お嬢様、クビでございます。
【 四方堂家 】
白鳥家と同じく和国、国政12長の一席を持つ名家。白鳥家と並ぶ和国有数の古来からの一族。
四方堂家は一般の能力者と違い後天的に目覚める能力は一切持たず、血によってのみ受け継がれる能力を持つ一族。
”知”の能力に長けており歴代の和国皇王の補佐として名高い地位を築き続けてきた。
白鳥家と同じ国政12長の一席だが白鳥家の財力とは天と地ほどの差があり、歴代の白鳥家の当主は度たび四方堂家に助けられてきたと言われている。
和国に海外の貴賓などを招く際には四方堂家の敷地内に滞在してもらうことになっているため、彼らを飽きさせないように敷地内にショッピングモールや映画館、ジムが併設されている。
そしてそれら全ての施設の運営とスタッフをメイドが担っている。
それゆえ四方堂家が雇っているメイドは約1200人と飛びぬけている。
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30分も前に起きたにも関わらず結局アヤメは遅刻をし、出勤と同時に四方堂家ハウスキーパーのマイアの部屋に呼び出さた。
マイアの部屋は落ち着いたベージュをメインに古風なインテリアで統一されていた。部屋は西洋の古城の一室のような雰囲気をかもしだし、40畳ほどの部屋の床は深みのある濃いめの赤のカーペットで覆われていた。部屋の中央には重圧を感じさせる大きな木目の深い色の木の机。その机の後ろの壁一面は本棚となっていてこの部屋の主である冷宮マイアの本が隙間なく置かれていた。
それらがシャレの一つ言えないような無言のプレッシャーを作り出す。
それを背にマイアはいつもと変わらないクールフェイスで机の上の書類に目を通していた。
「今日も遅刻ですわ。さすがにホワイトウィング、昨日言ったとおり”ク・ビ”ですわ」
マイアは机の上の書類に目を通しながら顔色一つ変えずにクビを言い渡す。それに対してアヤメは無言で返す。
「ホワイトウィング?お返事はですわ?」
アヤメからの返事がないため、マイアは顔を動かさず目線だけをアヤメに向けて言葉を発した。それに対しアヤメはまたも無言で返した。
「黙っていても答えは変わりませんですわ」
淡々と一人で言葉を続けながら机の上の書類を片付ける四方堂家ハウスキーパーのマイア。ハウスキーパーとは全てのメイド達のトップを意味する。彼女はその立場から一日の大半を書類整理に追われるため、こんな無駄な時間を使いたくないのだがっと思いながら目を通し終わった書類にサインをしている。早く終わって欲しいと考えているマイアだがアヤメは口を閉ざしたまま何も言わず表情を変えない。
「はぁ・・・、まあいいですわ。それよりホワイトウィングがここにいるのは分かるのですけど、何故白鳥家の双極と呼ばれる執事の片割れ、レフトハンドの破格がここにいるのかしらですわ?」
マイアは座ったままつりめがねの下からアヤメの隣に立つ背高くガッチリした大柄の男を見上げた。
40話くらいまでは毎日18時更新予定です。
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