自分の部屋のベッドに入りぬいぐるみの「へちまる」を抱き、咬みつきながら寝た。この「へちまる」は犬だったときのルルが一番気に入ってたオモチャで、ルルが死んだときに一緒に火葬された。ルルがイヌ娘に生まれ変わったとき、人間の姿に合わせて大きくしてもらい神様から与えられたものだ。


 ルルが寝てしばらくすると


 〝ピーンポーン!〟


 玄関のチャイムが鳴った。


 〝ガバッ!〟


 ルルはすぐに飛び起き


「あっ、たすくだ! たすくが帰ってきたぁー!」


 大喜びで玄関まで走っていくと


「こんにちはー、宅配便でーす」


 〝キキーッ!〟


 玄関前で急ブレーキをかけたルルが大きな声で


「たっ……たすくじゃない! だれだ! オマエはだれだ!?」

「あっ、宅配便でーす! お荷物をお届けに上がりましたー」


 意外にもルルは人見知りだ。しかも留守番=家を守る、と思い込んでいるため


「ここはボクとたすくの大事な(ナワバリ)だ! オマエはこの(ナワバリ)に攻め込んできた侵略者だな!?」

「えっ……えっ?」


 宅配便のお兄さんは玄関ドアの向こうで困惑していた。


「侵略者めっ! 追い出してやるぅ!」


 ルルはそう叫ぶと佑の部屋に入っていった。そして部屋の中から佑が中学校時代に使っていた金属バットを持ち出すと再び玄関ドアに向かっていった。


 〝ガチャン!〟〝バキバキッ!〟


 バットをブンブン振り回しながら向かったので廊下の周りにある物が次々と破壊された。花瓶は割れ、壁に穴が開いた。


「うぉおおおおっ!!」


 〝ガンガンガンッ!!〟


 興奮したルルは金属バットで玄関ドアを激しく叩いた。


「立ち去れーっ!! ここはボクとたすくの(ナワバリ)だー! 立ち去れーっ!!」

「ひっひえぇええ!」


 あまりの出来事に宅配便のお兄さんは恐怖を感じ


「な……何だったんだアレは?」


 不在連絡票を郵便受けに入れ、そのまま去っていった。


「よしっ、ちゃんとおるすばんできた! たすく、ほめてくれるかな?」


 どうやらお留守番=番犬のことだと思いこんでいるようだ。ルルが安心してリビングに戻ろうとしたとき


 〝ピーンポーン!〟


「ひぃっ!!」


 ルルのツインテールがブワッと逆立った。今度は玄関の向こうに上品そうな老婦人が二人立っていた。


「こんにちは、神の存在について少々お話させてくださいませ」

「うがぁあああっ! 何が神だ! 神さまがボクたちの(ナワバリ)に攻めてくるワケないだろぉおおおっ! 立ち去れぇえええっ!!」


 〝ガンガンガンッ!!〟


 ルルは玄関に向かうと再び金属バットでドアを激しく叩いた。


「ひっ、ひぃいいっ! こっこの家には悪魔がおりますわぁー」


 と叫んで老婦人たちは布教のパンフレットを郵便受けに入れ、逃げるように去っていった。


「はぁ、はぁ……ボクとたすくの(ナワバリ)に近づいたらゆるさんぞぉ」


 殺気立ったルルがようやく我を取り戻してリビングに向かうと、またしても


 〝ピーンポーン!〟


「うがぁあああっ!」

「こんにちはー! 新聞はどこか購読されて……」


 〝ガンガンガンッ!!〟


「新聞は食べたことあるけどおいしくなーい!」

「いや食べ物じゃないってー!」


 〝ピーンポーン!〟


「こんにちはー、リフォーム……」


 〝ガンガンガンッ!!〟


「なんということでしょおおおおっ!」

「うわっ、これは玄関ドアからリフォームが必要だぁ!」


 〝ピーンポーン!〟


「こんにちはー、NH……」

「ぶっ壊す!!」


 〝ガンガンガンガンッ!!〟


 〝ガンガンガンッ!!〟


 〝ガンガンッ……〟




「はぁ、はぁ……なっなんでこんなに侵略者が多いの?」


 ルルが散々金属バットを振り回していたので下駄箱や傘立て、その他玄関にあった物は全てメチャクチャに破壊されていた。


「さっさすがに疲れたよぉ……寝よ」


 フラフラになりながら自分の部屋に戻ろうとしたとき


 〝ピーンポーン!〟


「いいかげんに……あっ!?」


 再び金属バットを握って玄関に向かおうとしたルルの動きがピタッと止んだ。


「クンクン……こっこれは!?」


 玄関から漂ってきたかすかなニオイを嗅いだルルの目が輝いた。そしてバットを投げ捨てると一目散に玄関へ駆け寄った。尻尾はないのになぜか尻尾を振っているように見える。


「ルルちゃん、いる?」

「あっ、かりさかのおばちゃん! こんにちは!」


 ドアの向こうで立っているのは隣に住む雁坂さんだ。ルルが天神家と通じる「いつでもドア」を使ってこの家から通学していた頃から知っている。


 ――彼女は一体、何しに来たのだろうか?


 ――騒がしいのでクレームなのだろうか? それとも……



 謎が謎を呼ぶルルのお留守番、次回最終章!






 ……いや、そんな大げさな話ではない。


「さいごまで読んでくれてありがとー! 次回はたすくが帰ってくるよ!」

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