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蛍火を弾丸と共に撃て  作者: 藍谷紬
生命のプロトコル
19/30

第19話「美人な女と焦げた時計。」

「ということなんだが、お前らはどう考える?」

金田は焦げ臭いフードコートのそばに座って雑談をしていた3人に近づいていった。

「R.S.所属の女性、ですか、、?」

下田がそう言って金田を見つめる。

「ああ、恐らく本当だろう。というかわざわざ俺の事を元自衛官と指摘した上でそれを言うことにメリットは皆無だ。あのタイプの人間はメリットとデメリットを天秤にかけて判断するタイプだと思う。」

「なるほど______え、金田さんて元自衛官なんですか!?」

山中は椅子から飛び上がりそうなほどの勢いで叫ぶ。

「お、落ち着けよ悠介。俺が今度話してやるから。」

古場は山中を無理やり座らせる。

「あ、そうだった。その様子はどうだったんだ。爆発してたから心配だったんだが。」

金田は窓に近づいて駐車場の方を見る。

「あ、それなら大丈夫です。」

山中が金田の背中に声をかけた。

「実は亮の目覚まし時計が鳴り始めてから、駐車場の奴らが空港に入ろうとしたんで駐車場のかなり東の方の車の窓ぶっ壊して盗難防止のアラームを鳴らしたんで。」

「なるほど、距離と音量的にはそっちに寄せられるって事か。」

一安心といった様子で金田はよけてあったイスの一つ持ってきて三人のいるテーブルのところへ座る。

「それで、どう思う?」

「そうですね。俺が見た感じでは頭良さそうな人ですね。なんか言い方きついですけど。」

古場は天井を見て腕を組みながら答える。

「俺と未歩ちゃんはまだ話してもないんで何とも言えないとは思うんですけど、金田さんとしてはどう思ってるんです?」

「、、確かにあの人の言ってることはあながち間違ってはいない。俺はR.S.所属というのは耐えがたいものがあるから嫌ではあるんだがそれが正しいかと言われれば反論はできない。彼女自身R.S.に反感を持っているならば考えてること自体は同じだ。受け入れることに抵抗はあるが全否定できるほどじゃない。」

「なるほど、、。」

山中は大きく頷いて古場を見る。

「断る理由があるとしたら何だと思う?亮」

「そうだな、やはり危険因子は拒絶すべきっていうところかな?でも、、。」

古場は金田の顔を見る。

「もし断った場合、彼女はR.S.に戻る可能性がありますよね?その場合は俺たちのことを報告とかして保護とか言う目的で拘束される可能性もあるんですよね?」

「確かに、そうだな。その可能性は大いにある。待ち合わせの事も言わざるを得なかった以上神聖記録を遡られて特定され、、ということは十分考えられるな。」

「だったら、言い方は悪いですが、野放しにして何かされる可能性があるんだったら目の届く範囲にとどめておく、可能なら情報も聞く。彼女の頭脳はおそらく今後助けてくれると思いますし。」

そういう古場を見て山中は不思議そうな顔をする。

「へぇ、なんだ。やけに好意的だな。」

「好き嫌いってわけではないと思うんだが、なんか悪い人じゃない気がするんだよ。ああいう話し方とか、雰囲気、とげとげしい感覚、って俺たちを騙そうとか、どうにかしようとか考えてたらやらないと思うんだよ。それこそ何のメリットもない。」

「確かに、言われてみれば、仲間になろうとするならもっといい人ぶりますもんね。」

下田も納得したように頷きながら言った。

その言葉に金田は頷き立ち上がる。

「分かった。じゃあ、とりあえず俺たちの仲間にいれる。何かあったらすぐに対処できるようにしておく。それでいいか?」

三人は頷いた。

「じゃあ待っててくれ。」

南側通路を通って金田は会議室に入って行った。


______5分後。


「夢橋希よ。よろしくね。」

「あ、はい、こちらこそ。」

そうして軽く挨拶をした直後、山中は古場に耳打ちをする。

「すげぇ美人じゃん、、!」

「お前、まさか俺があの人を好意的にとらえたのは顔が好みだったからじゃねぇの、とかいうつもりじゃないだろうな?」

「違うのか?」

「ちげぇよ。命にかかわることなんだ。簡単にそんなことで決めるわけ______」

そう話してるところに夢橋が古場の所にやってきた。

「えっと、さっきは名前を聞かなかったわね。名前は?」

「あ、古場。古場亮です。よろしくお願いします。」

小さく会釈をしたとき夢橋は少し目を丸くしていた。

「・・・・」

「あの、夢橋さん?」

古場がそう声をかけハッとした様子になって

「あ、ごめんなさい。よろしくね、亮。私の事は希でいいから。」

「?」


「さて、金田さん。これからはどういう予定なんですか?」

急に夢橋は金田に対して敬語を使った。

「とりあえず亮の友達の植草が来るまではこの空港で待機。そこからそいつの来たヘリでそいつの実家にでも行くか、そいつの私有ロケットを使って火星に行くつもりだ。」

「火星ですか。それはどこの地域なのでしょうか?」

「グセフだ。」

「なるほど、分かりました。」

夢橋は曲げた人差し指を顎に当て目を閉じていた。

古場はフードコートの隅に転がっている目覚まし時計を見つけ、拾い上げた。

「いつも煩わしかった時計に命を救われることになるとは、、。」

複雑な気分になりながら焦げ、画面にひびが入ってもう時刻表示も出来なくなった時計を眺めていた。

古場は鞄に入れたくはあったが無駄なものは入れるなという金田の言葉に従いラーメン屋のカウンターにその時計を渋々置いて会議室へ荷物を置きに行ったのだった。



タイトルに深い意味はない。


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