悪役令嬢を思う手紙
よう、俺だ。
お前ら元気してるか?
いつも手紙には名前を書けってうるさいよな。
どうでもいいか。
いきなりなんだって思うけど、ぶっちゃけさせてもらうぜ!
この世界は実は、ゲームの世界なんだ!
っていっても面食らうだろうから、もうちょっとオブラートにつつむんでみるか。
まあ、あれだ。
この世界は、前世の俺にとっては物語の中の世界だったって言いたい。
お前達に自覚はないんだろうけど、この世界はとある乙女ゲームとして、多くの人に親しまれてきた事がある。
で、この手紙を送ったお前達は、そのゲームの登場人物だったんだわ。
びっくりするよな!
俺もついさっき記憶が戻ったばかりで混乱してる!
でも、そうながながと戸惑ってもいられねーんだわ。
時間がねぇもんな。
あの女について、頼みたい事がある!
お前達の大事なマドンナを貶めた奴。
分かるだろ。
しょうもない事の濡れ衣を着せてきたり、悪口を言ってきたりするあの高飛車・天狗鼻・縦ロールの女、おほほ令嬢だよ!
あっ、おほほ令嬢って言ってるのは俺だけだったか。
ともかく、そのおほほ令嬢を助けてやってくれ!
婚約パーティーで、マドンナとお前達をはめようとしたのに、ものの見事に玉砕して婚約破棄されたのは記憶に新しい事だけど、まっ水に流してやってくんねぇかな?
婚約破棄後に、はんかち噛みながらマドンナ突き落とそうとしたことも、ちょっと脇にどけておけ。
実はあいつちょっと邪神に呪われてるみたいなんだわ。
それで、なんか嫉妬にかられて暴走してたみたいでさ。
ちょっとかわいそうだろ?
それでなくても、このまま国外追放して野に放つとまずい。
乙女ゲーム2のシナリオに突入しちゃって、お前らとマドンナの絆は深まるけど、その他大勢がとんでもない目に逢おうんだよ。
邪神のせいで、他国が傾く事になりかねないんだわ。
だから、さ。
助けてやってくんねぇかな?
あのおほほ令嬢、根は悪い奴じゃないと思うんだよ。
マドンナに向ける優しさを、ちょっとだけでいいからあのおほほ女にも向けてやってくれ。
俺の頭で良いなら、いくらでも下げてやる。
だから、頼む!
集合場所は、乙女ゲームのラストシーン、じゃ分かんねぇか。
あの舞踏会でな。
待ってるぜ。