だ、だれか、助けてくれっ・・・
あらすじ(特別編は過去編なので割愛)
桜子さんから『京慈によろしく』と頼まれた俺達。
今日のことを京慈さんに話しに行くことになったのだが・・・
幻の桜が若草色に染まった頃。
俺は頼まれていた桜の様子を報告するために京慈さんの部屋へ向かっていた。
桜のこともそうだが、突然現れて消えていった桜子さんのことも報告しないとな。
そんなことを考えながら部屋のドアをノックする。
返事はない。
俺は入りますよーとだけ言ってドアノブを回し、中に入る。
人気が無い。
藍子さんも居ないのだろうか。
突っ立っていても仕方ないのでセンサー式のエスカレーターに乗り込む。
相変わらず常識外れだ。
2階に上がってもいつもの椅子に京慈さんはいない。
どうしたものか。
この無数にある扉のどれが京慈さんの部屋かなど知らない。
どの扉を開けるか悩んでいると、一番奥の扉から謎のうめき声が聞こえた気がした。
近づいてみる。すると、
京慈「だ、だれか、助けてくれっ・・・」
と、京慈さんの弱弱しい声が聞こえてきた。
扉越しに会話を始める。
志樹「京慈さん、どうしたんですか?」
京慈「志、志樹か!た、助けてくれ!」
なんだ?よく聞こえないな。
まあ扉を開ければ分かることだ。
志樹「開けますよー。」
ガチャ。
志樹「うわ!」 京慈「ぐえ」
そこには部屋いっぱいの桜の花びらと扉で押しつぶされている京慈さんがいた。
京慈「まさか桜の花びらに溺れる日が来ようとはな。」
部屋から出てきた京慈さんが体中を痛そうにしながら座っている。
京慈「危うく扉で押し花にされかけたよ。」
なかなか皮肉が利いている。
志樹「でも、なんであんなことになってたんすか?」
京慈「ふむ、換気の為に窓を開けたらだな・・・」
汚れのついた眼鏡を拭きながらそう言う。
志樹「それだけじゃああはならんでしょう・・・」
京慈さんの部屋は桜によって占領されている。
京慈「まあそれは後にしておいてだ。」
話を変えてきた。
京慈「裏の森の桜の様子を報告しにきたんだろう。」
志樹「ええそうっすよ。それだけじゃないですけどね。」
俺は、
・桜がまだ満開だったこと。
・桜に近づいたら桜子さんが現れたこと。
・桜子さんからの『いつもありがとう』という言葉。
・桜子さんが消えると同時に桜が散ったこと。
を、簡潔に話した。
京慈「ふむ、桜子に会ったのか。」
志樹「京慈さんはこのことを知ってたんすか?」
京慈「いや、私は桜子の姿を見たことはない。だが目撃情報はあった。」
志樹「だから俺達を行かせたと。」
京慈さんはうなづく。
志樹「俺からも質問があります。桜子さん・・・東桜子さんについて教えてもらえますか?」
京慈さんはしばらく悩んだ後、こう言った。
京慈「うむ、いいだろう。明日出かけよう。友紀にも声を掛けておけ。準備をしておきなさい。」
そうして、俺と友紀は東家について知っていくことになる。
どうも緋吹 楓です。
読んでいただきありがとうございました。
幻の桜編の続きで御座います。
あの後、京慈は花びらの海に飲みこまれていました。
個人的な話になりますが、連絡手段が途切れるって本当に恐ろしいですよね。
その人といつの日かまた逢えることを願います。
次回もよろしくおねがいします。