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FJC第10話「ふんふんふん♪」

「たすくー!」

「うわぁああああああああああ!!」


 (たすく)が風呂に入っていると、リビングのソファーで寝ていたはずのルルが突然、全裸になって入ってきた。


「オッオオマエ何やってんだ!! 服着ろ服! ってか何で入ってきたんだ!?」


 佑はパニックになっていた。無理もない、いくらルルが佑の飼い犬だったとはいえ今は姿が人間の「イヌ娘」だ。しかも十三歳の女子中学生(JC)……一緒に風呂に入るなどという行為は、少なくとも銭湯では完全にアウトな年齢である。


「えっ何で? いつもシャンプーしてくれたじゃん! たすく! また前みたいにシャンプーしてよ!」

「シ……シャンプーだと?」


 そう、佑は小学校三年くらいのときから父親に代わってルル(犬)のシャンプーを担当していた。ルルは佑と散歩しているときや遊んでいるときと同じくらい、佑にシャンプーしてもらっている時間が好きだったのだ。


「うん、シャンプーして!」


「あ……あぁ、わか……ったよ」


 佑はルルを風呂イスに座らせると背中の方に立ちシャワーヘッドを手にした。すでにルルはツインテールに縛り上げていたヘアゴムを外していた。ルルの髪は黒に灰色っぽい白が混じったまだら模様でインナーカラーに茶色が入っている。


「そういえばルル、この髪の毛の色って……」

「あのね! シルバーダップルっていうんだよ!」


(やっぱり……)


 佑はその言葉に聞き覚えがあった。実はルル(犬)はシルバーダップルという変わった毛色だったのだ。これはダックスフンドにしかない特殊な色だ。

 だが見た目で犬のルルと共通しているのは髪色だけだ。人間になり切れない「イヌ娘」というが、尻尾は生えてないしイヌ耳でもない。ましてや全身が体毛で覆われているワケでもなく目の前にいるのはどう見ても全裸の少女だ。


(うわぁ……やりづれぇ)


 だが今さら後には引けない。相手は元飼い犬(ペット)だ……佑は自分にそう言い聞かせてルルの髪を洗ってやることにした。


「ふんふんふん♪」


 ルルは久しぶりにご主人様からシャンプーしてもらえるのでご機嫌で鼻歌を歌っていた。佑はシャワーの蛇口をひねるとルルの頭にお湯を掛けた。


 〝バシャッ〟


「ぷあっ!!」


 鼻歌を歌ってご機嫌だったルルはいきなり頭にお湯を掛けられ驚いた。


「たすく! 何すんだよぉー! 顔にお湯かけられるのはニガテだよぉー」

「いやだって、シャンプーって言ったら髪の毛だろ……そりゃ顔も濡れるだろ?」

「あっそっかぁ、犬のときは全身だったから……そういや今は髪の毛だけかぁー」

「オマエもう十三年もイヌ娘やってんだろ」

「そうだね忘れてた……てへっ」


 佑はシャンプーを手に取るとルルの髪を洗い始めた。犬のルルと別れて十三年、まさかこんな形で再び()()? を洗ってやるとは夢にも思わなかった。


「そっかぁ頭だけかぁ……たすくにおなかゴシゴシしてもらうの楽しみにしてたのに……あれとっても気持ちよかったんだよ! たすく! おなかもゴシゴ……」

「それは自分でやれ!」

「えー何でー?」


 何でって……今の姿でそれをやったら完全に「事案(わいせつ行為)」だ。長居するとロクなことにはならないと感じた佑は、早くルルのシャンプーを済ませることにした。


「はいよ、すすぎ終わったぞ!」

「ありがと、たすく! うれしかったよ」

「あぁ、じゃあ次からは自分でやれよ」

「えぇー、けちー」

「当たり前だ! オマエ人間(イヌ娘)になったんだから自分で出来るだろ?」

「くぅ~ん」

「くぅ~んじゃねーよ! オレは先に上がるけどオマエはもう少……」


 と言いかけたとき


 〝ブルブルブルブルブルブルルルッ!〟


 突然、ルルがものすごい勢いで全身を高速に振った。ルルの髪に付いていた水分が一気に風呂中に飛び散った。


「……」


 風呂から上がって体を拭き終わった佑は、もう一度体を拭き直した。



 ※※※※※※※



「で、さっき何を言おうとしてたの? たすく!」


 体を拭き直した佑は、再びルルに「ブルブル」をされないようすぐに浴室の扉を閉め、ドライヤーで髪を乾かしていた。


「あぁ、ルルはもう少し風呂に入っていいよって」


 すると


「えっ……でも……これ、ボクが入ってもいいの?」


 ルルが困惑したような言い方をしていた。


(あっ……そうか!)


 佑はあることに気がついた。犬だったときのルルは湯船に入らせてもらえなかったのだ。ルル(犬)は長毛の毛質だった。湯船が抜毛だらけになるのが心配で、いつも専用のたらいに入れていたのだ。


「いいよ別に」


 〝ガラガラッ〟


 すると浴室の扉が開き、目を輝かせたルルが佑の方を見つめた。


「えっホント!?」

「あぁ、もうオマエは犬じゃなく見た目は人間なんだから……少しでも人間らしい行動しなきゃな」

「わーい、やったぁ!」


 〝バッシャーン! バチャッバチャッ……〟


 そう叫ぶや否や、ルルは浴室の扉を開けっぱなしで湯船にダイブした。


「こらー飛び込むなぁー!! それと、()()()するなぁー!!」


 跳ね返ったお湯が頭にかかった佑は、洗面台で再び髪を乾かし直した。



 ※※※※※※※



 ルルが湯船に入っている間、佑はあることが気になっていた。


(そういやコイツ、着替え持ってきたのか?)


 脱衣所を見回すと……セーラー服と下着が床に脱ぎ捨てられていた。イヌ娘たちが人間になるために与えられた試練は、人として最低限の常識と教養を身につけること。そこでルルは落第点ギリギリだったらしいが……


(落第点ってどんだけの低レベルだったんだ?)


 佑は呆れかえっていた。


「あれっ? そういやルルの部屋はどこだ?」


 案の定ルルは着替えを持ってきていなかった。スウェットに着替えた佑はルルの下着とパジャマを探しに部屋へ向かった。

 天神(あまがみ)家の執事・飯田が、ルルの荷物は移動済み……と言っていたのでどこかにあるのだろうが、ルルの部屋は決めていなかったので片っ端から扉を開けてルルの部屋を探してみた。

 ちなみに佑の部屋は、場所も室内の様子も十三年前の中学時代と同じだった。懐かしいと思う反面、学生服とか明らかに現在では使わない物も多数存在していたので余計な仕事(片づけ)が増えることは目に見えていた。


(うわぁ~めんどくせぇ! で、ルルの部屋は……)


 〝ガチャッ〟


「……ここかぃ!」


 佑の部屋の隣、以前は佑の両親が寝室として使っていた部屋がルルの部屋にあてがわれていた。佑の部屋よりも確実に広い。いかにも年頃の女子の部屋……といった感じだが、床にボールが転がっているのとベッドの上に置かれたぬいぐるみがかなりボロボロになっているのが気になった。


(ま、しょうがねぇか……)


 佑はルルの部屋のタンスから下着とパジャマを取り出し、そのまま浴室に戻ろうと部屋を出たそのとき、


「ねぇたすくー! 何でいなくなっちゃったのー!」

「うわぁああああっ! おまっ何でいるんだよ!?」


 目の前に全裸で全身ずぶ濡れになったルルがいた。


「急にいなくなっちゃうんだもん! さびしかったよぉー」

「オマエの着替えを取りに来たんだよ! ってか全身びしょ濡れじゃねーか! あぁーもう、床がビショビショだぁー!」

「あぁこれ? だいじょうぶだよ……何度か水切りしたから」


 と言うとルルは


 〝ブルブルブルブルブルブルルルッ!〟


 再び、ものすごい勢いで全身を高速に振った。廊下全体に水滴が飛び散った。


「……」


 佑はルルを脱衣所に連れていき、バスタオルで全身を拭くのとドライヤーで髪を乾かすのをルル自身にやらせた。佑はその間、びしょ濡れになった廊下を全て拭き掃除した後に……もう一度着替えて顔を洗い直した。

「ルルだよ! さいごまで読んでくれてありがとー! まだまだ続くよ!」

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