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竜と呪いの千回紀  作者: 稲荷竜
六章 静謐の時代

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第78話 制約3

「『人の機能』に手を入れるべきか、否か」


 始祖竜(オリジン)たちはまずそこを議題にしたらしい。


 つまり、『精霊を見る目』を奪ってしまえば、人はどうあがいても魔術を使うルートに入らず……

 魔術に端を発したこれまでのような失敗は起こらないのではないか━━ということだ。


 しかし、それは半数の竜が拒絶した。


「『人類』そのものをいじった(・・・・)時、我らが人格を維持するためのエネルギーが生まれるかどうか、わからない。霊長(ひと)の機能をいじるのは最後の手段にするべきだろう」


 そう述べたのは【解析】で、彼女には数々の前科があるため、魔術関係における彼女の意見は、とりあえずみんなが白い目で見た。

 しかし述べていることはまったくの正論であり、『【解析】が言うから』というだけでその反対を支持しようというのは、あまりにも冒険的すぎたのだった。


 始祖竜たちは何度でもやり直せるので失敗を恐れない。


 が、彼女たちにも『取り返しがつかないかもしれない』という危機感をもたらす変化というものがあって、それは『人類の機能そのものに手を入れること』なのだった。


 現代人の多くが自分たちの利用しているエネルギーのメカニズムを真の意味で解明できていないのと同様、始祖竜たちもまた、すべてを知るわけではない。


 彼女らにあるのは、彼女らの体験による集積知なのだ。


 自分たちが霊長の発生させる感情、そこから生まれる精霊というものを消費することにより人格を維持するエネルギーを得られることはわかっているが……

 その精霊発生のメカニズムを完全には解き明かしていない。


 発生源である霊長、すなわち人類の機能に下手に手を入れると、精霊が発生しなくなるのではないか? という恐れがあった。

 個人レベルではともかく、種族まるごとというのは、二の足を踏む。


 もしも精霊が発生せず、自分たちが人格を維持するためのエネルギーを得られなければ、こうして世界初期化後に『次なる世界』のための変化をどうするかと話し合うこともできない。


 そもそも、世界を初期化するかどうかの判定を下すのは【虚無】の人格(・・)なのだ。


 最悪、竜のいない世界がそのまま続くことになる。


 彼女たちの目的はあくまでも『自分たちの住み良い世界』を存続させることだ。


 完全消滅につながりかねない選択肢など、とるとしても最後の最後であり……

 この時点で彼女たちは、自分たちに『最後の最後』なんていうものが来るとは、ほとんど(・・・・)誰も思っていなかった。


「とりあえず、世界をまた一つの大陸にして我らが順繰りバトンタッチしながら統治するように戻すか……【変貌】と【編纂】を遠ざけませんか?」


【静謐】はことさら【変貌】【編纂】を隣り合わせることに危機感を抱いているようだったが……

 前回周回においてこの二人の位置関係が世界滅亡にさほどつながらなかったのもあり、その意見は取り置かれた。


 ……こうして、世界にはまた一つ、制限が追加されることになる。


 世界はまた、現実的に(つまらなく)なっていったのだった。

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