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蛍火を弾丸と共に撃て  作者: 藍谷紬
生命のプロトコル
14/30

第14話「爆破実行20分前。」

少しテンポ悪いかもしれません。

「、、大丈夫かな、、?」

古場は空港の入り口に恐る恐る入り、中を見回す。

所々に飛び散っている血を見て身を震わせ、中腰のまま止まったエスカレーターを上り始めた。

先ほど金田と一緒に押した商品棚はまだエスカレーターを上ったすぐ左側においてあり、感染者からの目隠しを担っていた。

「本当にこんなんで大丈夫なのかなぁ、、。」

声になるかならないか程度の音量で古場はつぶやく。

金田の態度がいつも通りのせいでどうも緊張感が緩みがちではあるが、一歩間違えれば自らも感染し死ぬという事実は変わりはしない。

それを改めて意識した古場の心臓は小さく跳ね、心拍数が上がる。

「よし、、。」

左側には休憩スペースに何故かたむろしている感染者達。エレベーターを昇った場所の3メートル正面には自動ドアが停止し、力を加えて開けないといけないが見送り用のデッキの入り口があるらしかった。

そこから下を見れば滑走路の状況も改めて確認できるかもしれないが先ほど運んだ棚では隠しきれる場所ではない上に、ドアを無理やり開けるとなると大きな音もするかもしれない。

「まだ無理か、、。」

と思った時古場は気づいた。

金田が感染者をまとめてどうにかしようとしてる理由はここにもあるのではないか。仮に建物内の感染者を一掃、あるいは行動不能に陥らせ、安全な場所を改めて確保し状況を落ち着いて把握するためではないか。

古場は一度休憩スペースにいる感染者達の様子を改めて伺うが、どうやら変化はなかったらしかった。

その時それとは反対方向から何かをコツコツと叩く音が聞こえた。

振り返って切ると金田が拳銃の銃身で床を叩いて手招きをしていた。

「はやくこっちにこい」

と口が動いているようで古場は慌てて金田のもとに向かう。

しかし床の油で幾度か滑りそうになった。

「すいません、悠介たちには伝えました、あちらももう少しなら問題ないそうです。」

「そうか。いいか?今からやることを言うぞよく聞いておけ。」

物陰に隠れどこから持ってきたか分からない油性ペンで空港の床に地図らしきものを書いた。

この空港の2階というのはそれほど立派なものではなく、1階のロビーの吹き抜けのついでで2階を付け足したようなものだった。1階から2階へのアクセスポイントは唯一あのエスカレーターだけであり、2階にはお土産屋が二店舗東側に中心のエスカレーターを向いて並んで二つ。そして並んでいるお土産屋の更に南東に大き目のスペースがとってあり、フードコートとして機能していたようだった。この店はラーメン屋と有名ジャンクフードの店である。

反対の北西側には現在感染者がいる休憩スペースがあり、かなり大きめの、お土産屋に店舗を足したほどの広さがあった。しかし休憩スペースから南へ行こうとしても会議室らしきものがあり、封鎖されているため西から東へ移動するためにはエスカレーター側を通らなくてはならない。

そして南側通路は細く、会議室へと繋がっていた。つまり古場達の現在いるお土産屋から感染者達へのアプローチルートはエスカレーター側からか、会議室のドアを南側通路から開けて、休憩スペースへつながっている方の会議室の扉を開ける2パターンになる。

「俺たちはあまり動くことはしない、お前も分かってると思うが、ここは基本的に一回からの吹き抜け状態。通路と休憩室、会議室に小さなフードコートを繋ぐ通路があるだけで、しかも胸の高さくらいの透明ガラスの手すりがあるだけ。この意味わかるよな?」

「ええ、もし相手側に視認された場合通路にいたら丸見えですね。その場合隠れられるのはここのお土産屋か、フードコートの店、あとは開いてるか分からない会議室ってことですね?」

金田は頷いて話をつづけた。

「しかし、会議室に行くとなると、スキを突かれた場合南側通路と休憩室から挟み撃ちされることになる。守ったり攻めたりする場合-しかも少人数の場合-は一方向だけの方がいい。」

「じゃあ、どうやって感染者達を無力化するんですか?」

「音と匂いと、爆発を使う。」

古場は金田の言葉に首をかしげる。

「ラーメン屋にかなりの量の食用油があってな。ついでに大型携帯用コンロまで"都合よく"持ってたからな。それで熱するとどうなるか分かるか?」

「さぁ?てんぷら油火事とかあるらしいですね?」

「そうだ、約360度。ほぼ沸騰に近い状態らしいが、そこが引火点ではなく発火点という所がポイントだ。」

古場の表情が不可思議なものから驚愕、恐怖へと変わる。

「まさか、、。感染者達を引き付けて、、、?」

「ああ、油を20分近く熱して温度を上げて発火点まで持っていく直前で銃でおびき寄せる。あいつらの視覚はあまり働いてない。敏感なのは聴覚と嗅覚だ。」

「それで近づいてきた段階で何らかの方法で水を入れて爆発させるってことですか?いやでもそんなことしたらあの人たち、、。」

古場は思わず休憩スペースを覗いた。

「今更そんなこと言ってられると思うのか?」

金田は淡々と床の地図に書き込みをしながら言った。

「だって明らかに子供みたいな感染者もいます、よね、、?」

古場は煮え切らない様子で金田を見る。

その目を見て金田はため息をつく。

「予想はしてたが、お前の今後の為に、話すことがある。」

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