私は私の意志で志樹に付いて行きます
あらすじ
運転が苦手な京慈さんが俺達を連れてきたのは、京慈さんの元実家であった。
荒れ果てた庭の奥に進むと何かがあるらしい。
ワンピースの友紀をお姫様だっこしながら、先へ進むのであった。
・・・だが、俺まで歩きにくいのでおんぶにすることにした。
友紀をおんぶしながら京慈さんの後を追っていく。
そこは人が歩くような道ではなく、今の状態では中々に厳しい。
志樹「なんでこんな所を・・・」
伸びすぎた檜の枝が行く手を阻んでくる。
濡れた落ち葉が踏み出す先を不安定にする。
友紀もいるんだからもう少しマシな所を歩きたかった。
志樹「京慈さーん!どこへ行くんですかー?」
京慈「着いてからのお楽しみだ~!」
不安で仕方がない。
思わずため息をつく。
すると、背中にいる友紀が申し訳なさそうな声で喋る。
友紀「すみません・・・お父さんが迷惑かけて。」
志樹「いや、もう慣れてる。心配しなくて大丈夫。」
ひょっとして、すでに天乃川家に染まっているのか・・・?
志樹「まあ上手くやってみるしかないか・・・」
そういいながらも、顔にバシバシと木の葉が当たっていた。
暫く苦戦しながら進んでいると、いつの間にか少し開けた場所に出ていた。
志樹「ここは・・・」
森の中としては不自然なエリアだ。
背中に背負っている友紀をおろして周りを見渡す。
山の中なのにこのエリアだけ自然が全く見当たらない。
地面を蔓延る虫達も姿が見当たらない。
それどころか、何者かに置かれたような大小様々な岩が等間隔に並べられている。
その内のひとつに、京慈さんは足を組んで座っていた。
京慈「お疲れさん。」
額に木の葉をつけた僕を労ってくれる。
志樹「もう少しまともな道はなかったんですか。」
京慈「無いな。」
厳しい答えだ。
帰りもあの森を歩かないといけないと思うとゾッとするが。
京慈「大丈夫だ。帰りの心配はしなくていい。」
どういうことだろうか。
僕のそんな顔を読み取ったのか、こう告げる。
京慈「まあ、じき分かるさ。」
不安だが未来の自分にゆだねるしかないな。
静かな空間を不気味に感じてくるなか、友紀が言いたかったことを言ってくれる。
友紀「ここは誰かが造った場所なんですか?」
京慈「ふむ、人の手で造ったのではなく、創られたといった方が正しい。」
どういうことだろうか。
京慈さんは立ち上がり、今来た方向とは逆の方向を向く。
京慈「この先にそれがある。」
そう言う京慈さんの後に付いていくと、驚くことが起きた。
さっきまで無かったはずの石積みの階段がずっと先まで続いていた。
志樹「どういう・・・ことです・・・?」
京慈「行けば分かる。」
ここからでは深い霧で何があるか見ることが出来ない。
志樹「危険な場所じゃないでしょうね。」
友紀もいるから、少し戸惑う。
京慈「志樹、友紀、お前達がちゃんと自分でいるという意志を持っていれば、それでいい。」
余計分からなくなってしまった。
京慈「お前には知りたいことがあるんじゃないか?」
確かに今は謎に囲まれている。
分からないことだらけだ。
どうする。
友紀を連れて行っていいものか。
顎に右手を当てて悩んでいると、友紀が左手を握ってくれる。
友紀「大丈夫です、志樹。私は私の意志で志樹に付いて行きます。」
そうだ。友紀はこうして手を握り締めてくれている。
俺がちゃんとしていなきゃ駄目じゃないか。
今度は自分の意志で友紀の手を取る。
志樹「ありがとう、友紀。行こう。」
友紀「はい!謎解きです!」
明るい友紀は本当に力強い。
京慈「ふむ、大丈夫そうだな。私は待つことにしよう。」
志樹「行って来ます。」
京慈「気をつけてな。友紀を頼むぞ。」
左手に確かな人の暖かさを感じる。
手を繋いだ俺達はしっかりと石段を登り始めた。
どうも緋吹 楓です。
読んでいただきありがとうございました。
森の中を歩くのっていいですよね。
ただ、虫だけは勘弁して欲しいものですが。
今回は「意志」を沢山使いましたが、別に「石」とは関係ないですからね!
意志を使ったのは私の「意思」です。
あ、やめて、石投げないでください!
次回もよろしくおねがいします。