1出会いは牢屋で
よろしくお願いします!
それはある日、詳しく言うと、数ある人間国の一つシリリア王国が竜王国に戦争を吹っかけた日から三日目。返り討ちに遭い既に城壁を囲まれてしまった時だった。
玉座で丸い豚の様な国王と騎士団長、宰相、魔法師団長は反撃の一手がないか頭を抱えていた。
そう、そんな時だった。
三人の前が突然光り、何者かが現れた。咄嗟に騎士団長と魔法師団長は国王と宰相をかばう様に立ち、何者か、いや、少女に剣先を向ける。
そう、白いワンピースを着た腰まである白金の髪を持つ少女だったのだ。
少女の美しさに四人はホウッと息を零した。
魔法師団長はハッとした様に少女を見つめ急いで何処かへ消え、再び現れた時には重たそうな鎖に繋がっている手枷・足枷を持ってきた。
それを気を失っている少女に付け国王に向かい言ったのだ。
「偉大なる王の間に突如現れた罪人。何者か存じ上げませぬが魔力量がどれほどまであるか分からぬほど多い様でございます。なので、この少女から魔力を吸い取りその魔力を使い魔法師団の皆で上級魔法を打ち竜王国の兵を塵にして見せましょう。」
その意見に王は一つ頷き少女が万が一逃げぬ様、牢屋の塔に放り込む様命じた。
***
少女は目を覚ました。
目が覚めて始めに感じたことは体がだるいと言うこと。そして、頰に触れる決して触り心地の良いとは言えない布の感覚、その次に手首と足首の痛さだった。
寝転がっている体制から立ち上がろうと思い、足を動かそうとするも何かに拘束されている様で自由に動かせない。
手も拘束されており、仕方なく芋虫の様にニョキニョキ動いて寝かされていたベットに座る。
目の前には鉄の棒が何本も刺さっていた。窓はなく明かりは鉄の棒が並ぶ奥にある炎の明かりだけ。
ここは、本で読んだことがある『牢屋』と言うところだろうか。
だが、牢屋とは罪人が入るところだったはず。はたして私は何か罪を犯したのだろうか。
それに外が騒がしい、何か有ったのだろうか。
状況が飲み込めずボーとしていると、鉄の棒、『柵』の向こうから重たい足音が聞こえてきた。
「おぉ、起きたかお嬢さん。」
そう言ったのはとても膨よかな男で柵の前に止まった。
「お兄様は?もうすぐ来ますか?」
少女は気を失う前は兄と合っていたのだ。兄は何処だろう。
「お兄様?……そうだな、儂の願いを聞いたら直ぐに来るかもしれぬのう。」
そう言った男は少女の頭から足先まで舐める様に眺め、手に持っていた鍵を柵の扉部分に付いている鍵穴に刺した。
ゾワゾワしたがこんな感覚初めてで何という感情かわからない。ただ良い感情にはならなかった。
ガチャンという音とともに扉は開き扉の枠が狭そうに男は入ってきた。
そして私に近寄り顔を寄せてきたのだ。鼻息は荒く頰は紅潮していた体調が悪いのだろうか?
それにしても顔が近い。少し後ろに引いた。
「ほう、紅の瞳か。神秘的な色味じゃのう。」
そう言い私の座っている所の両脇に手を置いた。何故か寒気がする。
男はギラギラと装飾品のついた右手を持ち上げ、私の頰に触れる。
この時明確な恐怖を感じた。魔法を使おうと頑張ってみるもこの体では魔法の使い方も分からない、それに魔力が枯渇している様だった。
身の危険を感じ、男から目を逸らした。
「手が震えておるのう。寒いのか?なに、直ぐに温まるさ。」
両手を持ち上げたかと思うと胸ぐらを掴まれ思いっ切り服を引き裂かれた。肌を露出させない様に腕で隠すも男は更に鼻息を荒くする。怖くて動く事すら出来ない。
男に首筋を舐められ頰を舐められ、背は手で撫でられ、寒気が増す。
声を出さないといけないのに声が出ない。
出るのは息だけで音になってくれない。
「…っ…い…や…お、にい…様…お兄…様、助け…て」
何粒も何粒も涙が溢れる。こんなに涙は溢れるのに一つ残らず男が舐めとって行く。まるで食べ物にでもなった様だ。
太ももを撫でられ気持ち悪い。ガッと顔を両手で覆われた。唇が近ずいてくる事で口づけられると気づいた。ただ、唇と唇が触れ合うだけなのに嫌だと思い必至に避けた。
避け続けると男の機嫌が悪くなり押し倒された首を思いっきり噛まれる。
痛い。痛みなんて感じたことのない少女だったため涙が更に溢れた。もうダメかも知れない。何がダメか分からないけど。自分の何かが奪われてしまう様な気がいた。
「…お兄…さま。…誰か、たす…け…て…。」
柵の向こうが騒がしくなる。何か言っている。その声はだんだんと大きくなり、
「陛下!陛下!何処にいるのです!竜王兵が城内に侵入!そして何故か魔王軍までも攻め入ってきていまっがあぁっ…」
途端、途切れた。
その時だった目の前の男が崩れてきたのは。
血を吐いて、倒れてきたのは。
「何となく此処に来て見たら、…呆れる。戦争中に何しているのだこの王は。」
のしかかってきた男を退け顔だけ出すと黒髪碧眼の美しい人と目が合った。
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