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蛍火を弾丸と共に撃て  作者: 藍谷紬
生命のプロトコル
23/30

第23話「悪魔の領域へ。」

頭上から聞こえてきたのは激しくなるプロペラの音だった。

「来たか!?」

古場は他のメンバーと共にデッキへ出て空を見る。

一目でわかるほどそのヘリコプターは旧式の物だった。

かなり小ぶりのボディをしていてなんだか全体的に汚れている印象だった。

そしてそのヘリのスライド式のドアから姿を見せたのは、

「おい、亮!無事か!?」

古場もよりも小柄な、吊り目の男、植草翔太だった。

古場達を見下ろしながら大声を張り上げている。

古場が何かを言おうとしたときに夢橋が手で制した。

「え?」

夢橋は手のひらを上に向け、両手を横に伸ばして斜め上へと振り始めた。

キャノピーを見つめながら夢橋はその動作を続けた。

するとヘリコプターは高度を少しづつ上げ始めた。

その後に夢橋はとあるタイミングで握りこぶしにし腕を水平にして止めた。

それを確認したと思われるヘリは一定の高度で停止しホバリングを始めた。

「い、いったい何をしたんすか希さん?」

「手信号よ。このまま声が聞こえるような高度にしてみなさいな、感染者は気になって群がるわ。行くわよ。下田さん、悠介、準備して。」

下田は車のキーを握り、走り出した。

走り出した下田に続いて金田も駆け出し、ワンテンポ遅れて山中、古場、夢橋も走り出した。

古場が空港滑走路出口から出る頃には下田は車のエンジンをかけ、エンジンを唸らせ始めていた。

車が走り出す前に金田たちは車が行く予定の方角の90度違う方向、北へ向かい始める。

空港内部の構造から説明すると、滑走路は東西へ伸びている。つまり会議室とフードコートを結んだ線の延長方向、東側へと長く伸びている。

感染者が集まっているのは東側、下田はそこを目指して車に乗り込んでいる。

90度の方向は南側である空港ではない、北向きであった。

空港の領域を超えると鬱蒼と木が茂っている深い森がある。

下田以外の4人はそこを目指して走っていた。

「下田さん、大丈夫かな!?」

古場は大きな声で山中に言う。

「大丈夫だって!あんな恐ろしい運転してるんだから!」

ちらりと振り返ると車は猛然と走りだし少し離れているはずなのにエンジン音が古場の耳に届く。

しばらく前を向き走っているとヘリの音が古場達についてきていると気づいた。

「やっぱり。あのヘリに乗ってる人はいい判断が出来るわ。」

少しばかり息を切らしながら夢橋は笑う。

5分も走ると森の近くに到達し、ヘリが下りてきた。のだが、、、。

地上から10メートルほどで急にエンジン音が途絶えた。

エンジンが停止し、機体はふらつきながら落下するように地面へと到達した。

スキッドが地面に叩きつけられたときに耳をつんざくような金属音が鳴り響く。

「な、なんだこれは!?」

金田は大声をあげながらヘリに近づく。

なんとか機体を水平に保ったまま地面に降りることが出来てはいたが着陸の瞬間にドアの近くにいた植草が軽く投げ出されそうになった。

そのタイミングで器用にジャンプをし危なげに着地した。

「お、おいどうした鈴谷(すずたに)!」

ヘリのコクピットに植草は大声を上げた。

「わかりません!急にメインローターが停止しました!」

低く大きな声がヘリ内部から聞こえ、更に中から大柄なスキンヘッドの黒いスーツを着た男が出てきた。

「うぉ、、だ、誰だよ、、翔太?」

山中は驚いて植草に聞く。

「ああ、こいつは野田。ボディガードだ。もう一人操縦していた鈴谷ってのもいる。」

古場も山中も野田という男に気圧され挨拶も忘れていた。

「はじめまして、野田柾(まさき)と申します。古場さんと山中さんですね?そちらが金田さん、下田さんですか?」

他の二人に話しかけると、

「ああ、俺は金田だ。」

「私は違うわよ。下田さんは今峠を攻める勢いで滑走路にスキーム音をまき散らしながら走ってるわ。」

夢橋が指さした先で小さく車が暴れまわってるのが見える。

下田の操る車は感染者の塊の鼻先をかすめるのを繰り返し、古場には暴走車が通行人を弾き飛ばし続けてるようにしか見えなかった。

「あ、あれは誰がやっているんですか!?」

野田は驚きを隠せず夢橋の方を見る。

「言いましたよ、下田さんだと。」

片目を閉じてもう片方の瞳で野田を見た。

「し、失礼しました。ですが下田さんというのは古場さんより年下の女性だったんでしょう?」

「ええ、そうね。その彼女がF1レーサー顔負けの運転をしているわ。」

「なんてことだ、、。」

そうしているうちにもう一人野田よりも少しばかり小さいがそれでも175㎝はあるだろう。細長い顔にサングラスをかけ短い髪の毛に無精ひげを生やしていた。

「どうしたんだ、野田。」

「あ、ああいや、にわかには信じられないことがな、、。」

そこで事情を聴いた男はサングラスがずれたようで指でかけなおした。

「な、なるほど。それで時間稼ぎをして我々と合流することが狙いでしたか。」

一呼吸置き、

「私は鈴谷健です。翔太さんのボディガードをしています。」

「ああ、よろしく。」

「あ、まさか。金田さんとは、太一さんの事でしたか。こんなところでお会いするとは。」

と鈴谷は金田に歩み寄る。

「?あー、すまん。どこかで会ったか?」

「暴力団第3部隊におりました。金田さんのご活躍はよく聞いたものです。」

「そうだったのか。まぁ俺はすぐやめたからな。」

「ですが今でも予備役で隊員の命を救ってくださっていると聞いております。」

「二人とも、感慨に浸るのはいいけれどそろそろ暴走車がこっちに突っ込んでくるわよ?」

それを聞いて金田と鈴谷はハッとして東南を見る。

「早くヘリの準備を。」

植草は鈴谷と野田を先に乗せ自分が乗り込み後から来る人間を引っ張り上げるようにヘリに入れた。

「、、、、む!?」

鈴谷が離陸の準備を始めたときに不可思議な声を出した。

「どうした?」

「メインローターだけではなく、機体機能操作のすべてが無効化されています!!」

それはヘリの離陸、操縦が不可能であることを示していた。

「なっ!?ど、どういうことだ!」

「わかりません!先ほどの衝撃でどこかをおかしくしたとしか、、!」

そうこうしてるうちに下田の車はこちらへと近づいている。

「くそ!駄目だ!空港に、、!」

______空港に戻る、そう言おうとした金田は空港の近くに群がる感染者を見て絶句する。

下田の車につられてゆっくりではあるが感染者がこちらへ迫り、空港にも戻れなくなったのだ。

「や、やばい!!逃げ場が、無くなった、、。」

その時ヘリの中に夢橋の舌打ちと共に怒号が響いた。

「全員ヘリを降りなさい!!森へ走り可能な限り走りなさい!」

その声に全員の体が反応した。

最後の鈴谷が下りた瞬間に下田が到着し有無を言わさず鈴谷は下田の手をひっつかむ。

「え、え、えぇ!?」

下田が引きずられ始めるころには古場がフェンスの上で夢橋を引っ張り上げており、その数秒後には鈴谷が下田を半ば強引にフェンスの向こうへ投げ、自身も乗り越えたのだった。

むっ( ・`д・´)

さぁ森へと逃げ込んだ古場一行、どーなる⁉

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