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第1話 おっさん、事案発生!?

 チクショウ、ヤケ食いだ!


 リストラされ、ボクはファミレスのバイキングに来ていた。


 唐揚げ、カレー、ドリンクバーをハシゴしては、テーブルに並べていく。

 いつもは食べない、チョコレートをつけたマシュマロまで追加してやる!


 とにかく大量に腹の中へぶち込みたかった。

 食い過ぎて死んじゃうんじゃないかってくらいに食べてやるぞ!


「ん?」




 どうして、ボクの席に小さな女の子が座っているんだ?




 ショートボブの少女で、花柄のワンピースを着て、白いサンダルをはいている。

 歳は小学校低学年くらいか。

 その少女は、ボーッとした目でボクを見ていた。

 天然って娘なのかな? 

 物心がついているのかどうかも怪しい。


「あの、そこボクの席だから、お母さんのところへ行こうね」


 優しく語りかけ、ボクは彼女の正面に座り、笑顔で諭す。


 少女が席を立つ。言葉が通じたらしい。


 ボクはホッとする。


 それも一瞬だった。


 なんと、彼女はボクの膝上に座ったのである。さも当たり前のごとく。ココが自分の席であると、無言で主張した。



 ダメダメ事案! 事案だから!


「ボクは大毅(ダイキ)。お嬢ちゃんのお名前は?」


 親御さんを呼ぶため、名前を尋ねる。



「チサ」



「分かったよ。チサちゃんのお父さん! お母さーん!」

 慌てて、ボクは周りに声をかける。


 ダメだ。いくら声を張り上げても、誰ひとりとして反応がない。この子の親はどこなんだ? 


「あの、すいません! この子の親御さんがいたら、名乗り出てくれませんか?」





 けれども、周囲はボクの叫びにまったく気づいていない。

 まるで、時が止まったかのように。



「すいません、誰か返事してよ!」



 いや、実際に時間が止まっていた。

 ビデオの一時停止機能を思わせる。

 店員すら、テーブルでオーダーを受けながら、動きを止めていた。


 リストラされたボクをからかっているのか?


 フラッシュモブってヤツだろ、これ。

 ボクが見ていない間に動いて、ボクが確認したら一斉に止まるヤツだ。

 困惑するボクをSNSにアップする気だな?

 こんなボクを騙して、いったい何がバズるというのだ?


 確認しようにも、幼女がガッツリ座り込んでいるので、動けない。

 まるで接着剤で固定されたかのごとく。


 ボクは一八〇センチ・九五キロあって、柔道経験者だ。

 そのボクが、小さな子どもを引き剥がせない。


 少女がひときわ重いわけじゃないのに。


「いただきます」

 少女は唐揚げにフォークを突き刺して、モリモリと食べる。

 おいしいのか、ドンドンと口に放り込む。確かに、こうなるのは仕方ない。



「食べる?」

 フォークに唐揚げを突き刺し、少女はボクに顔を向けた。

 ボクの口に、唐揚げを近づけてくる。


「食べますよ。ていうか、ボクの分なんだけれどね、それ」

 ボクは口を開ける。


「い、いただきます」

 チサちゃんにされるがまま、唐揚げを迎え入れた。


 あーうまい。ジューシーで最高。

 これがカレーに合うんだよ。

 カレーはチサちゃんが食べちゃってるけど。



 それにしても、誰も親御さんが名乗り出なかったなぁ。



「あれ?」




 よく見ると、風景が変わっていた。


 なんだここは? ボク、ファミレスにいたはずなのに。



 部屋の内装は、禍々しいながらもファンシーな部屋である。

 ハロウィンに向けてコーディネートされたデパートかな? でも品物はないし。


 ベランダには窓がなく、空には暗雲が立ちこめている。

 さっきまでカンカン照りだったのに。


 また、ボクが座っている場所もおかしい。


 ボクは踊り場のてっぺんで、あぐらをかいている。イスはどこへ行った? 


 やたら座布団が分厚い。

 前から欲しかった「人をダメにするソファ」だ。その小さい版である。


 膝の上には、相変わらずチサちゃんが座っていた。


 テーブルはコタツ状の机に変わっている。

 ボクが食べようとしていた食事だけが、同じだ。


「ごめんチサちゃん、降りてくれないかな?」


 チサちゃんにお願いし、降りてもらおうとした。



「それはなりませぬ」



 だが、大人っぽい声の女性に止められる。


 ミニスカートのスーツに身を包んだ大人の女性が、ボクを見下ろしている。


 ボクは言葉を失う。


 女性の肌が、灰色だったからだ。口の端には、小さく牙が見える。


 人間じゃ、ない?


 よく見ると、チサちゃんの耳の上にも変化が。羊のような角が生えていたのである。


「おめでとうございます、長内(おさない) 大毅(だいき)さま。あなたは、魔王チサ・ス・ギル様の玉座に選ばれました」





 玉座だって?

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