クク、お菓子を独り占め
「ヤカンと、お鍋。水筒もいるね」
鉄製の鍋も、手にとった。
「寝袋は何にしよう?」
「二人で入れるタイプがいい」
それはまた、すごい注文だ。二人羽織を想像した。
「しかも、あるんだよね。二人用の寝袋」
横に長い、いわゆる封筒型と呼ばれるタイプだ。
「ダブルベッドみたいだ」
「いい感じ。ホントは、ダイキのお腹に寝たいけど」
「息苦しくない? 暑いかも」
「体温調節は勝手にできるから、構わない」
チサちゃんは、意に介さない。
そういえば、チサちゃんは夏の暑い日も、ボクの腹の上に寝ていた。暑い寒いは平気なのかも。
大きいサイズの寝袋にした。
「どんなテントがいい?」
二人で眠れるタイプがいい。
「これがいい」
チサちゃんが選んだのは、タープテントだった。
「運動会で運営が入るタイプのテントだね」
「違うの? これでは眠れない?」
「お昼寝するならこれだろうね。だけど、これで夜を過ごすことはできないよ」
確かに雨はしのげる。だが、風よけがまるでない。秋になると夜が寒いだろう。
「あと、それくらいならマミちゃんが持ってそうだけど」
「確認してみる」
チサちゃんが、マミちゃんに電話をかけた。「持ってるって」とのこと。しかも、ネウロータくんもタープ付きがあるという。しかも、そのまま眠れるタイプで。
「みんなが持っているならいい」
あっさりと、チサちゃんがあきらめた。
みんなでワイワイするスペースがあるなら、チサちゃんまで欲張る必要はない。持っていないと思っていたから、提案しただけなんだろう。
「二人きりで、密着して眠れるやつがいい、かな……?」
答えが、チサちゃんから返ってこない。
「チサちゃん、さっきから何を見ているの?」
ずっと、チサちゃんはある品物に目を奪われている。
ハンモックだ。
「欲しい?」
「うん!」
たしかに、気持ちよさそう。
「ダイキ、今日はこれに乗って寝る」
「そ、そうなんだ。丈夫だといいな」
「平気。丈夫になる魔法をかけておくから」
「くくりつけておく木の方が、心配なんだけど」
ボクは体が大きいから、ハンモックなんて絶対に壊れてしまう。
そんなことを考えていると、素晴らしい商品が目に飛び込んだ。
「ならば、これだな」
「うん。及第点」
相談の結果、ボクらのテントが決定した。
高床式のテントである。
テントでありながら、ハンモックというスグレモノだ。メッシュ地で、虫の侵入も防げる。しかも、ワンタッチだから設営しなくていい。
「でも、お高いんでしょう?」
「ところがダイキ、なんと今なら地球価格で三万円」
セール中で、お手頃価格になっていた。
ボクたちは、ホクホク顔でテントを買い、ゴロゴロカートに乗せる。
「ダイキ、最高のテントが手に入った」
「バッチリだね。チサちゃんのアイデアのおかげだよ」
「ありがと。ダイキが諦めなかったおかげ」
その後、食材を買いに向かう。
頼まれていたジュースを買った。
カレーの食材は大量に買ってあるらしい。ボクらが関わる必要はないそうだ。お米だけゲットする。
あとは、お菓子だ。しかし、甘めのお菓子が見当たらない。おせんべいや乾パンなど、しょっぱいものばかり。
「あんまりないね」
って、チサちゃんから、また返事がない。
チサちゃんは、カップ麺に目を奪われている。
「こんなメニューもあるんだね」
厳密には、薄い鉄製のカップに入った乾麺だ。乾燥したハーブや、粉末状の調味料が麺にかかっている。
「カップ麺、欲しい?」
お昼は買わなくていいと言われている。夕飯はカレーだし。買うなら、おやつ用か、明日の朝食用にだけど。
「お山に登った後、景色を見ながら食べる」
想像しただけでも、楽しそう。
「でも、お湯はどうするの?」
「水筒にお水を入れて持っていく。火の魔法で沸かせばいい」
「いいね!」
ボクたちは、カップ麺を買う。
リムジンの近くで、ククちゃんの高笑いが聞こえてくる。
「オーッホッホッ! こんな虫だらけのキャンプ場になんて、泊まれませんわ! ヨアン、わたくしは近くのロッジで休みます! あなただけテントで寝なさい!」
腰に手を当てて、ククちゃんはわがままを言う。
「承知いたしました」
ロッジのすぐ側に、ヨアンさんは一人でテントを設営している。一人用とはいえ、時間がかかりそうだな。
「ああ、ヨアンさん。手伝おうか?」
「ありがとうございます!」
ボクはテントのロープを引っ張って、ペグを打つ。
設営は、ボクも得意じゃないけど、一人よりみんなでやった方が楽しい。
チサちゃんも手伝ってくれている。
「大変だね、ククちゃんも」
「仕方ありません。お嬢様は、陽の光が苦手なので」
そっか、ヴァンパイア族だもんね。
「やったね、ヨアンさん」
三人で協力して、テントを完成させた。
「ゴハンはどうするの?」
「日が陰ってきてから、お嬢様のお食事を用意して、それからですね」
一人ぼっちで、ゴハンか。気の合うお友達が、いないのだろうか。ボクたち以外の魔王たちとは距離が離れているし。
ソロキャンに慣れているならいいけど、一人でテント設営に手間取っていた辺り、そこまで詳しくはないようだ。




