雪ウサギ、帰る
道端の花壇に小さな雪ウサギが座っていた。
とても小さくて、子供が作ったことはすぐわかった。
雪が降る中で、ひっそりと。
その日の夜、明日の天気予報をみたら、晴れだった。
あの雪ウサギのことが脳裏をよぎる。
あんな小さな雪ウサギ。あっという間に溶けてしまうだろう。
溶けて、葉っぱの耳と木の実の瞳だけを残して空へと帰って行くだろう。
だから、会いに行った。
雪ウサギは今朝と同じ場所に同じようにいて。
私は近寄り屈み込んで、雪ウサギに言った。
「さようなら」
さようなら雪ウサギ。
日が昇ったら、空へとお帰り。
小さな、小さな、雪ウサギ。
小さなお別れ。
けれど、それは心の雪景色に残って──
春になった今でも消えない。