第32話 ボードゲームから格ゲーに
暑い。さっきまでお城の中にいたはずなのに。
「もういい」
チサちゃんの合図で目を開けると、ボクは荒野のど真ん中にいた。
「な、なんだ、ここ?」
「さっきのお砂場」
ここが、さっきふたりが遊んでいた場所だって?
「臨場感を出すために、魔王はジオラマの中に入って、相手を直接攻撃もできる」
ごっごが本気になるような感じかな。
「ダイキはここで応援してて」
チサちゃんが立ち上がる。
いつの間にか、服装が魔王ルックに戻っていた。
手には、街へ行ったときに持っていた杖を所持している。
ケイスさんも、スフィンクスの姿に変わっていた。
あれがケイスさんの本性なのか。
「おおお、魔王さまが権限なされたぞ!」
数名の兵隊が、ボクの上に座るチサちゃんにひれ伏した。
いかにも本物らしい。
「みんなは下がって城を守って。魔王マミはわたしがやっつける」
兵隊に、チサちゃんが指示を出す。
「直接対決ね。望むところだわ!」
マミちゃんが、拳を手で叩く。
手に持った杖をふるい、チサちゃんが火球を撃ち出す。
対するマミちゃんは、なんと手で受け止めた。
掴んだ火球を握りつぶす。
「こんなジャブじゃ、話にならないわ。本気で来なさいよ。でないと面白くないわ!」
ニッと笑いながら、マミちゃんが挑発してくる。
「危ないから、無理しないでね」
「この状況もイメージで作り出しているだけ。本体はジオラマの側で寝ている。だから、別に危なくない」
だったらいいか。
「今度はこっちの番よ!」
マミちゃんが、肉弾戦を仕掛けてきた。
杖を振り回し、チサちゃんはマミちゃんのパンチ・キックを受け流す。
ガードが空いたところに、マミちゃんは的確な攻撃を打ち込む。
わざと防御を緩めていたチサちゃんも、投げで反撃に転じる。
とても、子どものケンカレベルではなかった。
スパーリングと形容してもいい。
「うわあ。二人とも本気だ。ケガしないかな?」
ボクは気が気じゃないのに、ケイスさんは涼しい顔をしている。
「ケガをするどころか、たんこぶもできてないし、血も流れていないでしょう?」
言われてみれば。
「ご心配なく。妄想内で格ゲーをやっているだけですので。よく見てください。二人の頭上に、体力バーが見えますよね?」
確かに。
オレンジ色のバーが、チサちゃんたちの頭上に表示されていた。
「あれが赤になったほうが負けです。これまでマミ様は、別の魔王と対戦して、五五連勝しています」
本当に格ゲーのイメージなんだな。
「それなら、大丈夫でしょうけど。ボードゲームから、格ゲーに切り替わったんですね」




